Mistral × FACTOR Selection

PORSCHE 911 GT2 RS(Type991 II)/GT3 RS(Type991 II)/GT3(Type991 II)

 

テイストが異なるマイアムブルーの911

3台のどれもが、ミストラルを軸として集まった職人たちの手によって仕上げられたもの。ポルシェをリスペクトしながら、ユーザーの好みを反映させたモディファイが盛り込まれる。いずれも、いつ何時でも全開で踏み抜ける完調状態がキープされている。
3台のどれもが、ミストラルを軸として集まった職人たちの手によって仕上げられたもの。ポルシェをリスペクトしながら、ユーザーの好みを反映させたモディファイが盛り込まれる。いずれも、いつ何時でも全開で踏み抜ける完調状態がキープされている。

高年式のGクラスを使って、その外面を初代(W460/W461)へと見違えさせるメゾンミストラルナローデザインがすっかり定着した。しかし、軸にあるミストラルの活動は決してそれだけではない。代表を務める花柳貴雄氏はもう40年近く“カスタム畑”を駆けぬけてきた、生え抜きの職人である。たったひとりを軸に切り盛りする店で、オーディオやナビのインストールから、チューニングパーツの選定とその脱着、セッティング、ないものは自分たちでつくってしまう部品開発など、なんでもこなしてしまう。素人目にはとても手に負えないような難しい依頼でも、その手さばきを間近で見ると、さも簡単なことのように思えてくるから不思議だ

そんな彼が築き上げた技術と、彼に信頼を寄せる仲間たちとの絆を象徴するような光景だった。集ったのは3台のポルシェ911。そのどれもが991型の後期(991 II型)であり、911GT3に、GT3 RS、そしてGT2 RSとホットモデルが揃い踏んだ。さらに3台とも同じマイアミブルーを纏う。こんな光景には、なかなかお目にかかれない。2016年のカラーパレットに突如として現れたこの色は、ただ鮮やかなだけではなく、周囲の空気を塗り替えてしまうような清涼感を感じさせる。それが、こうしてホットモデルを彩るのだから堪らない。曇り空でも、雨の日でも、この色を纏えば気分は夏の青空のように晴れ渡っていく。どこか、気持ちを明るくしてくれる色味である。

いずれもミストラルを贔屓にする、古くからの常連客の愛車だという。かつては命を懸けて最高速と向き合った男もいる。あっさりと300km/hを飛び越えていくほどの狂気の世界で、アクセルを奥底まで踏み続けた男は、当時よりも多くの熱量を秘めたマシンを、いまではただ静かに流している。それは拍子抜けするほどしなやかで快適なのに、その気になれば異次元の世界へひとっ飛びできるような、不気味な存在感をたたえている。

760PSを達成した究極の911GT2 RS

ヴァイザッハ・パッケージをベースに、1016インダストリーズがポルシェ専用に展開するナインデザインを組み合わせ、ダクトやルーフウイング、バンパーやディフューザーなどをドライカーボンに置き換えた。足もとはAL13ホイールのカーボンリムシリーズ「CF-C010R」。リムはDYMAG(ダイマグ)社によるものだ。これで前265/35ZR20、後325/30ZR21サイズのミシュラン・パイロットスポーツカップ2Rを履きこなす。
ヴァイザッハ・パッケージをベースに、1016インダストリーズがポルシェ専用に展開するナインデザインを組み合わせている。

名実ともに、もっとも過激なのはGT2 RSだろう。991型911に徹底的な軽量化を施した車体に対して、最高出力700PS、最大トルク750Nmを発揮する3.8リッター水平対向ツインターボエンジンを搭載する。その出力を後輪のみに伝達するという、ドライバーに挑戦状を叩きつけるようなパッケージにして、0-100km/h加速はわずか2.8秒、最高速度は340km/hにまで到達する。

この1台はさらにデジテックECUチューニングを施している。ドイツ本国によると、その向上幅は約60‌PSだという。すなわち最高出力760PSだ。その怪力を推進力へ変えるため、さらに軽量化を突き詰めるためにも、バイザッハ・パッケージをベースにしながら、ダクトやルーフウイング、バンパーやディフューザーなどすべてドライカーボンへと改めた。アメリカンホイールメーカーである1016インダストリーズがポルシェ向けに展開する、ナインデザインのボディパーツによるものだ。そのうえで足もとは同じくアメリカで活動するAL13ホイールのカーボンリムシリーズ「CF-C010R」となる。

Gフォージドの最新ホイールを纏うGT3 RS

ファクターセレクションが展開するGフォージドの新作ホイール「Seestern(ゼーシュテルン)」を装着する。サイズは前9.5J×20インチ、後12.5J×21インチ。それぞれ265/35ZR20、325/30ZR21のミシュラン・パイロットスポーツカップ2を組み合わせる。さらにSPIDER(スパイダー)製のエキマニ&バルブコントローラー、デジテックECUチューニングなどでさらなるポテンシャルアップを図る。シートはボディ同色ペイントしたレカロRMSだ。
ファクターセレクションが展開するGフォージドの新作ホイール「Seestern(ゼーシュテルン)」を装着する。さらにSPIDER(スパイダー)製のエキマニ&バルブコントローラー、デジテックECUチューニングなどでさらなるポテンシャルアップを図る。

まさに究極のなかの究極というべきGT2 RSである。とはいえ、同時代を生きた自然吸気の最高峰であるGT3 RSが劣るわけではない。時代が992型へと移行するタイミングで世に送り出された991 II型の究極完成系と呼べるGT3 RSだ。先のGT2 RSと同じくデジテックECUチューニングを施工し、また吸排気にも手を入れている。足もとを支えるGフォージド「Seestern(ゼーシュテルン)」ホイールをプロデュースするファクターセレクションが手がけたものだ。

軽く流しただけでも、尋常じゃない性能を持つのは肌感覚で伝わる。でも、無機質な速さではない。その一挙手一投足をドライバーに訴えかけてくる。タイヤの状況や、サスペンション、ブッシュの動き、ダウンフォースで押さえつけている感覚。まるで「限界付近まで性能を引き出せ」と誘ってくるかのように。そうやってリニアに訴えかけてくる様子は、時代も速度感もまるで違うのに、どこかナロー時代のポルシェ911に通じるところがある。

輪廻転生。たとえ現役を全うしても、何度も何度も生まれ変わる。技術にしても思想にしてもそうだ。ポルシェ911にはそんな言葉を当てはめたくなるような継続性がある。「ライバルは過去の自分だ」と背中で訴えるかのように、生まれ変わるごとに、世をあっと驚かせるハイパフォーマンスを身につけて。

オリジナルの美学が生きる911GT3

991 II型のGT3は、カップカーを由来とする4.0リッター水平対向6気筒を搭載し、7速PDKのほか3ペダル6速MTが設定される。この1台は後者であり、テキスタイルのシートを含めて911の伝統を活かすかのようなコーディネートとなる。それでもインテリアにはロールケージが張り巡らされた硬派なクラブスポーツパッケージ。ホイールを含めてオリジナルの状態を保ちながら、オーナー氏は3ペダルMTを扱いこなしてGT3の潜在能力を楽しむ。
991 II型のGT3は、カップカーを由来とする4.0リッター水平対向6気筒を搭載し、7速PDKのほか3ペダル6速MTが設定される。

継続性を色濃く感じさせるのはGT3のほうだった。2台のRS勢と同じ年代に芽生えた、正確には991 II型GT3のクラブスポーツパッケージであり、なおかつ3ペダル6速MTモデルだ。変速速度が圧倒的に速いPDKを主軸とする道を歩みながらも、それでもユーザーの熱望に応じるかのように3ペダルを用意した、ポルシェの意志と意地を感じる。実際、熱量たっぷりの4.0リッター水平対向6気筒を手懐けるためのシフトフィーリングは絶妙だ。程よい重さを伴いつつも、手首の動きに応じてゲートに吸い込まれていく。まるで掌とドライブトレインとが一体化するような感覚は、最高に贅沢な体験だと思う。

これら究極的な3台は、ミストラルを軸にして、先述したファクターセレクション、車両販売を中心に手がけるアルティメット・モーターカーズ、そしてデジテックECUチューニングを日本で展開するデジテックエイチピーなど、多数の協力者がいて、それぞれの世界で極めようとする職人技を持ち寄ったからこそ、成り立っている。協力者というよりも、クルマをイジって走ってともに楽しむ仲間たちと呼ぶ方がしっくりくるのかもしれない。

「今もやっていることは10代のころとまるで変わらない。ただしその対象が自転車やプラモデルではなく、最新のハイエンドカーに変わっただけです。やっぱり、機械イジりが好きなんでしょう。そして、喜んでくれるお客さんの顔を見るのがいい」

と、花柳氏は笑顔を見せる。あらゆる欲望が渦巻いているかに思える現代だからこそ、その言葉からは、きわめてピュアな職人気質が浮かび上がる。そこに共感した人が、今日もまたミストラルの門を叩く。

REPORT/中三川大地(Daichi NAKAMIGAWA)
PHOTO/山本佳吾(Keigo YAMAMOTO) 
MAGAZINE/GENROQ 2026年10月号

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