499台のみの生産予定

アウディAGでスポーツカーのパフォーマンスマネージャー(Performance Manager Sportscar)を務めるビクター・ウンダーベルグ(Victor Underberg)氏が、アウディ初のスーパーカー、ヌヴォラーリの技術面について、実車を前にポイントを説明してくれた。
「このクルマはショーカーですが、89.5%が実車と同じです。351km/hの最高速が出せるようになっていますし、1001馬力を発生します。F1モナコGPのコースを走りましたし、グッドウッドでも走りました」
量産仕様と同じパフォーマンスを備えてはいるが、量産仕様ではない。その証拠に、サイドシルに埋め込まれたプレートに刻まれた数字は「000 OF 499」。2027年前半から499台が限定生産される予定(価格はドイツ本国で約59万ユーロ=約1億1000万円が見込まれている)だが、米サンフランシスコの南、カーメルの丘陵地帯に運ばれたヌヴォラーリは、生産予定の499台には含まれていない。

「内燃エンジン(4.0L V8ツインターボ)は800馬力を発生、電動モーターは3基(フロント2基+リヤ1基)で合計201馬力を発生します。合わせて1001馬力のクルマが完成しました。フロントタイヤは20インチ、リヤは21インチ。ブレーキはフロントとリヤでほぼ同じ大きさです。アルミニウム製のボディで重心は低く、フロントが46%、リヤは54%の前後重量配分がスポーツカーとしての完璧な基盤を作っています」
アルミスペースフレーム+CFRP

ボディ骨格はアウディ・スペース・フレーム(ASF)と呼ぶアルミニウム製。ボディワークはほぼすべてがカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)製である。
「止まっているときも走っているときも美しいホイールはモノブロックです。モノブロックのホイールを採用したのは、アウディで初めて。F1カーもモノブロックのホイールを使っているので、その影響です」




ホイールの隙間からブレーキディスク&キャリパーを覗くと、カーボンセラミックディスク(2ピース)のブレンボCCM-R Plusであることがわかった。「スポーツカー向けとして現在最も高性能なブレーキです。このクルマは最高の要素をすべて備えています」とウンダーベルグ氏は補足した。


小さなピースが角度や形状を変えながら規則正しく並ぶフロントグリルはSダクトを形成している。F1由来の技術で、ノーズ下面から取り込んだ空気をS字状のダクトを通じてノーズ上面から排出。これによりノーズ下面の空気の流れが整えられ、床下で発生するダウンフォースが増える仕組み。このコンセプトをヌヴォラーリは応用。ボンネットフードに大きなエアアウトレットが設けられている。
「性能向上のためにSダクトを採用したので、フロントにラゲッジスペースはありません。手荷物はシートの後方に置けるので、週末の旅行も問題ないと思います」

センターグリル(Sダクトのインレット)の両脇にある開口部はブレーキ冷却用のダクトだ。この開口部だけでは足りなかったので、ヘッドライトの内側にダクトを追加したとのこと。サイドにもインタークーラー、ブレーキ、エンジン吸気用のダクトが設けられている。



ドアハンドルは、初代R8のサイドブレードを連想させる黒いパネルの内側、インタークーラーに冷却風を送り込む大きなダクトの裏側にある。手のひらを上に向けてダクトの裏を触ると出っ張りがあり、それを押すとカチャッと金属的な音が響いてドアがアンロックされる。つまり電磁ラッチだ。

モーター:アキシャル・フラックスモーター(軸方向磁束モーター)×3 システム最高出力:736kW(1001ps)

エンジンカバーは当初クローズドの状態で開発が進んでいたが、熱を逃がすために開口部が必要になり、8気筒エンジンと呼応するように8つのパーツで構成されているように見えるデザインが採用された。左リヤフェンダーに設けられたリッドはガソリン給油口、右側のリッドには普通(AC)充電ポートが収まっている。
『This is a beast(これは野獣のようだ)』

「我々エンジニアは固定ウイングの採用は当然のこととして考えていましたが、デザイナーは固定ウイングを望みませんでした。議論の結果、リヤスポイラーは可変式(普段はボディに埋め込まれている)になりました。アンダーボディには12のエアガイドがあり、遠くからでも後ろの4つのエアガイドを確認することができます。ヌヴォラーリは290km/h時に400kgのダウンフォースを発生させます。サーキットを走れば誰もがダウンフォースを感じることができ、F1ドライバーたちはこのクルマから降りると笑顔になり、『This is a beast(これは野獣のようだ)』と言っていました」
「デザインの傑作でありながら快適」のインテリア



「デザインの傑作でありながら快適」とウンダーベルグ氏が評価するインテリアは、ドライバー中心に設計されている。カーボンファイバーの骨格を持つシートのスライド、ハイト、リクライニングの調整は手動。電動にしなかった理由は軽量化のためと座面の位置を低く保つため。長身のドライバーでもヘルメットを被った状態で座れるようなスペースを確保するのが狙い。調整レバーやダイヤルはアルミ製だ。
「ドアを開けるボタンを含め、手に触れるパーツはすべてアルミ製です。プラスチックは一切使っていません。動かすと非常に精密でしっかりした感触があります。操作したときに聞こえるクリック音を『トレゾール(仏語で宝物の意)クリック』と呼んでいます。ハザードスイッチもボタンではなく、クリックするタイプにしました」




シャシー制御面ではクワトロ・プレディクティブ・ライドを取り上げた。このシステムはステアリング角度、加速度、ヨーレートなどからリアルタイムに車両の状態を把握。コーナーでグリップを失う可能性を予測すると、前後と前輪左右のトルク配分、ブレーキ制御を介入させ車両を安定方向に導く。同時に、可変リヤウイングを制御しダウンフォースを調整する。
「センサーはクルマの重心点に配置されています。計算が速いので、制御の介入が早い。介入が遅れるとクルマは不安定になりますが、このクルマの場合は早く介入することで介入の度合いを最小限に留めることができ、非常にスムーズに走行します」

ダンパーはKW製を採用。バウンド側、リバウンド側それぞれ高速側、低速側の減衰力を調整することが可能。車高も変えられる。ユーザーはオンロード、フラットトラック、バンピートラックの3つのプリセットから選択することになる。
「どうでもいいと考えた部分は一切ない」とウンダーベルグ氏。すべての部品、すべての制御について「徹底的に議論して開発した」のがヌヴォラーリだ。

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