専用設計の3ドアボディ採用 年次改良で細部まで徹底熟成

GRヤリスはもともとWRC(世界ラリー選手権)のトップカテゴリーで勝つためのホモロゲーションモデルとして開発された。トヨタの量販コンパクトの名前=ヤリスを名乗り、基本骨格=GA-Bフォームも普通のヤリスと共通であるものの、クルマとしての実体はまるで別物だ。ヤリスの面影を残したエクステリアデザインも、空力を意識した低全高の3ドア……という基本形式からしてGR専用である。

エクステリア

「Aero performancepackage」系は専用のダクト付きアルミフード、フロントフェンダーダクト、リヤバンパーダクトなどを装着。空力バランスのみならず冷却性能も向上する。最小回転半径は5.3m。

パワートレインも完全な特別仕立てだ。最高出力304PS、最大トルク400Nmと、世界に名だたる2.0〜2.5ℓターボと同等の性能を1.6ℓから絞り出す3気筒ターボも、FFベースながら最大で30対70という後輪寄りの駆動配分を実現する4WD「GR-FOUR」も、すべてGRヤリス(とGRカローラ)のために開発されたものである。変速機も当初は6速MTのみだったが、2024年の改良時に「GR-DAT」と呼ばれる8速ATを追加。その特別なネーミングからも想像できるように、この8速ATは変速スピードを極限まで引き上げており、単なるイージードライブ用ではなく、「トッププロドライバーでもなければ、サーキットでも逆にMTより速い!」というくらいの優れものだ。

乗降性

そんなGRヤリスは20年9月の発売から6年近くが経過するが、特にここ数年は、毎年のように改良の手が入っている。エンジン性能もデビュー当初から32PS/30Nm上乗せされているし、時にはボルトだけを締結力を高めたフランジに変更……などという超マニアックな内容の改良も。また、当初は普通のヤリスと共通だったインテリアも、ダッシュボードからステアリングまでが、GR専用となってしまっている。

インストルメントパネル

スイッチ類とディスプレイを運転席側に15度傾けたほか、上面を水平にしつつ窓映り軽減処理を施した専用インパネを2024年モデルより採用。メーターも12.3インチフルカラー液晶とするなど、より機能重視に進化した。

こうした日々の進化はすべてモータースポーツの実戦現場で鍛えた結果という。GRヤリスは開発チームが寄ってたかって、良い意味でイジくりまわしているようにしか見えない。この26年3月に一部改良された最新モデルなどは、メーカー自ら「26式」と呼ぶほどで、こういうノリは好事家にはたまらない。

居住性

もっとも、今や実質的に専用マシンで争われるようになったWRCの最前線(=ラリー1)では、市販版GRヤリスのようなホモロゲーションモデルも不要である。ただ、それ以外のカテゴリーでは、GRヤリスの存在感は逆に増している。例えば、同じWRCでもラリー2マシンのベース車両としての役割があるのに加えて、ラリーやスーパー耐久、ジムカーナ、ダートトライアルなど、全日本レベルではあらゆるカテゴリーで上位争いの常連である。こうして草の根レベルから世界のモータースポーツを支えるGRヤリスは、同時にこのサイズでは世界最速と言える高性能スポーツである。

うれしい装備

縦引きパーキングブレーキを全車にオプション設定。ステアリングから持ち替える際の動作が少なくなるため、スポーツ走行時にドリフトのきっかけをつくる際はもちろん街乗りでも操作性に優れている。
2024年モデルより採用された専用インパネでは助手席オープントレーの高さが拡大。ラリーではコ・ドライバー用モニター、公道ではスマートフォンなどを見やすいよう立てた状態で置きやすくなった。
月間販売台数   603台(25年11月~26年4月平均値)
現行型発表    20年9月(一部改良 26年3月)
WLTCモード燃費   12.4㎞/ℓ※6速MT車

ラゲッジルーム

回すほど鋭さを増す1.6ℓターボや、前後駆動配分が53対47に固定されるグラベルモードでトラクションが最大化されるGR-FOURなどは、まさにリアルワールドで鍛え抜かれた走りである。また、これだけのスピードにも関わらず、拍子抜けするほどストローク感たっぷりのフットワークに、好事家は「本物のWRCの世界はこうなのか」と思いを馳せる。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.177「2026年 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

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