
先生:損 保太郎
某損保サービスセンターに勤務。保険を使いたくない場合でも、事故が起きたらまず保険会社へ連絡した方がいいという。その理由は……。
生徒:モン太
「等級が下がって保険料が上がるくらいなら、自分で示談しようかな」と悩み中。でも事故交渉の知識はないし、不安もいっぱいだ。
保険会社に連絡しただけでは等級は下がらない!
事故を起こして保険会社へ連絡したら、示談交渉の代行をしてくれます。ただし、小さな事故の場合、保険を使うと等級が下がってしまうため、等級を下げないよう自分で交渉した方がいいのか……。そんなモヤモヤについて解説します。
モン太 ボクみたいな若年層は保険料も高いし、お金もないモン。だから小さい事故だったら、保険を使って保険料が上がるくらいなら、自分で示談した方がいいのかなって……。でも知識もないし不安だモン。
損 保太郎(以下、保太郎) その気持ちは分かるけど、知っておいてほしいのは、保険会社へ事故の連絡をしただけで等級が下がることはないよ。
モン太 えっ、連絡した時点で等級ダウンじゃないモンか?
保太郎 違うんだよ。例えば「対物賠償責任保険」に基づいて事故対応を進める場合でも、まず相手の損害額を確認する。そのうえで、保険を使った場合に次の契約以降で保険料がどのくらい増えるのか、今回の事故で支払える保険金がいくらになるのかを比べながら、保険を使うかどうかを検討できるんだ。
モン太 じゃあ、とりあえず事故を連絡して、そのあと保険を使うか決めてもいいモンか?
保太郎 そういうこと。小さな事故でも、まず相談してから判断した方がいいね。
【図】将来保険料シミュレーション例

※現在13等級・年間保険料6万円・3等級ダウン事故の場合の一例
保険を使わなかった場合は、次契約14等級→2年目15等級→3年目16等級。年間保険料は5万8800円→5万7600円→5万7600円で、3年間の累計は17万4000円。
いっぽう、保険を使った場合は、次契約10等級・事故有期間3年→11等級・2年→12等級・1年。年間保険料は9万1200円→9万円→8万7600円で、3年間の累計は26万8800円となる。
この試算では、3年間の保険料の差は9万4800円だ。
モン太 9万4800円も違うモンか!
保太郎 あくまでこの条件での一例だけどね。例えば今回の事故で支払う賠償額が、この将来の保険料増額分より少なければ、保険を使わず自分で支払った方が結果的に負担が少なくなるケースもある。反対に賠償額が大きければ、保険を使った方が負担を抑えられることもあるんだ。
モン太 なるほど~。事故を連絡したからって、その場ですぐ「保険を使います!」と決めなくてもいいモンね。
保太郎 そうなんだ。
小さな事故でも油断禁物! 修理代は思った以上になることも
モン太 でも、小さなキズくらいだったら自分で相手と話した方が早くないモン?
保太郎 自分で交渉する選択肢はあるけれど、事故が起きた場合はまず保険会社へ連絡してほしいね。仮に最終的には自分で交渉することになっても、事故対応のプロの視点からアドバイスを受けられる場合があるから。それに、損害額を自分の感覚だけで判断するのは難しいんだよ。
モン太 どういうことだモン?
保太郎 例えば知り合いの整備工場なら、頼み込んで安く直してもらえることもあるよね。でも損害額を確認する場合は、そうした特別な価格ではなく、一般的に必要となる適正な修理費用を基準に考える。だから一般の人が想像していたより、修理費が高く感じることもあるんだ。
モン太 そういえば以前、友達のクルマを擦っちゃった時、誠心誠意謝ったら、その友達が知り合いの整備工場に頼んで修理費用を安く抑えてもらったことがあるモン。
保太郎 保険会社で損害額を確認する場合は、そういう特別な金額とは別に考えることになるね。最近のクルマは部品や修理費用が高額になることもあるし、相手が修理期間中に代車を必要とする場合には、相当な範囲の代車費用が賠償額に含まれるケースもある。見た目には小さな事故でも、最終的な賠償額が思った以上に大きくなることはよくあることだよ。
モン太 負い目がある中で交渉するのもイヤだし、当事者同士の話し合いってトラブルになりそうで怖いモン。
保太郎 そうだね。だからこそ、まず保険会社へ事故を報告しておくことが大切なんだ。
ケガの事故でも「即3等級ダウン」とは限らない
モン太 ところで、相手をケガさせてしまった場合はどうなるモン? さすがに保険会社へ対応をお願いしたら等級ダウン?
保太郎 この場合も、保険会社へケガの対応を頼んだ時点で即等級ダウンというわけではないんだ。相手にケガをさせた事故では、任意保険会社が自賠責保険分も含めて被害者の治療費などをまとめて支払う「一括対応」が行われることがある。
モン太 保険会社が病院に治療費を払ってくれているなら、もう任意保険を使ったことになるんじゃないモン?
保太郎 そこは最終的な精算がポイントなんだ。例えば被害者のケガが幸い軽く、治療費や慰謝料など傷害による損害の総額が自賠責保険の補償範囲内で収まり、結果的に任意保険から等級に影響する保険金の支払いがなければ、等級ダウンにならない場合がある。
自賠責保険では、傷害による損害について被害者1人につき120万円が支払限度額。例えば最終的な損害額が20万円で自賠責保険の範囲内に収まれば、任意保険からの支払いがなく、等級に影響しないケースがあるというわけだ。
モン太 なるほど~。保険会社に対応をお願いしたら、何でも等級が下がるわけじゃないモンな。
保太郎 そうなんだ。それに、保険金やサービスを利用しても等級に影響しないものもある。
例えば契約内容によっては、自分のケガを補償する人身傷害保険、事故の相手との交渉などで弁護士費用を補償する弁護士費用特約、事故や故障で自走できなくなった時に使えるロードサービス、そして原付などで使えるファミリーバイク特約などだね。
モン太 いろいろあるモンな~。等級が下がるのがイヤだからって、保険会社に連絡しないのはもったいないモンね。
保太郎 その通り。事故が起きたら、まず保険会社へ事故を連絡する。そこで契約内容や利用できる補償、保険を使った場合の将来の保険料などを確認して、そのうえで使うかどうかを判断すればいいんだ。
モン太 保太郎さん、よく分かったモン。事故を起こしてしまったら、迷わずまず保険会社へ連絡するモン!
※ここでは一般的な自動車保険や交通事故について解説しています。等級の扱いや補償内容、示談交渉サービスの利用条件、自賠責保険との精算方法などは、契約内容や事故状況によって異なる場合があります。詳しくは加入している保険会社または代理店へご確認ください。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】
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