二枚の鉄板を合わせた形から「モナカマフラー」
1977年までのスーパーカブに装着されていたのが、通称「モナカマフラー」。
プレスしたスチール板を組み合わせて作られ、その合わせ目のある姿がお菓子のモナカを思わせることから、いつしかそう呼ばれるようになった。
性能的に特別優れているから残った愛称というより、魅力はむしろその見た目と音。丸みを帯びたクラシカルなフォルムと独特の排気音を好み、今でもモナカマフラーを愛用するユーザーは多い。
旧いカブを眺めるとき、「このマフラー、モナカだな」と分かるだけでもちょっと楽しい。見た目から生まれた、いかにもカブらしい愛称なのである。

クラシカルな形と独特のサウンドも、旧いカブならではの魅力。この形状をモチーフにした社外製マフラーも存在する。
燃料タンクを車体に収めた!「一体型フレーム」
スーパーカブの車体は、1960年代まではフレームと燃料タンクが別体だった。
大きな変化が訪れたのが1971年。新たに登場したスーパーカブ デラックスでは、燃料タンクを鋼板プレスのボディ内部へ収めた一体型の車体構成を採用した。資料でも、別体だったガソリンタンクを内蔵し、鋼板プレスの一体型ボディになったことが紹介されている。
その後しばらくは従来型と併売されたが、1981年からは全車が一体型フレームへ移行。燃料タンクを外から見えない位置へ収めたことで、車体の見た目もよりスッキリ。現在につながる“カブらしいまとまりのある形”を作るうえでも、重要な節目だったのである。

1971年登場のデラックスから採用された一体型ボディ。従来は別体だった燃料タンクをフレーム内部へ収め、車体周りをスッキリまとめた。
ついには“形そのもの”が認められた!「立体商標登録」
そしてスーパーカブの“形”を語るうえで、外せないのが「立体商標登録」。
2014年、スーパーカブの車体形状そのものが立体商標として登録された。エンブレムや車名がなくても、その姿を見れば「スーパーカブだ」と認識できるほど、長年にわたって基本デザインが浸透してきたことが認められたのである。
立体商標と聞いても少し分かりにくいが、代表例としては不二家の「ペコちゃん・ポコちゃん人形」や「ヤクルト」の容器などが知られている。つまり、名前やロゴがなくても“その形を見れば何の商品か分かる”ほど、形そのものに識別力があるものが対象になる。
そんな中でスーパーカブは、乗り物そのものの形状として日本で初めて立体商標登録を実現。二輪車だけでなく、自動車業界全体でも初のケースだった。
1958年の初代C100から、機能を高めながらも一貫したデザインコンセプトを守ってきた。その積み重ねの先に、「形だけでカブと分かる」というところまでたどり着いたわけだ。

ロゴや車名がなくても“カブ”と分かる。それだけ長く愛され、姿が社会に浸透してきた証でもある。
モナカマフラー、一体型フレーム、立体商標登録。ひとつはパーツの愛称、ひとつは車体構造、もうひとつはブランドとしての評価と、それぞれ意味は違う。でも共通しているのは、どれもスーパーカブの“形”にまつわる言葉だということ。細かなディテールは時代とともに変わっても、見た瞬間に「カブだ」と分かる。そんな強い個性を68年にわたって積み重ねてきたからこそ、スーパーカブは今もスーパーカブなのである。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】