もはや「ベース車は何?」フレームから1本ずつ作った完全ワンオフ
カスタムバイクでよく使う「ベース車」という言葉。でも、このマシンの場合は少し説明が必要かもしれない。
エンジンやハーネスなど多くの部品にはスーパーカブ系を使っているものの、肝心のフレームは既存車から流用したものではない。製作したのは静岡県に拠点を置く、カスタムビルダー「サイレントヒルワークス」。鋼管パイプを手曲げし、イチから作り上げた完全ワンオフのダブルクレードル形状のフレームなのだ。
上下とも2本のパイプで構成された骨格は、一見するとホンダ・モトラのようにも見える。だが、エンジンを吊り下げるモトラとは違い、こちらはエンジンをフレームで包み込む構造。さらにリヤにはスイングアームすらなく、ホイールを直接フレームへ取り付けたリジッド仕様としている。
フロントフォークもストレートパイプを加工したリジッドタイプ。つまり前後ともサスペンションなし。1960年代のアメリカン・ビーチクルーザー自転車をイメージした細身のシルエットを、原付バイクとして成立させている。
しかも、この完全ワンオフフレームでナンバーも取得済み。単なる展示用ショーバイクではなく、公道走行できる車両として仕上げている。

鋼管パイプを手曲げして製作した完全ワンオフのダブルクレードルフレーム。前後10インチの小径ホイールとリジッド構造で、細く長い独特のシルエットを作る。

スイングアームを持たないリジッド構造。シートをかなり後方へ配置することで、コンパクトな車体でも窮屈にならない工夫も。
「L型2気筒エンジンまで作った!?」片側のシリンダーはダミーでした
このマシンを近くで見ると、まず目が止まるのがエンジンだ。
スーパーカブ系横型エンジンの上から、もう1本のシリンダーが立ち上がっている。シリンダーヘッドも付いていて、どう見てもL型2気筒エンジンに見える。「え?作ったの???」
ところが、上側のシリンダーは完全なダミー。実際に動いているのは下側のC50系ノーマル50ccエンジンのみ。ダミー側にもキャブレターを取り付けるという本気のシャレ心。キャブレターはPB13で、ダミーシリンダー以外のエンジン本体は基本ノーマルとなっている。
速さのためでも、排気量アップのためでもない。見た瞬間に「何これ!?」と思わせるために、ここまで作る。その振り切り方こそ、このマシンの魅力だし、“原チャリ”だからこその楽しみ方だろう。

本当にL型2気筒を積んでいるように見えるが、上側はダミーシリンダー。キャブレターまで備えて、本物らしく作り込んである。
前後ホイールは10インチのスポークタイプで、白いサイドウォールが目を引くタイヤを装着。リジッドフォークと組み合わせることで、バイクというよりカスタム自転車にも近い軽快な雰囲気を作っている。

前後10インチのスポークホイールにシンコー製ホワイトウォールタイヤをセット(サイズは3.50-10)。フロントフォークはストレートパイプを加工したリジッド仕様だ。
ベンツ用タンクにトラックのバックランプ!? 流用品とワンオフのオンパレード
さらに見ていくと、バイク専用品だけでは作っていないことが分かる。
シート下に収まる丸いアルミ製の燃料タンクは、メルセデス・ベンツのエアサスペンション用タンクを流用したもの。黒いパイプフレームの中にアルミ地の丸いタンクが収まることで、メカニカルなアクセントにもなっている。

丸いアルミ製燃料タンクは、メルセデス・ベンツのエアサス用タンクを流用。異用途の部品なのに、ワンオフフレームへ自然に収まっている。
ハンドルも市販品ではなくワンオフ。大きく手前へ引いたプルバック形状に白いグリップを組み合わせ、ブレーキレバーには自転車のBMX用を流用する。
さらに黄色い小径ヘッドライトの正体は、昔のトラックに使われていたバックランプ。バイク用ヘッドライトではなく、狙ったサイズと雰囲気に合う部品を別ジャンルから持ってくる。この自由な部品選びが、ビルダーのセンスだし車両の空気感を作っている。

高く立ち上がるワンオフのプルバックハンドルに白いグリップ、BMX用レバーをセット。黄色い小径ライトは、昔のトラック用バックランプを流用している。
シートは社外製のリトルカブ用。かなりコンパクトなサイズだが、フレーム後方へ配置することで、見た目ほど窮屈なポジションにはなっていない。
いっぽうで前後ともリジッドなので、乗り心地はかなりハード。長時間のライディングには覚悟が必要だ(笑)。
ハンドシフトもマフラーもワンオフ! “1から作る”がこの車両の基本
車体中央から伸びる長いレバーは、3カ所のリンケージを介して変速するハンドシフト。一般的なジョッキーシフトより前方にレバーがある独特の配置で、車体そのもののデザイン要素にもなっている。

3カ所のリンケージを介して変速するハンドシフト。長いレバーが車体中央から立ち上がる独特のレイアウトだ。
マフラーもワンオフ製作。細身のパイプをフレーム下部へ沿わせることで、せっかくのワンオフフレームを隠さず、車体全体の細いシルエットを崩さないようにまとめている。
フレームを作り、ハンドルを作り、マフラーを作る。そこへベンツ用のエアサスタンク、トラックのバックランプ、BMX用レバーなど、バイク以外の部品も惜しみなく投入する。そして最後に、ダミーシリンダーまで載せてL型2気筒風に仕上げる。既製品を選んで組み上げるカスタムとは、まったく違うアプローチだ。
スーパーカブの部品を使ってはいる。でも完成した姿は、どのスーパーカブにも似ていない。サイレントヒルワークスの技術と発想をそのまま形にした、まさにワンオフのオンパレード車なのである。
このマシンを捕獲したイベントはこちら!

今回のマシンを撮影したのは、2026年7月19日に森の駅箱根十国峠で開催された「十国峠原付祭十周年」。会場には100台を超える原付カスタムやクラシックモデルが集まり、そのなかでもこの車両はワンオフフレームと独特のシルエットでひときわ存在感を放っていた。
次回の十国峠原付祭は2027年7月18日!

次回の「十国峠原付祭」は、2027年7月18日(日)10:00〜14:00に森の駅箱根十国峠で開催予定。参加費は1000円で、ミッション部門、電動・スクーター部門、トランポ部門を設定。基本レギュレーションはベース車が原付または原付二種であることで、排気量アップによる軽二輪ナンバー車も参加OK。最新情報は公式サイトでご確認を。
2026年11月22日は「二輪×四輪トランスポーターミーティング」を開催!

2026年11月22日(日)には、バイカーズパラダイス南箱根で「二輪×四輪トランスポーターミーティング」も開催予定。時間は10:00〜14:00で、クルマにバイクを積んで参加するスタイルのミーティングだ。車種・排気量不問の「Champion’s Pick」も同時開催。自走での参加も受け付けている。
【モトチャンプ編集部】