二輪最大手のホンダとフードデリバリー最大手のUberの安全への取り組み

ホンダはホンダ二輪・四輪が関与する交通事故死亡者を2030年までに半減、2050年までにゼロを目指している。そのため、「Honda SENSING」に代表されるさまざまな安全技術を開発・実用化しているが、この目標にはそういった技術が搭載されていない既存車も含まれているため、技術開発だけで達成できるものではない。

そのため、ホンダは交通社会に関わる全ての人の安全意識と知識の向上と、交通システムやサービスも含む、技術開発・啓発活動・政策支援という3つのポイントで交通安全に取り組んでいる。こうした取り組みは、2025年2月にFIA(国際自動車連盟)の「FIA Road Safety Index」で自動車業界初の最高ランク「3スター」を獲得するなど、国際的にも高い評価を受けている。

「FIA Road Safety Index」授賞式

一方、全世界で1000万人以上(二輪・四輪合計)の配達パートナー数のデリバリープラットフォームのUberも、安全教育・安全施策には力を入れている。特に二輪では安全啓発に多くの知見をもつホンダとパートナーシップを組み、安全啓発強化コンテンツの共同開発している。

都市部では特に見かけることも多いUberの配達バッグ。写真は取材会による体験時のもの。

そのホンダとUberが「二輪安全運転診断アプリ」を活用した実証実験を実施。このアプリは運転行動の分析と診断を行なうもので、運転診断の可視化することで安全意識向上と運転改善を図るものだ。専用機器を必要とせず、スマートフォンのみで完結するため、車種を問わず多くのライダーが利用することができるのも特徴。

二輪安全運転診断アプリ

この実証実験は「Uber Eats安全運転キャンペーン」として9月1日〜9月28日の4週間で実施されており、二輪を利用するUber配達パートナー1500名が参加している。今や欠かせぬ存在となったフードデリバリーという場において、今回の実証実験がどのような結果を見せるのか大いに気になるところだ。

「二輪安全運転診断アプリ」を実体験

会場となったのはホンダの二輪運転技術指導の本丸とも言える「交通教育センター・レインボー埼玉」(埼玉県桶川市)。凄腕のインストラクターが揃い、白バイ隊員もトレーニングに来るところだ。

交通教育センター・レインボー埼玉

原付一種(ディオ)と普通二輪(CB400SF)が体験車両として用意され、簡単なコースを1周してアクセル、ブレーキ、コーナーリングを判定する。

体験用に用意されたディオとCB400SF。交通教育センター・レインボー埼玉の配備車両を使用。

アプリはスマートフォンに内蔵されるGセンサーとGPSのデータで判定するため、スマートフォン自体はライダーが身につけていてもバイクに固定しても、バイクの収納スペースに入れておいても問題なく作動する。

CB400SFでの体験。ディオはスマートフォンをハンドル下のトレイに入れていたが、収納の無いCB400SFではUberバッグに入れてテストした。

コースを1周すると、アクセル、ブレーキ、コーナーリングについて100点満点で判定が表示されるほか、判定箇所も明示された。判定箇所は地図(地図データはアップルマップ)と連動しており、点数の低かった場所は要注意点ということになるだろう。なお、今回の体験では判定箇所ごとに装備したインカムから音声で判定ポイントがアナウンスされたが、実際にはライディングの妨げにならないようにリアルタイムでの音声判定は無い。

体験での走行ルートを操作履歴。掲載画面ではわかりにくいが、緑の丸がブレーキ操作、赤い丸がアクセル操作。小さな黄点が速度計測点。速度により点の大きさと色がグラデーションで変わる(黄→オレンジ→赤)。
体験時のスコア。
体験時の各操作の判定。

なお、判定についてはホンダ二輪インストラクターの裁量を数値化したものが基準になっているそうだ。基本的には「急」のつく操作が減点対象となる。やはり、急な操作をしないのが安全運転の基本とい言えよう。

インストラクターによる模擬ライディング。良いパターンと悪いパターンが実演され、その判定スコアの違いを見ることができた。
「二輪安全運転診断アプリ」に表示される走行ルートと操作履歴。
「二輪安全運転診断アプリ」の安全運転スコア。
走行ごとのスコアが履歴として残る。

危険予測トレーニング「Honda デリバリースクール Webinar」

また、Uberはアプリでの安全運転教育や、オンライン安全運転講習を開催している。教育コンテンツアプリについてはホンダのKYT(危険予測トレーニング)を活用した二輪に特化したもので、現在は4シチュエーション×4パターンの16種類が用意され、2025年3月より導入している。

「Honda デリバリースクール Webinar」の画面。動画を見て、危険を予測し、適切な対応を選択する形式。画像は雨の高速道路もしくは自動車専用道路というシチュエーション。
「Honda デリバリースクール Webinar」の危険要因選択画面。要因はひとつでは無いことも……。
「Honda デリバリースクール Webinar」の回答画面。この場合、ミラーに車間距離詰めているクルマが映っている。
「Honda デリバリースクール Webinar」の回答画面。雨天も危険要因になっており、要因がひとつでないことも……。
「Honda デリバリースクール Webinar」の行動選択画面。
「Honda デリバリースクール Webinar」の行動選択画面。
「Honda デリバリースクール Webinar」の行動選択結果画面。正解の場合。
「Honda デリバリースクール Webinar」の行動選択結果画面。不正解の場合。

様々なシチュエーションでの危険予測についてはホンダやJAFが公開しているが、実際の運転中に突然そのような状況に陥る前にシミュレーションで体験して、その際の適切な対応を考えておくことは安全運転に寄与することになるだろう。

日本導入はまだか?
クルマ用安全運転アプリ「Honda Driver Coaching」を体験

また今回の体験では、ホンダが2023年から北米の若者や初心者ドライバーへの安全運転意識向上のためにリリースしている「Honda Driver Coaching」も用意された。これは、前述の「二輪安全運転診断アプリ」同様、ステアリング、ブレーキ、加速などのドライバーの操作をリアルタイムで分析し、サポートが必要なときにドライバーにアドバイスするものというもの。搭載車限定ではあるものの、Honda SENSINGも連動してより高度な診断も可能となっている。

「Honda Driver Coaching」の車載ディスプレイ表示画面。

トレーニング完了後は、計算された運転スコアにより、ユーザーは具体的な運転ヒントとともに、現在の運転スキルの状況を確認することができるのだ。
さらに、投稿情報による安全マップ「SAFETY MAP」も組み込まれており、要注意情報などが都度都度案内された。

「Honda Driver Coaching」の同乗体験。

体験用に日本語化はされていたものの、日本版の正式リリースについては未定。「Honda Driver Coaching」も「SAFETY MAP」も、交通安全のためには有効なツールと感じられただけに日本版のリリースに期待したい。

安全運転アプリの体験動画。