まずは泥まみれのエンジンルームを丸洗い!
完全水没したダットラの復活作業に着手
前回は、機械式駐車場からのサルベージと簡単な状態確認までを終えた水没D21復活劇。その後、ガレージミサイルへと搬送されたのだが、ここでまたもやサイドブレーキが解除できないという問題が再発。積載車から降ろせないという、まさかの展開から作業がスタートすることとなった。

搬出時と同じように、強引に引っ張って固着を解除する方法も検討された。しかし、今後の移動を考えれば、ここでリアブレーキを分解してしまうのが得策。そこで積載車の荷台上で、リアブレーキの解体作業に取り掛かることとなった。

もちろん、サビで固着し、ライニングまで張り付いている可能性があるドラムブレーキは簡単には外れない。少しずつドラムを動かしながら慎重に分解を進めていくが、やはり水没の影響で発生したサビに加え、細かな砂まで噛み込んでおり、すんなりとは外れてくれなかった。


ようやくドラムを取り外してみると、ライニングとドラム内側にはサビによって固着した跡が確認できた。さらにサイドブレーキワイヤーの動きも渋かったことから、こちらにも砂などが噛み込んでいる可能性がある。どうやら今回のサイドブレーキ固着は、複数の原因が重なって発生していたようだ。

積載車から降ろすだけでもひと悶着あったが、ここからが本格的な再生作業のスタート。まずはエンジンの状態を確認することになるのだが、泥水を被ったエンジンルームは想像以上の汚れっぷり。確認作業に入る前に、まずはこの汚れを落とすことから始める必要があった。


通常なら、高圧洗浄機でエンジンルームを洗うなどという荒業は行わない。しかし、今回は天井まで水に浸かった冠水車。細かいことは気にせず、隅々までジェット水流を当てて汚れを洗い流していく。
すると、表面に付着した泥汚れはもちろん、長年にわたって蓄積した油汚れまでスッキリと落ちていく。特にインマニ裏側の隙間やブロック下部など、手の入りにくい場所まで効率よく洗浄できるのは大きい。地面を流れていく水を見れば、エンジンルームだけでも相当量の泥が堆積していたことが分かる。

エンジンルームだけでなく、ボンネットのプレス裏やワイパーカウル内部にも冠水時の泥が残っている。こうした汚れを放置すれば、今後のサビを誘発する原因にもなるため、できる限り洗い流しておくのが得策だ。
さらにボンネット裏やバルクヘッドなど、長年の使用で蓄積した汚れもクリーナーとブラシを使って除去。結果として、冠水前よりもキレイになってしまった部分もあるほどだ。こうなると、修復に向けたテンションも自然と上がってくる。
もっとも、ここまでの作業はあくまで現状確認のための準備。今後乗り続けていくためには必要なプロセスだが、エンジン内部の状態とは直接関係がない。最悪の場合、ここまでの清掃が徒労に終わる可能性だってある。いよいよ、その核心部分を確認する時がやってきた。


清掃を終えたところで、今回のハイライトともいえるシリンダー内部の状態を確認する。まずはコイルカバーを外し、イグニッションコイルを抜き取っていく。

すると、1番と3番のプラグホールには大量の水が溜まっていることが判明。一方、2番と4番は若干の湿り気がある程度で、大量の水が侵入した形跡は見られない。
2番と4番はコイルのパッキンが機能して水の侵入を防げたのか、それともすでにシリンダー側へ流れ込んでしまった後なのか。この時点では判断できない。ただ、少なくとも状況が楽観できるものではないことは確かだ。


続いてエアブローでプラグホール内の水分を飛ばし、プラグを取り外す。ところが、ここで予想外の結果が待っていた。
取り外したプラグには水没したような痕跡がなく、驚くほどドライな状態が保たれていたのだ。さらに、そのままシリンダー内部へファイバースコープを差し込んで確認。すると、シリンダー内には水が溜まっていないどころか、浸水した形跡すら見当たらない。
もちろん、冠水から長期間放置されていたことを考えれば、シリンダー壁面にサビが発生している可能性は十分にある。しかし、実際に内部を覗いてみると、状態は想像以上に良好。これは嬉しい誤算だ。
もしかすると、思ったよりも難なく復活できるのではないか。
ここにきて、D21再生プロジェクトへの期待が一気に高まってきた。


もしシリンダー内に水が溜まっていた場合は、プラグを外した状態でクランキングし、内部の水分を排出する必要がある。しかし、電源をONにできない状態では、クランクを手動で回さなければならない。
その場合、カップリングファンやラジエターを取り外して作業スペースを確保する必要があり、工程は一気に増える。さらにシリンダー内部までサビが進行していれば、エンジンを全バラにしてオーバーホールする可能性も出てくる。
そう考えると、まずこの工程を回避できたことは大きい。今後の復旧作業をスムーズに進めるうえでも、まさに吉報と言える。

そして、今回の水没D21にはもうひとつ大きなアドバンテージがある。
冠水前からバッテリー端子を外してあり、冠水後も一度も電源を入れていないのだ。そのため、電装系や各種センサーに通電によるダメージが加わっていない可能性が高く、これは修復プロジェクトにとって非常に大きなメリットとなる。
ECUについても、車内まで冠水していたことから浸水が懸念された。しかし、ケースを開けて確認したところ、内部には浸水した形跡が見られない。
とはいえ、現段階で「無事」と判断するのはまだ早い。念のため完全に乾燥させたうえで、内部の状態を改めて確認する。修復作業の間はコンテナ内でしっかりと乾燥させ、慎重に復活への道筋を探っていく。
サイドブレーキの固着から始まり、泥だらけだったエンジンルームの洗浄、そしてシリンダー内部の確認まで。ここまでは想定外の苦労もあったが、少なくともエンジン内部に関しては明るい兆しが見えてきた。
果たしてこのD21は、本当に息を吹き返すことができるのか。
次回はいよいよ、さらに踏み込んだ復旧作業へと進んでいく。
PHOTO&REPORT:渡辺大輔(Daisuke WATANABE)


