目指したのは「リビングルーム並みの静粛性。声を張らずに車内で会話できること」

新型日産エルグランドにはいくつもの新技術が投入されている。走行用モーター、発電用モーター、減速機、増速機、インバーターの5つのユニットを一体化した「第3世代e-POWER」のドライブユニットは先に新型キックスで採用済みだが、新開発のZR15DDTe型1.5L直列3気筒ターボエンジンとの組み合わせは(国内では)エルグランドが初採用である(キックスはHR14DDe型1.4L直列3気筒自然吸気エンジンを搭載)。

5月末から受注を開始した新型エルグランドは、8月23日時点で8900台を受注。販売面では好調なスタートダッシュを切っている。
2グレード展開で、「X e-4ORCE」は689万7000円、「G e-4ORCE」は757万9000円。今回の試乗車は後者。

加減速による車体の揺れを抑えてスムーズで快適な乗り心地を実現し、モーターとブレーキの統合制御により気持ち良いコーナリングを実現する電動駆動4輪制御技術の「e-4ORCE」もアリアやエクストレイル、セレナ、キックスに続いての採用になるが、新型エルグランドはe-4ORCEに走行に応じて4輪の減衰力を可変する「インテリジェント・ダイナミックサスペンション」を組み合わせているのが新しい。走行状態やドライブモードに応じてe-POWER、e-4ORCE、インテリジェント・ダイナミックサスペンションの特性を変化させ、シーンに応じて最適な走行を実現する。

新型エルグランドは第3世代e-POWERを搭載。発電特化型エンジン(ZR15DDTe)と、モーター/発電機/インバーター/減速機/増速機の5つの主要部品をひとつにまとめた5-in-1電動ユニットで構成されている。

これらの新技術により、操舵や加速、減速の各シーンにおける車体の動きが穏やかで、期待以上に安定した姿勢でよく曲がる動きを披露してくれることは、以前、テストコースでの試乗で確認した。残念ながら前回も今回も、2列目と3列目での移動は体験できていない。停車時に座ったのみであり、とくに2列目の空間的なゆとりに関しては申し分がないことを再確認している。

運転席での体験に限られるが、静粛性の高さも新型エルグランドの大きな特徴で新技術が適用されている。担当した技術者は、「リビングルーム並みの静粛性を目指して開発しました。とくにやりたかったのは、声を張らずに車内で会話できることです」と話す。

プライベートラウンジのような空間を目指して開発されたというインテリア。
シフトセレクターは、最近の日産の電動車に共通するプッシュスイッチ式。
USB-C電源ポートは、前席まわりだけで3個、クルマ全体では7個も備わる。

静粛性向上のために投入した新技術は「アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)」だ。これまでも消したい音に対してスピーカーから逆位相の音を発することでノイズを低減するシステムがあったが、新型エルグランドに適用した新ANCは、複数の音に対応したのが新しい。「エンジンからの騒音に加えてロードノイズも低減する機能は世界初」とのことである。

回転するタイヤが路面を叩いて離れることによって発生するノイズに関しては、30Hz付近のドラミング、50Hz付近のロードノイズ、200Hz付近のタイヤ空洞共鳴音の3つを同時に低減しているという。

新型エルグランドのタイヤサイズは235/60R18。

「ANCで低減しているのは300Hzまでです。そこまでの音を消すと他の音が聞こえやすくなるので、周波数の高い音は超高遮音ガラスで抑え込んでいます。さらに、第3世代e-POWERによって元から(エンジン起因の)振動を減らしています」

超高遮音ガラスはバックドアを除くすべてのガラスに採用している。

「ガラスに挟み込む遮音膜がドロドロしているというか、ねっとりしていて減衰力が高いので、風切り音を効果的に低減します。Aピラーの三角窓のところは形状的に難しく、歩留まりが悪い。そこをなんとか解決して採用できています。海外ではパトロールに入れており、日本向けではエルグランドが初採用。(音が反響する)トンネルを走るとANCの効果がよくわかります」

G e-4ORCEの内装色は写真の「紫檀(シタン)」のほか、ホワイト基調の「銀雪 (ギンセツ)」を用意。X e-4ORCEはブラック基調の「ダーク」となる。
2列目シートは全面新設計。座圧分布をより広い面積で分散させる設計により、疲労軽減が図られた。
3列目は最大で3名乗車が可能。

発電専用のエンジンは、定常走行時は約105km/hまで基本的に2000rpmで発電を行なう。3気筒なのでこのときの周波数は50Hz、30km/h以下では1600rpmに抑えるため、周波数は40Hzになる。キックスの発電用エンジンも3気筒だが、エルグランドのエンジンの方が同じ回転数でも過給によって大きなトルクを発生させるのでそのぶん振動は大きく、ANCで音を叩く価値があるという。

救急車のサイレンも音楽も消さず、路面に合わせて学習を重ねる

ANCで音を消すと聞くと、「救急車のピーポー音が聞こえないのでは?」と心配になる人がいるようで質問も受けるそうだが、ご心配なく。ピーポー音の「ピー」は960Hz、「ポー」は770Hzなので、ANCのカバー範囲外。筆者は音楽をかけたときに低音が影響を受けるのではと疑問を呈したが、「エンジンやタイヤの振動に起因する音だけ消しているので、車室内の会話や音楽は影響を受けません」と否定された。

フロントサスペンション:ストラット式
リヤサスペンション:マルチリンク式

心配事はまだあって、乗員の頭の位置に合わせてチューニングしているはずなので、位置がずれたら効果が減るのではと勘ぐった。これも即座に否定された。

「300Hzくらいまでだと、頭を動かしたくらいではあまり変わりません。天井には専用のマイクが7個付いており、3列目まで含めて車室内をほぼ全域カバーするような音場を作っています。頭を動かそうが、シートをリクライニングしようが効果はあまり変わりません」

ANCをオフにするメリットは思い浮かばないのだが、14.3インチ大画面のタッチディスプレイにメニューを呼び出すことでオンオフが可能。納車時はオンになっている。「オフにできるのは、販売店にお越しになったお客様にANCの機能を体感していただくため」と技術者は説明した。

アクティブ・ノイズ・コントロールは、エンジンからの騒音に加えてロードノイズも低減する機能を世界初採用。

停車時、暖機後のエンジンは停止しているのが基本だが、EV走行モードを選択するスイッチを長押しするとチャージモードとなり、エンジンは強制的に始動する。そのタイミングを見計らってANCをオフにすると、アイドリング音が途端に大きくなるのがはっきりわかる。

「世の中に同じ路面はないと言ってもいいくらいです。逆位相の音を出すマップをフィルターと呼んでいますが、システムをオフにすると上書きする仕組みにしており、フィルターを毎回書き換えています。走るごとにフィルターが成長していき、どんどん学習が進んでお客様に合ったANCになっていきます。スタッドレスタイヤに履き替えたら振動が変わりますが、それも学習します」

普段似たようなルートを走る場合は、走るごとにノイズキャンセリングの精度が上がっていくことになる。新型エルグランドは納車時から高い静粛性を誇るが、その静粛性の高さは走りを重ねるごとに成長していく。走れば走るほど、静かになっていくのが新型エルグランドというわけだ。

3列目席の格納方法は、先代のダイブダウン式から左右跳ね上げ式へと改められた。

新型エルグランドで本革シートが欲しいならAUTECH(オーテック)を選ぶべし! 海面のキラメキを表現したフロントグリルも見逃せない

7月16日に発売された日産の新型エルグランド。8月上旬からは、そのカスタムカー「AUTECH(オーテック)」も加わった。湘南の海をモチーフとしたアイテムが、ブランドコンセプトの「プレミアムスポーティ」を体現している。

グレードエルグランド G e-4ORCE(4WD)
全長4995mm
全幅1895mm
全高1975mm(プロパイロット 2.0装備車は1970mm)
室内長3165mm
室内幅1730mm
室内高1315mm(ツインガラスルーフ装備車は1310mm)
乗員人数(名)7
ホイールベース3000mm
最小回転半径5.8m
最低地上高165mm
車両重量2440kg
パワーユニット1.5L直列3気筒ターボ+e-POWER(第3世代)
エンジン型式ZR15DDTe
エンジン最高出力103kW(140PS)/5000rpm
エンジン最大トルク228Nm(23.2kgm)/3600rpm
燃料(タンク容量)レギュラーガソリン(67L)
モーター型式・種類フロント:YM52/リヤ:MM45(交流同期電動機)
モーター最高出力フロント:151kW(205PS)/リヤ:100kW(136PS)
モーター最大トルクフロント:330Nm(33.7kgm)/リヤ:195Nm(19.9kgm)
バッテリー種類リチウムイオン電池
燃費(WLTCモード)16.8km/L
サスペンション前:ストラット式 後:マルチリンク式
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク 後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ235/60R18
価格757万9000円