目指したのは「リビングルーム並みの静粛性。声を張らずに車内で会話できること」
新型日産エルグランドにはいくつもの新技術が投入されている。走行用モーター、発電用モーター、減速機、増速機、インバーターの5つのユニットを一体化した「第3世代e-POWER」のドライブユニットは先に新型キックスで採用済みだが、新開発のZR15DDTe型1.5L直列3気筒ターボエンジンとの組み合わせは(国内では)エルグランドが初採用である(キックスはHR14DDe型1.4L直列3気筒自然吸気エンジンを搭載)。


加減速による車体の揺れを抑えてスムーズで快適な乗り心地を実現し、モーターとブレーキの統合制御により気持ち良いコーナリングを実現する電動駆動4輪制御技術の「e-4ORCE」もアリアやエクストレイル、セレナ、キックスに続いての採用になるが、新型エルグランドはe-4ORCEに走行に応じて4輪の減衰力を可変する「インテリジェント・ダイナミックサスペンション」を組み合わせているのが新しい。走行状態やドライブモードに応じてe-POWER、e-4ORCE、インテリジェント・ダイナミックサスペンションの特性を変化させ、シーンに応じて最適な走行を実現する。

これらの新技術により、操舵や加速、減速の各シーンにおける車体の動きが穏やかで、期待以上に安定した姿勢でよく曲がる動きを披露してくれることは、以前、テストコースでの試乗で確認した。残念ながら前回も今回も、2列目と3列目での移動は体験できていない。停車時に座ったのみであり、とくに2列目の空間的なゆとりに関しては申し分がないことを再確認している。
運転席での体験に限られるが、静粛性の高さも新型エルグランドの大きな特徴で新技術が適用されている。担当した技術者は、「リビングルーム並みの静粛性を目指して開発しました。とくにやりたかったのは、声を張らずに車内で会話できることです」と話す。

静粛性向上のために投入した新技術は「アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)」だ。これまでも消したい音に対してスピーカーから逆位相の音を発することでノイズを低減するシステムがあったが、新型エルグランドに適用した新ANCは、複数の音に対応したのが新しい。「エンジンからの騒音に加えてロードノイズも低減する機能は世界初」とのことである。
回転するタイヤが路面を叩いて離れることによって発生するノイズに関しては、30Hz付近のドラミング、50Hz付近のロードノイズ、200Hz付近のタイヤ空洞共鳴音の3つを同時に低減しているという。

「ANCで低減しているのは300Hzまでです。そこまでの音を消すと他の音が聞こえやすくなるので、周波数の高い音は超高遮音ガラスで抑え込んでいます。さらに、第3世代e-POWERによって元から(エンジン起因の)振動を減らしています」
超高遮音ガラスはバックドアを除くすべてのガラスに採用している。
「ガラスに挟み込む遮音膜がドロドロしているというか、ねっとりしていて減衰力が高いので、風切り音を効果的に低減します。Aピラーの三角窓のところは形状的に難しく、歩留まりが悪い。そこをなんとか解決して採用できています。海外ではパトロールに入れており、日本向けではエルグランドが初採用。(音が反響する)トンネルを走るとANCの効果がよくわかります」



発電専用のエンジンは、定常走行時は約105km/hまで基本的に2000rpmで発電を行なう。3気筒なのでこのときの周波数は50Hz、30km/h以下では1600rpmに抑えるため、周波数は40Hzになる。キックスの発電用エンジンも3気筒だが、エルグランドのエンジンの方が同じ回転数でも過給によって大きなトルクを発生させるのでそのぶん振動は大きく、ANCで音を叩く価値があるという。
救急車のサイレンも音楽も消さず、路面に合わせて学習を重ねる
ANCで音を消すと聞くと、「救急車のピーポー音が聞こえないのでは?」と心配になる人がいるようで質問も受けるそうだが、ご心配なく。ピーポー音の「ピー」は960Hz、「ポー」は770Hzなので、ANCのカバー範囲外。筆者は音楽をかけたときに低音が影響を受けるのではと疑問を呈したが、「エンジンやタイヤの振動に起因する音だけ消しているので、車室内の会話や音楽は影響を受けません」と否定された。
心配事はまだあって、乗員の頭の位置に合わせてチューニングしているはずなので、位置がずれたら効果が減るのではと勘ぐった。これも即座に否定された。
「300Hzくらいまでだと、頭を動かしたくらいではあまり変わりません。天井には専用のマイクが7個付いており、3列目まで含めて車室内をほぼ全域カバーするような音場を作っています。頭を動かそうが、シートをリクライニングしようが効果はあまり変わりません」
ANCをオフにするメリットは思い浮かばないのだが、14.3インチ大画面のタッチディスプレイにメニューを呼び出すことでオンオフが可能。納車時はオンになっている。「オフにできるのは、販売店にお越しになったお客様にANCの機能を体感していただくため」と技術者は説明した。

停車時、暖機後のエンジンは停止しているのが基本だが、EV走行モードを選択するスイッチを長押しするとチャージモードとなり、エンジンは強制的に始動する。そのタイミングを見計らってANCをオフにすると、アイドリング音が途端に大きくなるのがはっきりわかる。
「世の中に同じ路面はないと言ってもいいくらいです。逆位相の音を出すマップをフィルターと呼んでいますが、システムをオフにすると上書きする仕組みにしており、フィルターを毎回書き換えています。走るごとにフィルターが成長していき、どんどん学習が進んでお客様に合ったANCになっていきます。スタッドレスタイヤに履き替えたら振動が変わりますが、それも学習します」
普段似たようなルートを走る場合は、走るごとにノイズキャンセリングの精度が上がっていくことになる。新型エルグランドは納車時から高い静粛性を誇るが、その静粛性の高さは走りを重ねるごとに成長していく。走れば走るほど、静かになっていくのが新型エルグランドというわけだ。

| グレード | エルグランド G e-4ORCE(4WD) | ||
| 全長 | 4995mm | ||
| 全幅 | 1895mm | ||
| 全高 | 1975mm(プロパイロット 2.0装備車は1970mm) | ||
| 室内長 | 3165mm | ||
| 室内幅 | 1730mm | ||
| 室内高 | 1315mm(ツインガラスルーフ装備車は1310mm) | ||
| 乗員人数(名) | 7 | ||
| ホイールベース | 3000mm | ||
| 最小回転半径 | 5.8m | ||
| 最低地上高 | 165mm | ||
| 車両重量 | 2440kg | ||
| パワーユニット | 1.5L直列3気筒ターボ+e-POWER(第3世代) | ||
| エンジン型式 | ZR15DDTe | ||
| エンジン最高出力 | 103kW(140PS)/5000rpm | ||
| エンジン最大トルク | 228Nm(23.2kgm)/3600rpm | ||
| 燃料(タンク容量) | レギュラーガソリン(67L) | ||
| モーター型式・種類 | フロント:YM52/リヤ:MM45(交流同期電動機) | ||
| モーター最高出力 | フロント:151kW(205PS)/リヤ:100kW(136PS) | ||
| モーター最大トルク | フロント:330Nm(33.7kgm)/リヤ:195Nm(19.9kgm) | ||
| バッテリー種類 | リチウムイオン電池 | ||
| 燃費(WLTCモード) | 16.8km/L | ||
| サスペンション | 前:ストラット式 後:マルチリンク式 | ||
| ブレーキ | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ベンチレーテッドディスク | ||
| タイヤサイズ | 235/60R18 | ||
| 価格 | 757万9000円 | ||





