1997年に誕生! 丸目と曲線で作った“かわいいレトロ”
ヤマハ・ビーノの初出は1997年。ホンダ・ジョルノが築いた“レトロ系スクーター”のムーブメントに対抗すべく開発されたのは紛れもなく、それまでのジョグ/アプリオを化粧直ししてクラシカルな装いにアレンジ。サドル風シートやヘッドライトをフロントカウルに収めたデザインは印象深く、その意匠の完成度は2025年のファイナルモデルまで大きく変更されず採用され続けたことが物語っている。
ヤマハの1997年発売資料でも、ビーノは「かわいいレトロ感覚と充実の基本機能」をテーマに開発されたモデルとして紹介されている。発売日は1997年3月8日。丸型ヘッドライト、深いフロントフェンダー、サドル風シートなどが初代の特徴だった。

女性ボーカルユニット「PUFFY(パフィー)」をイメージキャラクラ―に起用して若者にアピール! 3rdシングル「サーキットの娘」はビーノのCFソングとしても知られ、車両カタログほか、ジャケットやミュージックビデオでも彼女らが跨る姿を確認できる。

女性ユーザーを中心に、5年足らずで20万台以上を売り上げたビーノ。その後は時代の流れに沿いながら、2004年から4スト化。細かな仕様変更や派生種を増やしながら人気は衰えず、“オシャレなスクーター”の代表的な存在となっていった。
ビーノファミリーをCHECK!

2018年には久しぶりのフルモデルチェンジ。三代目となるAY02型は業務提携によってホンダで製造され、エンジンも水冷4スト49ccへ。ビーノらしいレトロポップな雰囲気は残しながら、中身は大きく変化した。
見た目はレトロ、中身は6.3ps! JOG系2ストでキビキビ走る
初代ビーノ(2スト)の販売期間は約7年。その間に排ガス規制によって排気系や一部外装が見直されている。中身は基本的にジョグ系だから走りも快調で、スペックの数値以上にパワフルさを体感できる。
ヤマハによれば「ヤングトレンドに溶け込む外観と、優れたスクーター機能のベストバランスを達成」とあり、キビキビした走行性能もあっての人気だったと思う。
初代の最高出力は6.3ps/7000rpm。かわいい顔をしているけれど、エンジンは当時のジョグ・アプリオ系をベースとした2ストだけに、街中を元気に走らせるには十分以上だった。

最高出力が6.3psだけど体感ではそれ以上! ちょっとした登坂でもスロットルを大きく捻ればビィイン!という2スト独特の音と煙を吐きながら一気に駆け上がってくれる。また駆動系やエンジンチューンに関してはJOG系のノウハウが使えるのもデカい! 個人的にはプーリー、CDI、エアフィルター程度の変更に抑えてパッケージノーマルな状態で走りたい。オシャレにも、スポーツにも振れるのが魅力だ。
実用面ではフルフェイスヘルメットも収まる約20Lのシート下スペースや、航続距離を稼げる6Lの燃料タンクなど、必要十分なユーティリティを確保している。燃費も普通に走れば25〜30km/Lはいくので、そこまで気に掛ける必要はないだろう。
当時のプロ野球で例えるなら、走攻守に加えてタレント性(ルックス)も備えた新庄剛志選手のような存在なのだ。
“5kmの大冒険”から500km超まで! かわいいだけじゃ終わらない
今回車両撮影にご協力いただいたオーナーは、ほかにもジュリオやジョルノといったレトロ系2ストスクーターを所有しており、各2台ずつ備えることでレストアやカスタム作業中でももう1台は乗れるようにしている筋金入りのスクーターフリーク。万が一のトラブル回避や、同一車種でも状態の違いがわかるようにしているのだとか。
また、あえて遠方で購入して自走で帰路につくのが趣味らしく、ビーノも九州→関東(自宅)を数日かけて走破したそうだ。「キャンプツーリングと車両コレクションをいっぺんに賄えるから楽しいですね!」と涼しい顔で話してくれた。
初代ビーノのキャッチコピーに“ウチから5kmの大冒険”とあるが、人によっては“ウチから500km超の大冒険”にもなりうることを証明してくれた。

使いやすいよう、好みに合わせてカスタムされているオーナー車。

頑丈なリヤキャリアを活用して木製プレートが大活躍!
2ストスクーターの魅力にドハマして買い漁る日々だというオーナー。最近はスズキZZとストマジ110をゲットしてテンションMAX! 「いろんな原付を乗り継ぎましたがビーノは作りが良く、大のお気に入りです。頑丈です!」

長距離ツーリングの際は、リヤキャリアの上に木板を取り付け、折り畳みコンテナの底からダイレクトにビス打ち。設置したまま箱を折り畳めるうえ、しっかりと固定できるそう。「市販のトップケース&アタッチメントよりリーズナブルですよ」とご満悦♪
ビーノらしい装備の数々


カジュアルなバーハンドル仕様だから入れ替えもしやすい。メーターは丸型の速度計を中央に配し、ステム左側には燃料計を備えている。オーナーはバックライトの電球を変えて夜間もくっきり。

車体右側のシート横にあるカバーを開けると2スト用エンジンオイルの注入口が現れる。オイル容量は約1.3Lと比較的多めだ。


シート下は凸凹が少なく、ヘルメットやグローブなどの小物類が入る十分なサイズ(20L)。後方には給油口が配置されている。

シートをアンコ増し+グリップ力の高い表皮に張り替えて長距離走行に対応。灯火類はクリアレンズでスマートに演出しているオーナー車。

樽型グリップに変更してクラシカルな雰囲気を醸す。メッキミラーやハンドルも相まってエレガントな雰囲気だ。

社外製リヤショックに入れ替えて強化済み。取り付け長が約235mmと短めだが、汎用品も含めてアフターパーツは十分に揃うそうだ。
丸いボディにサドル風シート、独立した丸型メーター。そしてスロットルを捻れば、2ストらしく元気に走る。見た目だけなら“かわいいレトロスクーター”。でも実際には、街乗りの使い勝手も走りも十分で、カスタムする楽しさまで持っていた。だからこそビーノという名前とスタイルは、エンジンが4ストになり、さらに電動モデルが登場しても受け継がれてきたのだろう。まさに、時代を超えて愛される1台なのである。
YAMAHA Vino 主要諸元
型式:A-5AU
全長×全幅×全高:1620×630×1005mm
ホイールベース:1150mm
最低地上高:80mm
シート高:715mm
車両重量:70kg
総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒クランクケースリードバルブ
内径×行程:40×39.2mm
圧縮比:7.3:1
最高出力:6.3ps/7000rpm
最大トルク:0.67kgf・m/6500rpm
燃料タンク容量:6L
タイヤサイズ:前後80/90-10
ブレーキ:前後ドラム
車体価格:16万9000円
※スペック、価格は1997年当時。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】


