スバルが2026年9月17日に発表したインプレッサとクロストレックの改良モデルで、両車の商品構成が大きく変わった。インプレッサは2.0L ガソリンエンジン車に一本化された一方、クロストレックは2.5L ストロングハイブリッド“S:HEV”専用モデルとなった。

スバル クロストレック

両車は基本プラットフォームを共有する兄弟車だが、今回の改良によってパワートレインの選択肢が完全に分かれた。さらに注目したいのが価格差だ。

インプレッサの“Smart Edition”はFWDが286万5500円、AWDが313万5000円。一方、クロストレックの最廉価グレード“Premium S:HEV”は383万3500円となる。

スバル インプレッサ

最も安いグレード同士を比較すると、その差は96万8000円。ほぼ100万円という大きな開きがある。ただし、クロストレックはAWD専用のため、インプレッサもAWDに条件をそろえると、価格差は69万8500円まで縮まる。それでも約70万円の違いがあるわけだ。

では、なぜスバルは基本構造を共有する2台を、ここまで異なる商品構成にしたのだろうか。

これまでインプレッサとクロストレックには、2.0L 水平対向4気筒エンジンに小型モーターを組み合わせたマイルドハイブリッド“e-BOXER”が設定されていた。

しかし、2026年9月の改良で、国内向け両車の新仕様から従来型e-BOXERが姿を消した。インプレッサにはガソリンエンジンのみを残し、クロストレックはS:HEVに統一。電動化への対応をクロストレックに集約する形となった。

クロストレックのS:HEVは、従来のe-BOXERとは仕組みが大きく異なる。

2.5L 水平対向4気筒エンジンと、駆動用・発電用の2基のモーターを組み合わせたシリーズ・パラレル方式を採用。トヨタのハイブリッド技術を活用しながら、前後輪をプロペラシャフトで結ぶスバル独自のシンメトリカルAWDを維持している。

モーターだけで走行できる領域を拡大し、燃費性能と加速性能を両立させている点が特徴だ。

さらに今回の改良では、エンジン制御の最適化などによって燃費性能も改善された。WLTCモード燃費は従来の18.9km/Lから19.5km/Lへ向上。数値上の改善幅は0.6km/Lだが、ストロングハイブリッドの効率をさらに高めている。

装備面では、上級グレードの“Premium S:HEV EX”にハーマンカードンサウンドシステムを新たにメーカーオプション設定。“Premium S:HEV”でもナビゲーション機能を選択できるようになった。

また、ルーフレールのカラーをダークグレーからブラックへ変更し、リヤのe-BOXERオーナメントも新デザインを採用。ボディカラーには“イグニッションレッド”が追加されている。 

これほど進化したS:HEVを、なぜインプレッサにも搭載しなかったのか。

その理由を考えるうえで、無視できないのが車両価格だ。

仮にインプレッサにも2.5L S:HEVを搭載するとすれば、現在の286万5500円という入口価格を維持することは難しくなるものと考えられる。

インプレッサは、スバルの水平対向エンジンを搭載する5ドアハッチバックとして、比較的購入しやすい価格帯を担っている。今回の改良ではグレードを“Smart Edition”に集約し、ガソリンエンジンとFWD、AWDを組み合わせるシンプルな構成となった。

一方、クロストレックはS:HEVとAWDを標準とすることで、燃費性能だけでなく、SUVとしての走破性や走行性能も重視したモデルへと位置付けられている。

実は、今回の改良以前は両車の価格帯がかなり近かった。

従来型クロストレックの“Touring”e-BOXER・FWDは301万4000円。現在のインプレッサ“Smart Edition”・FWDとの差は14万8500円にすぎない。

もちろん、改良前後のモデルを比較しているため、装備や仕様の違いには注意が必要だ。それでも、以前は300万円前後で両車を選べたことを考えると、今回のラインアップ変更によって価格面での距離が大きく広がったことが分かる。

クロストレックから安価な2.0L e-BOXERがなくなったことで、SUVを求めるユーザーは383万円以上のS:HEVを選ぶことになる。一方、インプレッサは300万円を下回るFWDモデルを残し、価格面での購入しやすさを維持した。

ただし、両車の価格差がすべてハイブリッドシステムによるものではない点には注意したい。

クロストレックにはSUVとしての最低地上高や足まわり、専用の内外装装備が与えられており、インプレッサとは車両の性格そのものが異なる。AWD同士で比較した約70万円の差にも、パワートレイン以外の装備や仕様の違いが含まれている。

また、スバルが今回のラインアップ変更について、両車の競合を避けるためと公式に説明しているわけではない。

それでも、ガソリン車を残したインプレッサと、ストロングハイブリッド専用となったクロストレックでは、購入を検討するユーザーの予算や求める性能が以前より明確に分かれることになる。

インプレッサにS:HEVを追加し、クロストレックに安価なe-BOXERを残すという選択肢もあったはずだ。しかし、スバルが今回選んだのは、両車のパワートレインを整理する方向だった。

約100万円という最廉価グレード同士の価格差は、ガソリンエンジンを選べるインプレッサと、電動化を進めるクロストレックの現在の商品構成を象徴する数字となっている。