EVらしくない“普通”こそがe SKYの真価

e SKYのボディ形状はサクラと同じ5ドアハッチバックスタイルであるものの、外観はEVらしい先進性や高級感とは程遠い。車内はインフォテインメントディスプレイと一体化したメーターと、静電タッチ式のエアコンパネルが目を引く程度で、その他の点はガソリン車と大きく変わることはない。

もちろんシフト操作はシフト・バイ・ワイヤだが、サクラが電制シフトらしい形状をしているのに対し、e SKYは安価なクルマでよく見られるストレート形状のゲート式シフトだ。サクラの豪華なインテリアデザインと比べると、e SKYの内装はどうしてもチープに見えてしまう。

ボディの全高はe SKYの方が30mm低く、後席空間は膝まわり/頭上ともにサクラの方が一回り広い。また、サクラの後席には左右座面一体式のスライド機構が備わるうえ、左右独立のリクライニング機構も備わるのに対し、e SKYの後席は背もたれも座面も固定だ。

どちらも後席を格納すると段差ができるのは共通であり、荷室空間の広さにも大きな差はないが、後席がスライドできるサクラは荷室空間と後席乗員のスペースを調整できる美点がある。

e SKYの車内は、おおよそアルトとワゴンRの中間的な使い勝手と言ってよいだろう。車内の快適性と利便性においてはサクラの方が高く、とりわけインテリアの高級感では比較にならない。

しかしそれは”Easy to Switch”をコンセプトとして、“ガソリン車から違和感なく乗り換えられること”を念頭において作られたe SKYの意図するところだ。

e SKYの主目的は、あくまでクルマの総合的な使い勝手から価格までを含めてガソリン車との違いを小さくすることであり、サクラとは成り立ちが大きく異なる。

なお、両車の最小回転半径はサクラが小型車並の4.8mであるのに対して、e SKYは一般的な軽自動車と同等の4.4mだ。

スズキ e SKY G
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1625mm
ホイールベース=2460mm
車両重量=1020kg
タイヤサイズ=165/65R14(前後)

日産 サクラ X
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mm
ホイールベース=2495mm
車両重量=1070kg
タイヤサイズ=165/55R15(前後)

航続距離はサクラの約1.7倍! 急速充電時間は半分近い

e SKYのパワートレインは、軽EV用にスズキが自社開発・自社生産する油冷式モーターユニットだ。多くのEVが水冷式を採用するなか、サイズアップを避けるためにわざわざ油冷式を選択したことから、スズキの軽EVに対する強いこだわりが窺える。

どちらも前輪駆動のみの設定であり、最高出力は64psでサクラと同じだが、最大トルクはサクラの195Nmに対してe SKYは133Nmとやや小さい。ただし、133Nmという数値は660ccターボエンジンの最大トルクを大きく上回っており、日常域で加速性能に不足を感じる場面は少ないはずだ。

サクラが登場した当時は、EVらしい鋭い加速感を演出する必要性もあっただろう。しかし、新たに登場したe SKYは世代的な技術格差に加え、効率と実用性を重視した設計によって電費性能と航続距離を飛躍的に伸ばした。

WLTCモード電力消費率はサクラの124Wh/kmに対して、e SKYは軽EVクラストップとなる97Wh/kmだ。それによりWLTCモード一充電走行距離は、サクラがバッテリー容量20kWhで180kmとなるのに対し、e SKYは26kWhで310kmとサクラの1.7倍強にもおよぶ。

その基幹となるe SKYの駆動用バッテリーは、高い安全性と長寿命で知られるリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)だ。保護ケースに収めたバッテリーを車体下部にボルト止めする構造は、耐衝撃性に優れたLFPだからこそ成立する合理的な設計と言えるだろう。

充電性能にもサクラとは世代格差が感じられる。バッテリー残量警告灯から満充電までの時間は、3kW普通充電でのサクラと同じ約8時間、6kWではe SKYが約4.5時間、サクラが約4時間となる。

所要時間で大差はないが、バッテリー容量はe SKYの方が30%ほど大きいのにもかかわらず、サクラとほぼ同等の充電時間に抑えられている点は評価すべきポイントだ。

さらに急速充電は、最大受入電力30kWのサクラが80%まで充電するのに約40分を要するのに対して、50kWの急速充電に対応するe SKYは約25分で済む。

ただし、e SKYの最廉価グレード“A”(212万円)は急速充電に非対応である点に注意したい。

スズキ e SKY G
駆動用バッテリーの種類=リチウムイオン電池
定格出力=43.2kW
最高出力=64ps/-rpm
最大トルク=133Nm/-rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

日産 サクラ X
駆動用バッテリーの種類=リチウムイオン電池
定格出力=20kW
最高出力=64ps/2302-10455rpm
最大トルク=195Nm/0-2302rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

e SKYの実用性は間違いなし! サクラもまだまだ魅力は高し

両車の販売主力となる中間グレード“e SKY G”は239万円、“サクラ X”は259万9300円だ。CEV補助金はe SKYが56万8000円、サクラが58万円であり、差し引き後の金額は“e SKY X”が182万2000円、“サクラ X”が201万9300円となる。

“e SKY X”の補助金適用後の182万2000円は、スズキ ワゴンRの最上級グレードよりも10万円ほど高い程度の値段だ。

e SKYは価格が安くとも、装備ではサクラに見劣りしない。アダプティブクルーズコントロール(ACC)が備わらない中間グレードの“G”であっても、サクラの“X”と同じくシートヒーターとステアリングヒーターが備わり、プラス20万円でスズキコネクトに対応した“全方位モニター付きディスプレイオーディオ”も追加可能だ。

ナビに関してはサクラも最上級グレード以外はオプションとなっており、ACCに関してもサクラの中間グレードはオプションとなるため、装備の充実度合いは同等となる。

暖房機能は両車ともにヒートポンプシステムと電熱ヒーターの併用であり、冬場の電費悪化も小さいうえ、車内もすぐに温まる。どちらもワンペダルドライブ機能が備わっており、バッテリー保証は両車とも8年または16万kmだ。

サクラは軽EVを定着させ、基準を打ち立てたパイオニア的存在と言ってよいだろう。高い加速性能と軽自動車らしからぬ内装の仕立てによるEVらしさではサクラが圧倒的に勝る。

少し前なら、こうしたEVらしい目新しさに注目が集まった。しかし、すでにそうした時期は過ぎており、軽EV普及第二フェーズとも言える現在はガソリン車ユーザーに対するアプローチが課題となる。

使い勝手を優先とし、価格も抑えられた最新のe SKYは、EVに対するユーザーの向き合い方を変える可能性を秘めた実践的な軽EVと言えるだろう。

実際問題としてガソリン車の完全代替とするのは難しいが、価格と航続距離を重視する人はe SKYを選んでおけば間違いないだろう。e SKYの発売日は2026年11月16日であり、先行受注はすでに始まっている。

内装の上質感や後席の広さを重視したいならサクラを選ぶとよいだろう。短めの航続可能距離はサクラの大きなウィークポイントではあるものの、1日あたりの走行距離が十数km程度に留まる使い方なら実用上の差はほとんどないはずだ。

車両本体価格

スズキ e SKY G:239万円

日産 サクラ X:259万9300円