最廉価グレード212万円は、軽自動車の予算感に合致する

スズキ e SKY各グレードの特徴とメーカー希望小売価格から整理してみよう。
- 「A」グレード:212万円(受注生産) リアドアの窓が固定式になるなど装備を厳選してコストを抑えた仕様。ボディカラーも2色しか設定されない。
- 「G」グレード:239万円 上級グレードとの違いは、アルミホイールと全方位モニター付きディスプレイオーディオが標準装備されないこと。ディスプレイオーディオは20万円のメーカーオプションで装着可能。2トーンルーフ仕様も選べる。
- 「X」グレード:279万円 アダプティブクルーズコントロールや10.1インチ画面のディスプレイオーディオをはじめ装備全部盛りの最上級グレード。ワンペダルドライブを可能とする「イージードライブペダル」が備わるのも、このグレードだけ。


このようにボディカラーの選択肢やホイールの仕様など装備面ではグレード間で差別化されているが、BEVとしての基本機能は全車共通だ。
総電力量26.0kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを床下に納め、電費消費率97Wh/km(約10.3km/kWh)という軽BEVトップクラスの省電力性能もあって、一充電走行距離は310km(WLTCモード)となっている。これだけの航続性能があれば、リアルワールドでも満充電から200km以上を安心して走行できるであろう。ガソリンの軽自動車から違和感なく乗り換えられる、というコンセプト通りの性能を実現したといえそうだ。
とはいえ、冒頭で紹介したようにe SKYの価格帯は212万円~279万円。最廉価グレードであれば、軽自動車の予算感で手が届きそうにも思えるが、軽自動車ユーザーが気軽に乗り換えるには、価格面でのハードルが高いのは事実である。

補助金に左右されるビジネスモデルからの脱却

ご存じのように、CEV補助金の金額算定はブラックボックス的で、同じようなモデルであってもブランドやボディ規格によって提示される金額に大きな差が出る。たとえば軽自動車の幅をわずかに広げて普通車登録(ワイドボディ)にすると補助金が倍以上になる…というのはユーザーにとってありがたい半面、自動車産業全体として見れば決して健全な状況とはいえない。
そうした「補助金に右往左往させられるビジネス」から脱却すべきというのは、各社共通の課題だろう。その中で、212万円~というe SKYの価格設定は、いちはやく次の本格普及フェーズを見据えているといえそうだ。
ここからは筆者が勝手に想像するシナリオだが、2027年度は自動車業界にとって各種の補助金が剥がされる「脱・補助金」の節目になるかもしれない。食料品の消費税率引き下げに伴う施策により年間5兆円規模の巨額な財源が必要になるといわれているのは周知の通りだ。
その穴埋めを単に赤字国債の発行でまかなえば、財政不安からさらなる円安が進み、せっかく消費税を下げても国民の負担としてはインフレ負けしてしまう。そうなると、国としてバラマキ的な補助金類の削減・整理に着手せざるを得ない。
たとえば、レギュラーガソリンを170円/L前後に抑えるためのガソリン補助金は年間2兆円を超えるとされる。食料品減税の財源確保と引き換えに、ガソリン補助金を絞り込んでいく動きは現実味を帯びてくる。当然、電気自動車や燃料電池車へのCEV補助金も縮小される可能性は十分にある。
本来は、補助金を剥がしたガソリン価格(レギュラーで220円/L程度だろうか)と、同じく補助金がない素の状態のBEVにおいて、車両価格とランニングコストを天秤にかけ、ユーザーがガソリン車・ハイブリッド車かBEVかを選択する状況こそが正常な姿である。
e SKYの発表会で鈴木社長が指摘した通り、「補助金によってクルマの価値や市場が歪んでいる」状況は長続きしないと思う。
エンジン車と混流生産。月販目標1000台

なお、e SKYの月販目標は1000台と発表された。テレビCMで描かれているような農村部・地方都市をはじめ、戸建て住宅が多く、ガソリンスタンドの撤退が進む地域において、「212万円で買えて、小さなバッテリーで長距離を走れる軽BEV」は救世主となるポテンシャルを秘めている。
社会情勢の変化に伴い、ガソリン価格の上昇や補助金縮小が進めば進むほど、実用本位な軽BEVという選択肢は一気に存在感を増すはずだ。e SKYには月販1000台という目標にとどまらない大ヒットとなる可能性を感じる。
ちなみに、e SKYはスズキの湖西工場でスペーシアやハスラーと混流生産される。バッテリー等の部品調達という課題はあるものの、生産ライン自体には需要に応じて柔軟に増産できるキャパシティがあるという。
「軽自動車を極めていきたい」という鈴木社長の言葉通り、補助金という下駄を脱いでも選ばれる一台として、e SKYが市場に大きな一石を投じること未来が見えてくる。

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