R63 AMG 4MATIC
新カテゴリーとして

クライスラーと合併し、これまで以上にモデルラインナップの拡大を図るメルセデス・ベンツは、2005年のニューヨーク・ショーで「Aクラス」「Bクラス」の兄貴分というべきMPVの「Rクラス」を発表する。
これは2002年からコーチビルダーのStolaと共同開発してきたコンセプトカー「ヴィジョンGST」「ヴィジョンR」の流れを汲むもので、スポーティサルーン、ワゴン、SUVなどを融合した、スポーツツアラーという新しいカテゴリーを創造するものだとアナウンスされていた。
そのプラットフォームはW164型「Mクラス」、X164型「GLクラス」と同じもので、ホイールベースはスタンダードの2980mmとロングの3215mmを用意。生産もMクラス、GLクラスと同様、アメリカ・アラバマ工場(2015年から2017年まではインディアナ工場が担当)で行われている。
歴代AMGの中でレア中のレアモデル

フロントに搭載するエンジンは3.0リッターV6 DOHC、3.5リッターV6 DOHCのほか、5.0リッターV8 SOHCを用意。駆動方式はAWDで、トランスミッションは7Gトロニック(7速AT)を採用していた。一方のサスペンションは専用設計のフロントにダブルウイッシュボーン、リヤに4リンク式。また5.0リッターの「R500」は、前後のダンパーを積載量、路面状態、ドライビングスタイルに合わせて調整するADS(アダプティブ・ダンピング・システム)とエアサスペンションを統合したエアマティックサスペンションを標準装備している。
スタンダードで4922mm、ロングで5156mmの全長を持つボディにはアレンジ可能な3列6人乗りシートを採用。通常で305L、最大1931Lのラゲッジスペースなど高いユーティリティを備えているのも特徴である。
特に北米市場で好評を博したRクラスは2007年モデルでマイナーチェンジを実施。ヨーロッパ市場の声に応える形で3.0リッターV6ディーゼルのほか、後輪駆動モデルも用意されるようになった。それと同時にモデルラインナップに加わったのが、歴代メルセデスAMGの中でもレア中のレアモデルというべき、ハイパフォーマンスバージョンの「R63 AMG 4マティック」である。
わずか1年で姿を消すも

最大の特徴はAMG設計の6.2リッターV8DOHC M156E63エンジンを搭載していることで、最高出力510PS、最大トルク630Nmを発生。トランスミッションはパドルシフト付きのAMGスピードシフト7Gトロニック。AWDは前後トルク配分を40:60に固定した専用の4マティックとされ、2.3tの車重ながらAMGドライバーズパッケージ装着車は最高速度275km/h、0-100km加速4.6秒と侮れないパフォーマンスを誇った。
それを支えるためにブレーキには390mm径のベンチレーテッドディスクが奢られ、専用のAMGホイールを履くタイヤもフロント265/45R20、リヤ265/45R20サイズへとアップデートされている。
あわせて標準装備のエアマティックサスペンションも専用のセッティングが施されていたが、ありあまるパワーと重すぎる車重に対するバランスは悪く、お世辞にもハンドリングは良好とはいえなかった。またベース車の倍近い1400万円(日本市場)という価格は市場には受け入れられず、わずか200台程度の販売にとどまり、わずか1年で姿を消すこととなった。
世界的コレクターズアイテムに

残念ながらRクラス自体も商業的な成功を収められなかったため、ハイパフォーマンスミニバンというべきR63 AMG 4マティックの後継モデルは現れなかったが、今では逆にその希少性(日本には数台が輸入されたのみといわれている)が注目され、世界的にコレクターズアイテムとして再評価を受けている。

