新開発の電動AWDと次世代ハイブリッドが、高級クロスオーバーの新たな武器に
ホンダが、主力セダン「アコード」の名を冠した新型クロスオーバーSUVの投入を検討しているという情報が浮上した。実現すれば、スバル「アウトバック」やトヨタ「クラウン シグニア」と競合する、新たなハイブリッドモデルが誕生することになる。

入手した情報によると、開発構想段階では「Accord SUV(アコードSUV)」と呼ばれており、早ければ2029年半ばにも生産が開始される可能性があるという。次世代アコードとの基本構造の共用も想定されており、セダンの快適性とSUVの実用性を融合させたモデルになるとみられる。

注目したいのは、ホンダがこれまで手薄だったクロスオーバーワゴン市場への参入を検討している点だ。
北米では長年、スバルのアウトバックがこのカテゴリーを代表する存在だった。ステーションワゴンの使い勝手に高い最低地上高とAWDを組み合わせ、一般的なSUVとは異なる魅力を打ち出してきた。しかし、アウトバックは世代を重ねるごとにSUVとしての性格を強め、最新モデルでは従来のワゴンらしい低く伸びやかなスタイリングから、よりスクエアなSUVデザインへと移行している。
こうした変化によって、従来型アウトバックのようなクロスオーバーワゴンを好むユーザーに、新たな選択肢を提示できる余地が生まれている。アコードSUVは、まさにその需要を狙うモデルになる可能性がある。

想定されるのは、アコードの持つ上質な乗り心地や長距離移動時の快適性を維持しながら、最低地上高を拡大し、大径タイヤや大型リアゲートを組み合わせたスタイルだ。一般的なSUVほど全高を高くせず、ステーションワゴンに近いルーフラインを採用すれば、スポーティな外観と積載性を両立できる。
また、北米ではトヨタの『クラウン シグニア』も競合候補となる。日本で販売される『クラウン エステート』に相当するモデルで、乗用車に近い快適性とSUVの実用性を兼ね備えている。アコードSUVが市販化されれば、アウトバックとクラウン シグニアの間に割って入る、新たな選択肢となりそうだ。
一方、パワートレーンについては、ホンダが開発を進める次世代ハイブリッドシステムの採用が有力候補となる。ホンダは2026年10月9日、次世代ハイブリッドシステムの正式名称を「Honda Hybrid」に決定したと発表した。現行の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」で培った技術を進化させたもので、2027年からグローバル市場へ順次投入する計画だ。
新システムでは、エンジンの高効率運転領域を拡大するとともに、ドライブユニットの小型化と高効率化を推進。燃費性能を向上させながら、ホンダらしい走行性能の実現を目指している。
さらに、新開発プラットフォームと電動AWDシステムの組み合わせも大きな特徴となる。ホンダは次世代ハイブリッド車について、新開発プラットフォームと電動AWDなどの採用により、燃費性能を10%以上改善する目標を掲げている。アコードSUVにもこの技術が採用されれば、舗装路での快適性だけでなく、雪道や滑りやすい路面での安定性も高められるだろう。アウトバックのようなAWDを重視するモデルと競合する以上、電動AWDの設定は商品力を左右する重要な要素となりそうだ。
ただし、アコードSUVのエンジン排気量やシステム最高出力、駆動方式については、現時点で具体的な情報は明らかになっていない。ホンダは2029年度までに、北米を中心とした世界市場へHonda Hybrid搭載モデルを15車種投入する計画を発表している。さらに、2029年には北米市場でDセグメント以上の大型ハイブリッドモデルを投入する方針も示した。
アコードSUVの生産開始が2029年半ばになるという情報は、こうしたホンダの次世代ハイブリッド戦略と時期的に重なる。
もっとも、ホンダが公表した大型ハイブリッド車の計画に、アコードSUVが含まれると確認されたわけではない。生産拠点として候補に挙がっているのは、米オハイオ州のメアリーズビル工場だ。同工場はアコードの生産拠点として知られ、次世代セダンとSUV派生モデルでプラットフォームや部品を共用できれば、開発・生産コストの抑制にもつながる。ホンダは北米の生産体制について、ハイブリッド車への対応を拡大する方針を明らかにしており、アコードSUVのような新型ハイブリッド車を投入する環境は整いつつある。
実は、アコードをベースとしたクロスオーバーという発想は、今回が初めてではない。ホンダは2009年、北米で2010年モデルの「アコード クロスツアー」を投入した。セダンをベースに、傾斜したリアゲートと高めの車高を組み合わせた独特のクロスオーバーで、その後は車名を「クロスツアー」へ変更。しかし、販売面では十分な支持を獲得できず、2015年に生産を終了している。
当時はセダンとSUVの中間に位置するモデルの市場が現在ほど成熟しておらず、独特のスタイリングも評価が分かれた。だが、それから10年以上が経過し、クロスオーバーSUVは世界的な主力カテゴリーへと成長した。今回浮上したアコードSUV構想は、かつてのクロスツアーを現在の市場環境に合わせて再解釈する試みともいえる。
アコードは1976年の初代登場から2026年で50周年を迎えた、ホンダを代表するモデルのひとつだ。日本では現行11代目が販売されており、2.0Lエンジンと2モーター式e:HEVを組み合わせたハイブリッドセダンとして展開されている。そのアコードが次世代モデルでSUVへと領域を広げれば、長年続いてきた車名に新たな役割が加わることになる。
現段階ではアコードSUVの市販化は決定しておらず、ホンダも投入計画を公式には認めていない。それでも、次世代Honda Hybridの投入、北米での大型ハイブリッド車拡充、アウトバックのSUV化という市場環境を考えれば、アコードのクロスオーバー展開には一定の合理性がある。
2029年に向けて浮上した新たなアコードSUV構想が、かつてのクロスツアーの再来となるのか。今後の開発動向が注目される。


