“スロットルボディ”は吸気系システム「フューエルインジェクション」の一部

ガソリンと空気を混ぜ合わせ、混合気を作り出すスロットルボディを用いたフューエルインジェクションシステム(以下、インジェクション)。“吸気系”とも呼ばれるこの機構が導入される前は「キャブレター(気化器)」が使用されていた。

しかし排気ガス規制の強化や性能アップなど時代の流れとともに、バイクにもシンプルなキャブレターから、自動車では当たり前となっていたフューエルインジェクションが導入されるようになった。

「フューエルインジェクション」のしくみ(イメージ)

水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ398ccエンジンを搭載したスズキDR-Z4S(SM)の電子制御スロットルボディ。バタフライバルブ(スロットルバルブ)を動作・開閉するための電動モーターを持たないコストパフォーマンスに優れたシンプルなワイヤー操作式タイプ。

バイク用インジェクションは一般的に、

①負圧を計測する「負圧センサー」
②スロットルボディに設置されたスロットルバルブの開度を計測する「スロットル開度センサー」
③吸い込む空気の温度を計測する「吸気温度センサー」
④エンジンオイルの温度を計測する「油温センサー」
⑤エンジンの回転数を計測する「エンジン回転センサー」

①~⑤のセンサーでECU(エンジンコントロールユニット/いわゆるコンピューター)がデータを採取し、理想的な混合比(理想空燃比と呼ぶ/約14.7(空気):1(燃料)が完全燃焼する割合と言われる)を算出し、スロットルボディに混合気の製造を指令。

またマフラーのエキパイ部に設置された⑥O2センサーで、排気ガスの酸素濃度を計測。もしも酸素濃度が規定値外の場合、ECUがスロットルボディに「規定値内に収まる混合気の製造」を伝達するしくみ。 ※注:車種により異なる

空気を吸入し、混合気を作る「スロットルボディ」には一般的に、①負圧センサー ②スロットル開度センサー ③吸気温度センサーの3つが設置されている。

かつて採用されていたキャブレターは気温・気圧・チューニング度合いに合わせ、工具を使って分解し、メインジェット等を交換し、再び組み付けて実走する……これを繰り返す。知識と経験と培った感が必要とされる、“アナログ的”なシステムといえる。

一方、フューエルインジェクションは、一般的にパソコンを使ってECUにアクセスし、セッティング変更やマップの書き換えが行える、手が汚れない“デジタル的”なシステム。

ハイエンドユーザーの中には、「コンピューター制御のフューエルインジェクションよりも、ダイレクトなスロットル感覚のキャブレターが好き」という理由から、フューエルインジェクション車をキャブレター仕様に変更する猛者も存在する。

88ccにボアアップした12Vモンキー50に「ケイヒンPE24キャブレター」を装着。吸気孔側には吸気効率と実用性を両立したエアフィルターを導入。
キャブレターはピストンの下降による「負圧」により空気を吸入。スロットルに直結したジェットニードル(真ん中の針)が上下することでガソリンを取り込み、混合気を製造するしくみ。

カワサキ Z900用 電子制御スロットルボディ

水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ948ccエンジンを搭載したカワサキ Z900に純正パーツとして採用されている電子制御スロットルボディ。

スロットルボディの中央部にはECUからの指示により、バタフライバルブ(スロットルバルブ/金色の部分)を動作・開閉するための電動モーターを内蔵。

4気筒分の大口径なバタフライバルブ(スロットルバルブ)を動かすため、他車用に比べ、電動モーターは大型タイプを採用。

ミクニによれば、電動モーター操作式はワイヤー操作式よりも、適格な空燃比性能を発揮しやすいのが特徴(とはいえ、両者の走行フィールの違いは素人には判断できないレベル)。そのため性能を追求したレーシーな超高性能モデルには、高額だがハイパフォーマンスな電動モーター操作式を採用する傾向にある。

カワサキ Z900

カワサキ TERYX4 H2用 電子制御スロットルボディ

水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ999ccスーパーチャージドエンジン搭載のオフロード四輪マシン「TERYX4 H2」に採用の電子制御スロットルボディ。

本体右上にはECUからの指示により、4気筒分のバタフライバルブ(スロットルバルブ)を動作・開閉するための電動モーターを内蔵。

カワサキ TERYX4 H2

スズキ DR-Z4S(SM)用 電子制御スロットルボディ

スズキのモタードモデル・DR-Z4S(SM)は水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ398ccエンジンを搭載。写真は同車に純正採用されている電子制御スロットルボディ。

同車に採用の電子制御スロットルボディは、バタフライバルブ(スロットルバルブ)を動作・開閉するための電動モーターを持たない、コストパフォーマンスに優れたシンプルなワイヤー操作式タイプ。

ジャパンモビリティショー2025のスズキブースに展示されたDR-Z4S(SM)。写真はアクセサリー装着車。

水冷4スト90度V型2気筒用 電子制御スロットルボディ

イタリアの水冷4ストローク90度V型2気筒DOHC 4バルブ890ccエンジン搭載車用に開発された電子制御スロットルボディ。

バタフライバルブ(スロットルバルブ)を動作・開閉するための電動モーターを1気筒側(写真左側)に導入。反対側の1気筒は、右側に設置された専用アームで連動・動作させるしくみ。

空冷4スト単気筒125cc用ECU(エンジンコントロールユニット)

各種センサーの情報を集約し、スロットルボディに理想的な混合気の製造を指示するECU(エンジンコントロールユニット)。

このEUCはカードエッヂコネクタを採用してコンパクト化を実現。マップ変更など、様々なオプション機能に対応可能。全34ピン中、11ピンはオプションに適応OK。ECU内部に転倒センサーを内蔵。

欧州の大型二輪用 可変バルブタイミング

最適なバルブタイミングに可変する、究極の小型化による世界最小&最軽量のアイテム。エンジン出力やトルクの向上、燃費や排ガス性能の向上を実現。

アルミの精密加工技術をベースに、強度とサイズの限界設計を達成。高振動対応OCV(世界オンリー1)。またハーネスコネクタを採用することで、バイク用エンジン特有の高振動環境に対応。

●仕様(VVT)
・動作油温範囲:-30~-150℃
・サイズ(外径×高さ):φ58×24.5mm
※カムシャフト端面~VVT最外部
・理論トルク:3.2Nm@200kPa
・重量:170g(スプロケットは除く)

●仕様(OCV)
・動作油温範囲:-30~-130℃
・性能:@90kPa
 遅角(0.1A)最大流量:3.9L/min
 進角(1.0A)最大流量:4.2L/min