17インチ&6速MT!すべてはラッシュアワーを最速で駆け抜けるために

カワサキ「レオスター」は、東南アジア市場向けにカワサキが販売していたバイクで、アンダーボーン形状のスチール鋼管フレームに、空冷2ストクランクケースリードバルブエンジンを搭載。6速リターン式ミッションでタイヤは前後17インチ。スーパーカブのレッグシールドを外してスポーティにしたようないわゆるアンダーボーンスタイルだ。

日本での正規販売はなく、並行輸入車のみ。マフラーで有名な月木レーシングが、カワサキのタイ製2ストロークバイク「レオスター」の先代モデルにあたる「レオSE」に自社製チャンバーを装着し販売していたのを記憶している人もいるかもしれない。筆者は「レオスター」を2003年頃、BMWのツアラー、K100RSのセカンドバイクとして走行距離9000kmほどの中古車を15万円で手に入れた。

2000年頃頃の日本では、排ガス規制の強化により、国内メーカーの2ストロークモデル(NSR250R、TZR250Rなど)が次々と生産終了に追い込まれ、2スト車への渇望が高まっていたタイミング。
一方で、タイをはじめとする東南アジア市場では、まだ2ストローク車が元気に走っており、しかも排気量や装備が日本の2ストファンを刺激したのだろう。

当時のライバルは、同じく東南アジア市場向けのホンダ・NOVADASHとヤマハ・TIARA S(こちらも国内正規モデルはなく、並行輸入車として流通)。どれも似たり寄ったりなフォルムとエンジン形式を持ち、東南アジア圏で鍛え抜かれたスポーツモデルだからパワーも十分。見た目さえ気に入ればTZR125より安く買えた。

しかし、これがかなりのクセ強マシンだった。まず驚いたのがすべてにおいて「細い」こと。タイヤはフロント70/90-17・リヤ80/90-17サイズのチューブタイプで、履けるタイヤも限られた。さらに言うと、シートは硬めでこれまた異様に細いという、今まで経験したことのない座り心地。まるで『角材』に乗っているようで、股の間に燃料タンクが無いからさらに心もとない感じだった。車幅も630mmと自転車並みで、セパレートハンドルに付くバックミラーは極限まで左右幅を切り詰めているから、身体をひねらないと後ろが見えない。後に分かったことだが、現地ではこれが正解だったのだ。

2003年頃登場(国内)

カワサキ

レオスター

SPECIFICATIONS
■サイズ:1935×640×965mm
■シート高:755mm
■エンジン:空冷2スト単気筒(118.6㏄)
■ミッション:6速リターン
■重量:97㎏ ■当時価格:-

※スペックはタイカワサキのもの

なんでこんな車体構成?ベトナム人に尋ねてみると……

筆者がこの「レオスター」を手に入れた数年後、ベトナム旅行に行った折、ホテルで待機していたバイクタクシーに付いているバックミラーが、「絶対後ろ見えないでょ!」という角度で付いていた。そのため、後方確認はどうしているのか?とたずねてみたところ、とにかく「前しか見ない」との事だった。「急ブレーキはしない。急ハンドルもしない。流れに沿って進路変更」がポイントだそう。

つまりラッシュアワー時の駅構内のように、流れに逆らわずに歩いているイメージで、それならば後ろを確認することも、ウインカーを出す必要もないというわけだ。よっぽど危険な進路変更に出会ったときはクラクションを鳴らして、自分がいることを警告するという。

ではなにが重要かというと、大量のバイクや車の隙間をどんどんすり抜ける能力に特化する必要があって、細いのが正義……となるのだろう。

スリムな車体はもう一つメリットがあって、街中で停めるのに都合が良い。店先の歩道、車道問わずに詰め詰めに駐車するのが日常の東南アジアにおいては、大きいとボティが傷だらけになるし、停める場所にも困ってしまうのだ。
さらにいえば、未舗装の道路も多く、大径ホイールでなければ悪路を走破できないし、チューブタイプでないと街の修理屋がパンク修理できない。などなど、現地の事情からすれば至極まっとうな車体構成なのだが、日本で走るととんでもないハイパワーなカブもどきみたいな感じで、珍妙な乗り物に見えるのだった。

さて、走ってみてまず驚いたのはスピードメーターの誤差だ(笑)。当時知り合いのクルマと並走してみたところ、こちらのギヤポジションインジケーター付きの180km/hフルスケールメーターは6速140km/hを超えていて、「マジ? すげー出てる!」と喜んでいたのだが、クルマのメーターは120km/h弱。クルマのメーターの誤差もあるだろうけど、「これが俗に言うハッピーメーターか」と、妙に納得した。正確なのは感覚的に50km/hくらいまでだった。

エンジンは2スト120cc単気筒なのではじけるような楽しさがあり、アジアンモデルらしく低速トルクがあって扱いやすかった。こんな成りだが車体剛性も十分。足つきも良好だしタイヤの接地感もワンクラス上のバイクと同じくらいあって不安がない。燃料タンクをホールドできないポジションにセパレートハンドル、フットペグはふわふわラバーのついたゆったりポジション。しかも車重は97 kgと取り回しも軽く、細いタイヤと相まって軽快さではダントツだった。

とにかく楽しさが強く記憶に残るバイクなのである。カワサキは、Z1からこのかた50年間ずっと「操る喜び」「とにかくパワー」みたいなこだわりがあるように感じる。それがコイツにもにじみ出ていたのだ。

著者紹介:佐藤大介  

ギョーカイ歴も長くマニアックな小排気量車が大好物。通勤はTMAX、週末のツーリングはヴェクスター150という、間違った? 使い方も得意だ。

※この記事は月刊モトチャンプ2022年9月号を基に加筆修正をしています