ファイナルスペックをまさに研いで磨く

A PIT AUTOBACS SHINONOME PERFORMANCE FACTORY 杉田 浩さん
「2速、3速ギアで高回転まで踏みきる。NAのM16Aエンジンを低いギアで、積極的に引っ張って走る面白さは、ZC32Sならではの魅力です。いっぱいまで性能を引き出し、安定させる。そして耐久性にも水温、油温をいちばんよい状態に保って楽しんでください」

デモカーのZC32Sはストリート仕様のライトチューン。2024年の筑波スーパーバトルで1分8秒045を記録した。

「アタックラップでは、ほぼ同じタイムが刻めた。つねに同じペースで走れました。いい換えれば車両の動き、状態がとてもつかみやすく、ドラテクの練習には最適です」ドライビングを担当した蘇武喜和の評価は上々だった。

8周のアタックラップのうち、タイムすべては1分8秒0から1分8秒4の中にあった。ZC33Sのタイムと比較するとその凄さは伝わりにくいが、高回転域まで利用してエンジンからパワーを絞り出す、自然吸気ならではのフィールという魅力がある。

ZC32Sのエンジンは最高出力を7000rpm手前で発揮し、JWRCも戦ったM16A型。エンジン型式こそ変わらないものの、ZC31Sのそれから大きく進化している。

A PITオートバックス東雲パフォーマンスファクトリーに籍を置く、スイフトマイスターの杉田浩さんに語ってもらう。

「M16Aエンジンは凄い耐久性です。僕はZC31Sに乗って20万km近く走りましたが、ずっと好調を維持していました。2速、3速で、レブリミット近くまで引っ張って走れるのは爽快です。デモカーのZC32Sには自身の経験を注ぎながら、最新パーツも使って仕上げています」

車体側もディメンションは車幅、トレッド幅をZC31Sからほぼ保ちながら全長とホイールベースが延長され、重量もZC31Sより軽い1040kgで(途中変更)ボディ剛性やサスも改良を受け、操安性が上げられた。HT81Sから始まった、NAエンジンを積むスイフトスポーツの集大成といえる。

新車の販売終了から時間が経過した現在でも、カスタマーが真似してつくれる仕様。とっておきの素材を、いまの技術で研いで磨く。選りすぐったメニューで構成する同店のデモカーの細部を探っていこう。

ZC32SのM16Aエンジンはメーカー純正メカチューン

M16Aはボアφ78×ストローク83㎜で1586㏄。ZC32S用は最高出力136㎰/6900rpm、最大トルク16.3㎏-m/4400rpm。ノーマル段階でZC31Sから11㎰、1.2㎏-m増え、中間域を主体にトルクフル。

デモカーのエンジン本体はノーマル。ZC31SのM16Aを、メーカーがある意味メカチューンしたのがZC32S用のM16Aだ。軽量な鋳造ピストンを採用し(ZC31Sは鍛造)、吸排気ポートの形状変更、燃焼室周囲の水路改良、そして吸気カムのハイカム&ハイリフト化とVVT見直し。

極めつきはインマニ内部に可変吸気システムを搭載。よほど酷使して調子が落ちていない限り、吸排気系と冷却系の強化、油脂や点火系のメンテナンスで十分に遊べる。ありがたい構造だ。

ZC32SのM16Aはエンジンカバーがエアクリーナーケースを兼ね、吸気経路も複雑だ。デモカーに装着されたTMスクエア製インテークボックスは車両前面からフレッシュエアを直接取り入れ、ボックスのエアボリュームもあって、充填効率が高まる。ECUもTMスクエアで書き換えている。

水温と油温を100℃付近に保つため、トラストの空冷式オイルクーラーを追加(純正は水冷式)、アールズのラジエーターなどを備える。ポイントは2枚目の画像で杉田さんが示す箇所、フロントグリルが塞がる部分を加工して抜き、オイルクーラーに風を導いている。

サーキットでのエンジンオイル偏り防止にオイルパンにはバッフルプレートを追加

ZC32Sはエンジン右置きのFF車。オイルパンの形状は、トランスミッションと結合する側が浅くなる。

右コーナーではミッション側が車体のロールで下がるため、エンジンオイルの一部が深さのある側から浅い側へ流れ込み、エンジンがオイルを吸いにくくなることがある。デモカーは対策としてオイルパン内にバッフルプレートを追加した。

バッフルプレート追加にはエンジンの脱着は必要ない。リフトアップし、オイルパンを外せば可能。これは作業の途中でクランクが見える。

ZC32S用オイルパンバッフルプレートは、リリースするメーカーが限られる。デモカーはサーキット派の間でも人気のTMスクエア製を選択。

エキマニからテールエンドまで交換軽快にもっと吹ける特性へ

ZC31Sでは触媒がエキマニとセンターパイプに付く、過剰な(?)ツイン触媒だった。ZC32Sでは出力特性にも早期の触媒温度の上昇のためにも、触媒が付くのはエキマニのみ。排気チューンの自由度が高まっているのだ。

マフラーをシングル出しテールにして、軽量化も狙うのもよし。デモカーのように純正のW出しを意識し、飾りながら性能を追うのもよい。エキマニも高効率な形状にアップデートしたい。

マフラーはチューニングの発展性を考えてHKSのリーガマックスプレミアム。これには中間パイプ付きと、テールピースのみの2種類のモデルがある。前者を選ぶとフロントパイプ出口以降の中間パイプからテールまで、一式交換ができる。

エキマニはφ38パイプが4-2-1レイアウトとなるTMスクエア製。4-2の集合後に触媒が装備される保安基準適合品で、デモカーのECUデータもこのエキマニに合わせ込んでいる。

後編に続く

(7月24日 17:10~配信予定)


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