G・ヨー・舵角を読む各センサーの校正が大事

ABSにEBD、スタビリティ制御やトラクションコントロールなど、EPSが受け持つ制御は広い。スイッチOFFでは、後者のふたつの制御が解かれる。

車両の協調制御という電脳系のテクニカルな観点からもZC33Sのチューニング、メンテナンスに取り組む裏方のAさん曰く、

「Gセンサー、ヨーレートセンサー、マスターシリンダーの圧力センサー、ステアリングの舵角センサー。動きや量の変化を検出するセンサーには、すべての制御をするうえで基準となる、スタート地点のゼロ点があります。ESPの制御部は、あらかじめメモリーがゼロ点を数値として憶えています。

ゼロ点をもとに、運転操作やクルマの挙動・姿勢に応じて、Gやヨー、舵角の各センターから出力される信号が大小変化します。そうした情報からESPの制御は車両の状態などをつかんで計算、必要ならば制御を掛けます。

余談ですがスマホでは機種により、ボディを傾けると電源がONにできる。あれはジャイロセンサーが、位置の推移を見ています。ノーマルから車高が変わって、前後左右のバランスも違えば、車体の傾きから基準のゼロ点がズレを生じる可能性があります。

ズレからG、ヨー、舵角などの変化が制御上の計算と一致せず、エラーというか、本来ではないタイミングで制御が入ったり、動作を招いたりするケースも想定されます。

制御の基準にゼロ点があれば、何か車両に施したら必ず基準値に校正し直す。当社の基本的な考えです。いまの設定車高で、ESPの各ゼロ点の認識を改めて、正すわけです。当社は前下がり、後ろ下がりの車高でもゼロ点を合わせ、走らせて試し、有効性を確認しています」

ゼロ点の校正は車両を平坦な場所に置き、専用の機材で行う。停止状態でハンドルはまっすぐに。車速0km/でGは0G。ヨーレートは0deg/S。舵角は0°にする。

ZC33Sの整備マニュアルでもESPコントローラー、ステアリング舵角センサーの脱着・交換を行ったら、ゼロ点の校正が手順では指定となっている。トラクションコントロールとスタビリティ制御が、ゼロ点からの信号の変化で機能するためだ。Aさんのいう、ゼロ点の校正の必要性を裏づける。

「制御を味方にする意味で、サスはブレーキングでリアタイヤの接地性が確保できるストロークに合わせ、姿勢も前が沈み過ぎないようにして、不用意なABSや制御の介入を抑えたいです」

ESPユニット(ABS)には制御部やセンサーもある

部品名はESPコントローラー。内部にはESP制御部、液圧を増減・維持するソレノイドバルブとモーター、G/ヨーレートセンサーもこの中にある。

Aさんは、ZC33SのECUチューニング時も、ESPコントローラーのゼロ点を校正する必要性があるという。「当社でECUを書き換えるときは、車両の純正ECUデータを読み出して保管したうえで、学習値や重要なパラメータを新車時と同様に戻します。

当社のベースデータは、ECUが新車の状態でセッティングを取っているからです。ECUの制御と密なESP側もゼロ点を校正し、トータルで制御のベースを新車時に近づけます」

ノックセンサーが不調の要因に!?

ステアリングにもコントローラーが一体

コラムには舵角センサー(ライト&シグナルスイッチに一体)、パワステコントローラー(アシストモーター付き)がある。ECU、ESPともCANでつながる。

最近、Aさんのもとに、エンジンフィ―ルに悩めるZC33S乗りが訪ねてきた。エンジンマウントを強化後、以前よりブーストが掛からなくなることがあるという。当然、交換して何ともない人も多いはずだ。何が起きたのか?

「本来はノイズとみなす振動を、何らかの条件でECUがノッキングとして、誤って拾うようです。燃焼が異常と、ECUがエンジン出力などを抑えようとします。そのうち復活しますが、また症状が現れ、その繰り返しになります」

ZC33Sのノックセンサーは、エンジンブロックの2番シリンダー裏側に付いている。直接見ることは難しいが、小径丸型のバームクーヘン状で、中央は貫通する。そこにボルトを通し、ブロックに固定されている。衝撃を受けると起電力が発生し、ECUはそのレベルから、事象を判定するのだ。

ノックセンサーの点検は、周辺のシリンダーブロックにプラスチックハンマーで衝撃を与え、センサーの出力波形を観測する。純正マウントでは抑え込まれた振動が、強化によりエンジンが車体ともしっかり固定されるため表に現れ、何らか衝撃の誤検知をつくる。なきにしもあらずか?

「対策の方法は、いくつかあります。当社の見解では、ECU内部に通常の方法では消せない車両情報の領域があって、学習のための前段階の基準値とみなせる数値が格納されています。先ほど話したECUチューンの準備には、これのリセットも含みます。チューニング後も好調に走れる、秘訣です」

探求心あふれるAさんの技だ。


■REVSPEED

https://motor-fan.jp/publisher/revspeed/