一生モノと出会った26歳の決断

“頭文字D世代”がリアルで体現するハチロク像

平成世代のクルマ好きを熱狂させた漫画『頭文字D』。週刊ヤングマガジンでの連載開始は1995年7月、さらに1998年4月にはテレビアニメもスタートし、多くの少年たちをクルマの世界へ引き込んだ。当時、小中学生だった世代も今や30〜40代となり、チューニングシーンの中心で活躍している。

そんな“頭文字D世代”の流れを受け継ぐ若きオーナーが、今回紹介する26歳の石本さんだ。

クルマ好きだった父親の影響もあり、「物心ついた時には、クルマといえばハチロクでした。大人になったら絶対に乗るって決めていたんです」と語る石本さん。その想いをさらに強くしたのが、『頭文字D』の存在だった。

そして高校生の頃、彼に決定的な衝撃を与えた1台が現れる。和歌山県のプライベートビルダー、“イナズマワークス”こと池田将隆さんが製作したスプリンタートレノだ。以前ウェブオプションでも紹介したことのある、究極のワイヤータック仕様。その完成度に完全に心を奪われたという。

「ネットだったのか雑誌だったのか、どこで見たのかは覚えていないんですが、池田さんのトレノを見た瞬間、“自分が乗りたいハチロクはこれだ”って思ったんです」。

その後、専門学校を卒業して鈑金塗装店へ就職。自分でクルマを作れる環境が整ったことで、石本さんは行動を起こす。インスタグラムのDMを通じて池田さんへコンタクトを取ったのだ。

「最初は全然相手にしてもらえませんでした(笑)。でも、いつか自分も池田さんみたいなハチロクを作りたい、そのために教えてほしいって気持ちを伝え続けたんです。住所を教えてもらってからは、滋賀から和歌山までバイクで通って、どんなクルマを作りたいのか相談させてもらいました」。

そうしてベース車探しから協力してもらい、辿り着いたのが現在のブラックリミテッドだった。

スプリンタートレノのブラックリミテッドは、GT APEXをベースに全国400台限定で販売された特別仕様車。ブラックアウトされた専用エクステリアに加え、ゴールドのピンストライプやロゴ、専用14インチホイール、専用ファブリックシートなど、数々の特別装備を備えていた希少モデルである。

「予算的にはかなり無理していました。でも、本物のブラックリミテッドをベースに自分の理想を表現したかったんです。それに、池田さんのパンダトレノとも違う方向性を出せると思って決断しました」。

22歳で人生初の愛車として購入するには、かなり勇気のいる選択だったはずだ。しかし石本さんに迷いはなかった。

「一生手放すつもりはないです」。その覚悟があるからこそ、カスタマイズにも妥協はない。

現状、エンジンルームはほぼノーマル然としているが、将来的な5バルブ化を見据え、エキマニにはKMS(コシミズモータースポーツ)へセミオーダーしたハンドメイド品を投入。吸気にはHKSスーパーパワーフローを組み合わせ、現段階でも吸排気効率を高めている。

マフラーはフジツボ・レガリスRと戸田レーシング製触媒アダプターを装着。ジェントルな音量ながら、高効率な排気特性を実現している。

足元で強烈な存在感を放つのは、ボルクレーシング84Cをリバレルしたこだわりのホイール。ショーイベントでの映えを意識して製作したもので、エアロディスクはなんと未使用新品をオークションで入手。躊躇なくブラックリミテッドのカラーリングに合わせて塗装したという。

さらにセンターキャップはボルクレーシングメッシュ用を加工し、センターロック風にアレンジ。ディスクを外しても成立するよう、見えなくなる部分までゴールド塗装を施す徹底ぶりだ。

フェンダーはノーマルを叩き出して約15mmワイド化。今後は池田さん製作のワンオフフェンダーへのアップデートも計画中だ。足回りはZSS車高調をベースに、池田さんワンオフのピロアッパーマウントを組み合わせてキャンバー調整を実施。リヤにはキャンバーホーシングも導入している。

運転席にはレカロのフルバケットシートをセット。さらに表皮を張り替え、“BLACK LIMITED”の刺繍を施すことで特別感を高めた。

ブラックリミテッド最大の特徴である、前後バンパーやサイドモール、ドアミラーまでブラックアウトされたフルカラー仕様も健在。ゴールドの“TRUENO”エンブレムに加え、フロントスポイラーも装着され、より精悍なスタイルへと進化している。

そして現在、石本さんは次なるステージを見据えている。

「いつかは池田さんみたいに、エンジンスワップやエンジンルームの作り込みにも挑戦したいです」。

“憧れ”から始まったハチロクとの物語は、まだ序章に過ぎない。石本さんにとっての第2章は、もうすぐ始まろうとしているのだ。

Photo:Akio HIRANO TEXT:Hideo KOBAYASHI

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