現代技術を注入して復刻に取り組んだガズーレーシングの力作!
チューナー・インパルス田嶋さんに聞く新生4A-GEの素性
「思い出の詰まった愛車に乗り続けたい」。そんなユーザーの想いに応えるべく、GAZOO RacingがA70/80スープラ向け廃番パーツ復刻活動『GRヘリテージパーツプロジェクト』を発表したのが2019年5月。大きな話題を呼んだこの取り組みは、その後スープラだけに留まらず、2021年11月にはAE86も対象車種に加わった。

リヤブレーキキャリパーやステアリングナックルアームを皮切りに、エンジンハーネスや各種レンズ類など、AE86用廃番パーツの復刻は着実に進行。そして今回紹介するのは、2025年9月に復刻が発表された4A-GE用シリンダーヘッドとシリンダーブロックだ。

AE86の心臓部を構成する主要パーツが新たに供給されることで、愛車を長く維持できる環境がさらに整ったわけだが、今回の復刻で注目すべきは単なる“再生産”にとどまらない点にある。
ユーザーニーズを積極的にヒアリングしながら、「より良い状態で長く乗り続けてもらう」ことを目的に、最新のシミュレーション技術や工法、素材を投入。現代的アップデートを施したうえで復刻されているのだ。

まずシリンダーブロックSUB-ASSY(65万8900円)は、FF車にも搭載できるよう横置きマウント用のボスやリブを追加。ベースには、オイルリターンやピストンクーラー装着に対応したAE92後期用が採用されている。
現代の鋳造技術によって品質を高め、シリンダーボアには最新のホーニング加工を実施。加工精度を向上させるとともに、クランクキャップも最新シミュレーション技術を用いて形状を見直し、耐久性を高めている。


現代技術で鋳造されたブロックは、オリジナルと比べてリブ形状がよりシャープ。必要な部分は肉厚を増しつつ、不要な部分は削ぎ落とされており、合理的な設計思想が伝わってくる仕上がりだ。


また、AE92後期用をベースとしているため、アンチノック性能向上に効果的なピストンクーラーの装着も可能。オリジナルブロックと比較すると、鋳肌そのものも非常に整っていることが分かる。

シリンダーボアには現代的なホーニング処理を採用。従来はボア径のバラつきが大きく、ピストンと合わせて3ランク管理されていたが、今回は中央ランク公差で高精度に統一されている。

さらに、クランクキャップには高剛性鋳鉄材を採用。厚みを増すことで、より高い締結力を実現している。

一方、シリンダーヘッドSUB-ASSY(64万7900円)は、可変吸気システムのT-VISを廃止し、高効率なタンブル流を実現したAE92後期用をベースに設計された。


特に印象的なのが、燃焼室に施された切削加工だ。鋳肌のばらつきによる圧縮比差を抑制するための加工だが、その見た目はまるでレーシングエンジンのような美しさを放つ。


さらに、トヨタモータースポーツ用エンジンでも実績を持つ塗型処理によって吸気ポート内の凹凸を低減。加えて、カムキャップには全箇所にノックピンを追加し、吸排気ポート周辺の肉厚も一部増加させるなど、細部にまでアップデートが施されている。

今回話を聞いたのは、4A-GEのオーバーホールからフルチューンエンジン製作まで数多く手掛けてきた、インパルスの田嶋さんだ。
田嶋さんが今回のGRヘリテージパーツで最も注目しているのは、やはり現代技術による精度向上だという。
「極端な言い方をすると、40年前の純正4A-GEはポート形状や気筒間ピッチなどの精度差が大きく、単気筒エンジンが4基並んで動いているようなアンバランスさがありました。特に熱を持ちやすい4番シリンダーはアンチノック性が低く、燃焼室容積のバラつきや、シンメトリーでない純正ピストンのバルブリセス形状などが性能低下につながっていたんです」。
そうした弱点を克服するため、インパルスでは高精度な社外ピストンへの交換や燃焼室加工、気筒別点火制御などのチューニングを実施してきた。しかし、今回のGRヘリテージパーツによって、必要最小限の手数で4A-GE本来の性能を引き出せる環境が整ったと田嶋さんは語る。

また、「チューニング派よりも、むしろオリジナル派のオーバーホールでこそ、この精度の高さは真価を発揮する」とも話す。
というのも、インパルスには現在でも中古ヘッドや中古ブロックの在庫が20〜30基分ほどあり、ボーリングや燃焼室加工を前提としたチューニングエンジン製作には、そこまで困っていない。
しかし、ヘッドガスケット劣化によるブロック上面の腐食や、オイル管理不足によるブロー歴など、中古部品には見えないリスクも多い。結果として、オーバーホール費用が想定以上に膨らむケースも少なくない。
その点、GRヘリテージパーツなら新品かつ高精度。4A-GE本来の性能を素直に引き出せるのが大きな魅力だ。


「精度にバラつきのある純正ピストンを、高精度な社外ピストンへ変更するだけでも、純正ECUのままで確実にフィールアップは期待できます。さらにピストンクーラーによって、熱を持ちやすい4番シリンダーのアンチノック性も改善されます。今の高精度なボアをあえて拡大加工するのは、むしろナンセンスでしょう」。
インパルスがオリジナル派オーバーホールで積極採用しているのが、戸田レーシング製ハイコンプ鍛造ピストンキットだ。シンメトリーなバルブリセス形状と純正サイズ(81φ・受注生産)の設定に加え、ピストントップに圧縮調整用の加工代を十分確保しているため、純正ECUにも対応しやすい仕様へ調整できる。


一見すると純正ピストンでも問題なさそうに思えるが、実際にはバルブリセス位置のズレによってスキッシュ効果に差が生じているケースも少なくない。ヘッドやブロックの精度が向上した今だからこそ、ピストン側の精度も重要になるというわけだ。


また、4A-GEはコーナリング時のGによるオイル偏りで、メタルダメージを受けやすいエンジンとしても知られている。そこでインパルスでは、0.5Lの油量アップを実現するオイルパンスペーサーを設定。さらに、廃番となったAE86用オイルパンに代わり、AE111用オイルパンを流用できるスペーサーも用意している。

AE92エンジン搭載車向けには、インパルス製吸気ポート変更アダプターも設定。高効率化されたシリンダーヘッドの吸気性能を、さらに引き上げることが可能だ。

GRヘリテージパーツとして蘇った4A-GEのシリンダーヘッドとブロック。その進化を踏まえたうえで田嶋さんが強調するのは、「チューニングよりも、まずオーバーホールでこそ価値を発揮する」という点だった。
最小限の手数で、本来の性能を取り戻せる。それこそが、新生4A-GE最大の魅力なのかもしれない。
●取材協力:インパルス 兵庫県神戸市西区南別府1-14-8 TEL:078-975-8186
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