Z900RS Black Ball Edition……1,529,000円

2026年型Z900RS Black Ball Editionは、ボディカラーがエボニーのみで、定番のファイヤーボールやタイガーカラーの設定はナシ。

ルックスからは想像できない大改革

2026年型Z900RSシリーズの広報資料を見て、僕がビックリしたのは変更点の多さだった。

と言うのも2017年末の発売以来、このシリーズは日本で絶大な人気を獲得しているのだから、新しい規制のユーロ5+に適合する必要はあっても、コストがかかる大改革はマストではないのだ。

でも2026年型Z900RSシリーズのパワーユニットの変更点は、エアファンネル、排気系、ECU、カムシャフト、クランクシャフトなどが変更されており、スロットルは昔ながらのケーブル式から現代的な電子制御式に進化。

2026年型Z900RSシリーズは、スマホとの連携機能を導入。ナビシステムは音声コマンドに対応。

ライダーを支援する電子デバイスに関しては、新たな装備としてクイックシフターとクルーズコントロール、スマホとの連携機能を採用し、6軸IMUを導入することでABSとトラクションコントロールの精度を高めている(ここまでに述べた変更点の多くは、2025年型で大幅刷新を受けたZ900の技術をフィードバックしている模様)。

また、日本市場の標準となるローシートが新作となり、そのシートに合わせてスタンダードとSEのハンドル形状を変更したことも、2026年型を語るうえでは欠かせない要素だろう。

従来モデルと比較し足つき性は維持しながら、タックロール部にウレタンを追加。快適性も向上させている。
従来型では、スタンダード:800mm、SE:810mmだった日本仕様のシート高は、2026年型では810mm・820mmとなった。数値上は10mm高くなっているが、着座時には沈みこむ為、足つき性はほぼ同等となっている。ハイシートを標準装備するヨーロッパ仕様のシート高は不変の835・845mm。

いずれにしても2026年型Z900RSシリーズは、かなり気合いの入った仕様変更を行っているのだ。

その背景にはガチンコ対決になりそうなライバル車として、2025年秋にホンダがCB1000Fを発売したことがあるのかと思いきや、2026年型Z900RSシリーズの開発している段階ではCB1000Fの詳細は公開されていなかったため、カワサキは特に意識していなかったようである。

マニア心をくすぐるブラックボールエディション

あ、こういうカラーだったのか。広報写真ではわかりづらいものの、“ブラックボールエディション”と命名された2026年型Z900RSと対面した僕は、ガソリンタンクとテールカウルのメタリックブラック部分が、光の加減でベースのソリッドブラックから浮き上がって見えることを発見。

誤解を恐れずに表現するなら、この仕様には既存のZ900RSシリーズとは趣が異なる、高級車的な資質が備わっているように思う。

なおブラックボールエディションは、従来型ではメッキ仕上げ・アルミ地だったパーツのブラックアウトも徹底しているので、派手さよりも引き締まった印象を重視した仕上がりとなっている。

とはいえ、黒いメーターベゼルは1970年代の空冷Z系の定番だったし、ブラック仕上げのハンドル/レバー/ガソリンタンクキャップは、1980年代のZ1100GPやZ1000Rなどを思わせるところがあるので、古くからのカワサキ好きならニヤリとしそうである。

従来型とは別物のライポジとエンジン特性

日本仕様のハンドルはガラリと変化。ただしハイシートが標準のヨーロッパ仕様は、従来型と同じハンドルを採用している。

ここからはようやくインプレ編で、2026年型Z900RSのスタンダードに乗って、僕が最初に嬉しくなったのはライディングポジションだった。

ローシートが標準となる日本仕様の場合、従来型は上半身がアップライトで堂々としているのに対して、下半身がちょっと窮屈だったのだが、ハンドルグリップ位置が38mm低く、50mm狭くなった2026年型は、上半身が程よい塩梅で前傾し、下半身とのバランスが良好になっているので、依然としてローシートが標準の日本仕様でも違和感はほとんどナシ。

この感触なら従来型とは異なり、ロングランの後半で尻や下半身などに痛みを感じることはないだろう。

2025型と2026年型のパワー/トルクカーブを比較。高回転域は2026年型が勝る。

では主要部品の多くを刷新したパワーユニットはどうかと言うと、広報資料のパワー/トルクカーブを見た時点での僕は、高回転高出力型になったのか?と感じていた。

でも実際の2026年型のエンジンフィーリングは、高回転域の伸びが良好になっただけではなく、開け始めのレスポンスが格段に洗練され、全域で操作に対する反応が従順になり、その結果として従来型以上に高揚感と爽快感が満喫しやすくなっているのだ。

ストリートの走行写真で着用したジャケットは、カワサキプラザとIXONのコラボモデルであるM-NIGHT WP A。

なおライダーを支援する電子デバイスに関して、実は当初の僕は、Z900RSシリーズのようなネオクラシックバイクには必要ない?と感じていたのだが……。今回の試乗では、クイックシフターとクルーズコントロールの美点を改めて実感。

この2点を導入したことで、ツーリングの快適性は大幅に向上するはずだし、峠道でスポーツライディングする際はクイックシフターが有効な武器になる。例えば、従来型と2026年型の2台で峠道をメインステージとする比較ツーリングに出かけたら、おそらく、帰路は2026年型の取り合いになるだろう。

そんな2026年型Z900RSにあえて異論を述べるとしたら、足まわりの構成が従来型から変わってないこと。

僕としては、リアショックはもう少ししなやかに動いて欲しいし、最新のスポーツツーリングタイヤを採用すれば(トータルバランスに優れたタイヤではあるけれど、Z900RSシリーズ全車が標準装備するダンロップ・スポーツマックスGPR-300が登場したのは2014年)、運動性も快適性も向上するんじゃないかと思う。

まあでも、足まわりのバージョンアップは購入後のカスタムで可能だし、Z900RSシリーズにはノーマルとは一線を画する運動性と快適性が味わえる上級仕様として、オーリンズ製リアショックと専用セッティングを施したフロントフォーク、ブレンボ製フロントブレーキキャリパー+ディスクを装備するSEが存在するのだから、そのあたりは声を大にして言うほどのことではない……のかもしれない。

加速感を意識してドライブスプロケットを42→43Tに変更したため、2026年型Z900RSシリーズのホイールベースは、従来型より5mm短い1465mmとなった。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

この写真ではわかりづらいけれど、2026年型は従来型より上半身が前傾する。旧車を引き合いに出すなら、Z1系ではなく、ヨーロッパ仕様のZ1000JやZ1000Rなどに近い雰囲気だ。タックロール部にウレタンを追加したため、シート高は従来型+10mmの810mmになったが、足つき性の変化はほとんどナシ。

ディティール解説

6室構造のLEDヘッドライトに変更はナシ。ただし2026年型のBlack Ball Editionは、ヘッドライトリムがカフェと同様のブラックになった。
コクピットはブラックアウトを徹底。ブレーキ/クラッチキバーの基部には位置調整用ダイヤルが備わる。
中央に液晶モニターを備えるものの、スピード/タコメーターは昨今では珍しい指針式。
スイッチ類は従来型とは別物。右側のスロットルケーブルが消え、左側にはクルーズコントロール用のボタンが追加されている。
基本形状は従来型と同様だが、2026年型Black Ball Edition/SEのシートはタックロール部にウレタンを追加。従来型に装着すれば、多少は快適性が向上するだろう。なおヨーロッパ仕様で標準となるハイシートは、日本では純正アクセサリーとして購入することが可能で、価格は2万5410円。
シート下に収納スペースは存在しないものの、ETC2.0ユニットは標準装備。荷かけフックは片側2カ所ずつ。
左ステップのシフトロッドには、クイックシフター用のセンサーが追加されている。
水冷並列4気筒エンジンは、主要部品の多くを刷新。最高出力は111PS/8500rpm→116PS/9,300rpmに向上。10kgf・mの最大トルクに変更はないが、発生回転数は6500→7700rpmに上がっている。
エグゾーストシステムは新設計。マットブラックでペイントされたヒートガードとエンドキャップは、ブラックボールエディションならではの装備だ。
前後ブレーキは従来型と同じ。フロントはφ300mmディスク+ラジアルマウント対向式4ピストンキャリパーで、リアはφ250mmディスク+片押し式2ピストンキャリパー。
KYB製前後ショックも従来型の構成を踏襲。φ41mm倒立フォークはプリロードと伸圧ダンパー、リアショックはプリロードと伸び側ダンパーの調整が可能。

主要諸元

車名:Z900RS
型式:8BL-ZR902A
全長×全幅×全高:2100mm×815mm×1135mm
軸間距離:1465mm
最低地上高:135mm
シート高:810mm
キャスター/トレール:25°/98mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:948cc
内径×行程:73.4mm×56mm
圧縮比:11.8
最高出力:85kW(116ps)/9300rpm
最大トルク:98N・m(10kgf・m)/7700rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギアレシオ
 1速:2.600
 2速:1.950
 3速:1.600
 4速:1.389
 5速:1.217
 6速:1.069
1・2次減速比:1.627・2.867
フレーム形式:ダイヤモンド(トレリス)
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm
懸架方式後:ホリゾンタルバックリンク式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:180/55ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:216kg
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
燃料タンク容量:17L
乗車定員:2名
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:20.5km/L(1名乗車時)