格上の現行スポーツをも追い詰める!
高回転NAと軽量ボディが生む究極の操る楽しさ
1トンを切る軽量ボディを武器に、格上のスポーツカーさえ追い回す走りで1980年代を席巻したのが、ライトウエイトスポーツの象徴とも言えるワンダーシビックだ。
当時の1.6Lクラスでトップレベルとなる135psを発揮するZCエンジンと、わずか880kgの車重を組み合わせたそのパッケージは、VTEC搭載のグランドシビックSiR(EF9)が登場するまでストリートやサーキットで無類の強さを誇った。FR全盛だったチューニングシーンに一石を投じた、FFスポーツのレジェンドと言っても過言ではない。

今回紹介するのは、そんな名車に魅了され、ワンダーシビックのチューニングを精力的に手掛ける“ファイブマート”が約5年前に製作したB16B換装車だ。


パワーバルジのないボンネット形状からも分かるように、ベースとなったのはスポーツグレードのSiではなく、1.3L SOHCエンジンを搭載する23Lグレード。これはボディコンディションを最優先した結果だ。ワンオフロールケージで補強したボディに、4連スロットルやハイコンプ仕様によって220psまで高められたB16Bを搭載している。

「ZCエンジンに拘るのも面白いですが、軽さによる楽しさはあっても現行スポーツに対抗できるほどの速さは正直ありません。ただ、ポテンシャルの高いB16Bへ換装するとワンダーシビックは一気に化けるんです」と語るのは、自身もB18C換装のワンダーシビックでタイムアタックに挑むファイブマートの古川さん。

もちろん、ただエンジンを載せ替えただけでは終わらない。フィラーキャップやプラグカバー、オイルキャッチタンク、リザーバータンクにはUSパーツを採用し、レーシーでありながら美しく仕上げられたエンジンルームを演出している。
現在の制御はROMチューンだが、今後はB型エンジンの弱点として知られるデスビトラブル対策も兼ねて、LINKによるダイレクトイグニッション化を予定。さらなるレスポンス向上と信頼性アップを狙っている。

そんな古川さんの情熱に強く影響を受けたのが現オーナーだ。家庭を優先するため約7年間眠らせていたEK9を復活させようと考えていた頃、岡山国際サーキットでR35GT-Rと激しくバトルを繰り広げるワンダーシビックの車載動画をYouTubeで発見。「一体どんな仕様なんだろう」と興味を持ち、一気に引き込まれたという。

さらに紆余曲折を経てワンダーシビックを手に入れ、メンテナンスをファイブマートへ依頼したところ、車両製作や購入のきっかけとなったその動画のドライバーこそが古川さん本人だったことが判明。まるで運命に導かれたような出会いだった。


駆動系にも妥協はない。B型エンジンをワイヤークラッチ化するため、将来的な補修パーツの供給まで考慮し、DA6後期型のミッションケースにDC2用ギヤとファイナルを組み合わせたスペシャル仕様を製作。排気系には、80〜90年代のシビック乗りに親しまれたエイコーマフラーの砲弾型サイレンサーを再現した、ファイブマートオリジナルマフラーを装着する。

ボディ剛性も旧車の域を超えている。AピラーとBピラーをガセット補強したワンオフロールケージを組み込み、220psとSタイヤのグリップを受け止められる高剛性ボディへと進化。リヤはクイントインテグラ用ホーシングへの換装によってディスクブレーキ化も果たしている。
また、複数のオーナーを渡り歩く過程で7度まで寝かされていたリヤキャンバーも、今後はドライビングスタイルに合わせて適正値へと見直す予定。アクセルオンでじゃじゃ馬をねじ伏せる、本来のワンダーシビックらしい走りを追求していくという。

足元には195/50R15のダンロップ・ディレッツァ03Gを装着。ムッチリとしたタイヤのサイドウォールは、角張ったワンダーシビックのスタイルとも相性抜群だ。外装は、かつて人気を集めた純正レッドから、現代的な雰囲気を狙った半艶ガンメタのラッピングへと変更されている。


メーターはあえて23L純正を残しつつ、ステアリングコラム上にピボット製タコメーターを追加。80年代らしい雰囲気を巧みに残している点も見逃せない。

「2021年頃に販売した車両が、複数のオーナーを経て思わぬ形で里帰りしてくれました(笑)。乗りこなせるようにスキルアップしたいというオーナーをサポートするため、先日は2台のワンダーシビックでセントラルサーキットを走りました。フルコン化などのアップデートも予定していますし、1分25秒台も十分狙えると思いますよ」と古川さん。

一方のオーナーも、その魅力にすっかり取り憑かれている。
「心臓部は同じB16Bでも、EK9とはまったく別物ですね。約200kg軽いショートホイールベースのボディは驚くほど軽快で、アクセルを踏み込んだ時の刺激も220psとは思えないほど濃密です。まだ乗りこなせてはいませんが、ワンダーシビックならではの走りと味わい深いスタイルを長く楽しんでいきたいですね」。

チューンドB16Bを搭載することで、現行スポーツにも負けない速さを手に入れたワンダーシビック。電子制御や空力デバイスこそ持たないが、じゃじゃ馬をねじ伏せながら操る楽しさと、その先にある鋭い速さこそが、このライトウエイトスポーツの真骨頂なのだ。
●取材協力:ファイブマート 大阪府羽曳野市西浦984-1 TEL:072-950-5050
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