ヤマハ・XSR155 ABS……539,000円(2026年6月30日発売)

年間販売計画台数はXSR125の2000台(国内、2025年3月19日発表時)に対して、2倍の4000台と発表されたXSR155。タイでの初お披露目は2019年8月なので、日本の正規ラインナップに加わるまで7年かかったことになる。
フレームはデルタボックスと名付けられたスチール製ツインスパー。左右ピボット幅は221mmと広めだ。デルタ形状のスイングアームはアルミ製。
標準装着タイヤはセミブロックパターンのIRC・トレイルウイナーGP-211で、指定空気圧は1名乗車/2名乗車ともフロント:225kPa、リヤ:250kPaだ。なお、インドで販売されている仕様は前後ともオンロードパターンで、しかもリヤはラジアルを採用する。
車体色はブラックメタリック12(ブラック)、グリーニッシュグレーメタリック2(グリーン)、ライトブルーイッシュグレーメタリック9(シルバー)の3種類。

XSR125よりも約27%パワフル、洗練されたフィーリングだ

原付二種クラスにXSR125が導入されてから約2年半。ついにその軽二輪版となるXSR155が国内正規ラインナップに加わった。ニューモデルとしてタイで発表されたのは2019年8月だけに、「ようやく」という印象は否めない。だが、巨大市場であるインドでも2026年に初導入されたことを考えると、ヤマハは市場が熟すタイミングを見極めていたのだろう。

日本とほぼ同じタイミングでインド市場にもXSR155が導入された。日本仕様とはホイールのデザインが異なるのをはじめ、オン/オフ可能なトラクションコントロール、スマホ接続機能であるY-Connect、LEDウインカー、ハザードスイッチ、バイブレ製キャリパー、そしてサリーガードなどを採用する。

搭載されているエンジンは、フルカウルスポーツ「YZF-R15 ABS」と共通の155cc水冷シングルで、最高出力は19PSを発生する。232cc空冷単気筒を積むカワサキ・W230/メグロS1が18PSであることを考えれば、この排気量から生み出される動力性能は十分以上と言えるだろう。

155ccの水冷SOHC 4バルブ単気筒エンジンは、低~中回転向けと高回転向けの吸気バルブ側カムを設け、スロットル開度に応じて7000~7400rpmの間で切り替えるVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーション)を搭載。アルミ鍛造ピストンやDiASiL(ダイアジル)シリンダー、1軸バランサー、高着火ニッケルプラグ、アシスト&スリッパークラッチなども採用する。

円筒形のサイレンサーから響く排気音は、乾いた歯切れの良いシングルサウンド。アイドリング中から耳に心地良く、1軸バランサーの効果もあって不快な振動はほとんど感じない。加えてメカノイズも少なく、クラシカルなスタイリングとは対照的に、中身は実にモダンで洗練されたフィーリングだ。

円筒形の3段膨張サイレンサー。プロテクターはボディデザインと連動している。

操作力の軽いクラッチレバーを握って1速へ入れ、わずかにスロットルを開いてスタートする。137kgという軽量な車体も相まって、その加速感は実に軽快だ。スタタタタッというリズミカルな排気音とともに、市街地はもちろん流れの速いバイパスでも余裕を持って交通の流れをリードできる。

そして、XSR125との違いは想像以上に大きい。排気量は約25%のアップ(最高出力は約27%プラス)だが、市街地で多用する6000rpm付近までのトルクは一枚も二枚も厚く、発進から中速域までの余裕が明確に増している。

日本では2023年12月に発売された原付二種カテゴリーのXSR125 ABS。現行モデルは50万6000円で、XSR155よりも3万3000円安い。なお、車重137kgは共通だ。筆者による試乗インプレッションはこちら

VVA(可変バルブ機構)はスロットル開度に応じて7000~7400rpmの間で作動し、高速側カムへ切り替わるとメーター内の「VVA」インジケーターが点灯する。とはいえ、その変化はアイコンを見ていなければ気付かないほど自然で、レッドゾーンが始まる1万1000rpmまで実に滑らかに吹け上がる。ちなみに3速でそこまで引っ張るとメーター読みで90km/hを超え、高速道路でもトップ6速・100km/h巡航(約7500rpm)が可能だ。

もちろん、MT-25のような250ccフルサイズモデルと比べれば、高速道路での追い越しや長い上り坂、強い向かい風と入った状況では余裕に差がある。しかし、自動車専用道路を走れるというメリットは想像以上に大きい。

燃費性能も優秀だ。WMTCモード値はMT-25の26.5km/Lに対し、XSR155は48.1km/Lを公称。スズキ・ジクサー150の50.0km/Lに迫る経済性を誇り、ランニングコストを重視するライダーにとっては大きな魅力となるだろう。

共有プラットフォームの真価、万能モデルと呼べる完成度だ

XSR155のハンドリングは、フロントの舵角の付き方が穏やかで扱いやすく、車体のピッチングを積極的に使えばクイックに旋回させることも可能だ。ハンドルの幅がやや広く、シートは着座位置の自由度が高いこともあって、どんな乗り方をも許容してくれるという懐の広さがある。

今回はご厚意でサーキット秋ヶ瀬のコースも走行させてもらったが、そこで改めて感じたのはシャシー性能の高さだ。フロントブレーキをリリースしながらコーナーへ倒し込んでいく場面でも車体はしっかりとした剛性感を保ち、前後サスペンションも適切にストロークする。そのフィーリングはオンロードスポーツそのものだ。

YZF-R125/R15やMT-125とプラットフォームを共有しているだけに、この完成度は納得できる。しかも、それらよりもリラックスした乗車姿勢のまま、本格的なスポーツライディングが楽しめるのだから実に痛快だ。

ホイール径は前後とも17インチ。フロントフォークはφ37mm倒立式で、ホイールトラベル量は130mmだ。これをアルミ鋳造製のトップブリッジとスチール製アンダーブラケットで支持する。フロントキャリパーはピンスライド片押し式2ピストンで、これにφ267mmソリッドディスクを組み合わせる。なお、インド仕様のディスク径はφ282mmで、キャリパーはバイブレ製となっている。

さらに河川敷のフラットダートも走ってみたが、極端にペースを上げなければ意外なほど安定して走れることにも驚かされた。幅広なハンドル、前後に長いシート、厚みのある低~中回転域のトルク、そして137kgという軽量な車体。そのすべてが走破性の高さにつながっているのだろう。

ブレーキは、サーキットにおいては初期の制動力とリリース方向のコントロール性をもう少し上げたいところだが、一般道では何ら不満なし。デュアルチャンネルABSの介入も適切であり、大きな安心材料の一つになっている。

スポーツヘリテイジというカテゴリーに属するモデルではあるが、国内4メーカーの軽二輪カテゴリーを見渡すと、丸目1灯ヘッドライトを採用したオーソドックスな純オンロードモデルは、実はこのXSR155くらいしか存在しないのだ。

アルミ製のステーで支持される丸型LEDヘッドライト。純正アクセサリーでビキニカウル(2万5850円、ステーは7700円)やエアロバイザーキット(1万1000円)、ブラストバリアーキット(1万9250円)などを用意する。

原付二種のXSR125は、免許制度や維持費の面から若いライダーにこそ薦めたい1台だ。対して軽二輪枠のXSR155は、ビッグバイクを所有するベテランライダーにこそ味わってほしいと思っている。気負わず付き合える扱いやすさと、想像以上に高いシャシー性能。その両立こそ、このモデル最大の魅力なのだから。

ライディングポジション&足着き性(175cm/65kg)

やや広めのバーハンドルと、着座位置の自由度が高いフラットなシートで構成されるライディングポジション。身長175cmの筆者にとって足着き性は何ら問題ないが、もう少し下げたいという人は純正アクセサリーのローダウンリンク(8250円、約20mmダウン)を試してみるのもいいだろう。

ディテール解説

リヤブレーキはピンスライド片押し式シングルピストンキャリパーとソリッドディスクのセットで、前後に独立したABSを採用する。
リヤサスペンションはリンク式モノクロス。調整機構はなし。
ブラックで統一されたコックピット。純正アクセサリーでグリップウォーマー180C(1万9580円)を用意する。樹脂製タンクカバーの中に容量10Lの燃料タンクをレイアウト。指定ガソリンは無鉛レギュラーだ。
ネガポジ反転LCDの丸型メーターを採用。外周にバーグラフ式のタコメーターと燃料計をレイアウトし、各種インジケーターをメーターリムにまとめている。バックライトの明るさは3段階に切り替えられるが、最も明るい設定にしてもやや見づらい。
シンプルなスイッチボックス。ハザードスイッチはなし(インド仕様はあり)。
クラシカルなタックロールシートを採用。純正アクセサリーで型押しの入ったレザー調のカスタムシート(2万9700円、要改造申請)が用意されている。
シートはキーロックを解除することで取り外すことができ、その裏面(シートベース)には車載工具がはめ込まれている。バッテリーはインドネシア仕様のYTZ4Vに対し、YTZ6Vがインストールされる。純正アクセサリーで各種ETC車載器を用意。
クラシカルな丸型テールランプおよびナンバー灯はLEDで、前後ウインカーはフィラメント球だ。

ヤマハ・XSR155 ABS 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BK-RGB5J/G3Y5E【8BJ-RE46J/E34LE】
全長/全幅/全高 2,005mm/ 805mm/1,075mm【2,030mm/ 805mm/1,075mm】
シート高 810mm
軸間距離 1,325mm
最低地上高 170mm
車両重量 137kg
燃料消費率 WMTCモード値 48.1km/L【49.4km/L】(クラス2, サブクラス2-2) 1名乗車時
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 155cm3【124cm3】
内径×行程 58.0mm×58.7mm【52.0mm×58.7mm】
圧縮比 11.6:1【11.2:1】
最高出力 14kW(19PS)/10,000r/min【11kW(15PS)/10,000r/min】
最大トルク 14N・m(1.4kgf・m)/7,500r/min【12N・m(1.2kgf・m)/8,000r/min】
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.05L
燃料タンク容量 10L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V, 5.0Ah(10HR)/YTZ6V【12V, 3.0Ah(10HR)/YTZ4V】
1次減速比/2次減速比 3.041 (73/24)/3.428 (48/14)【3.714(52/14)】
クラッチ形式 湿式, 多板
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
変速比 1速:2.833 2速:1.875 3速:1.363 4速:1.142 5速:0.956 6速:0.840
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター/トレール 25°30′/88mm
タイヤサイズ(前/後) 110/70-17M/C(54S)(チューブレス)/140/70-17M/C(66S)(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
乗車定員 2名
※【 】内はXSR125 ABS

※製造国 インドネシア