Lotus Emira 420 Sport

走り出した瞬間から420スポーツの虜に

最高出力421PS、最大トルク500Nmと強化されたAMG製2リッターターボエンジンと強固なシャシーが420スポーツの走りのキモだ。
最高出力421PS、最大トルク500Nmと強化されたAMG製2リッターターボエンジンと強固なシャシーが420スポーツの走りのキモだ。

いかにもイギリスの郊外らしいヘセル周辺のB級道路を走り出した直後から、私は「エミーラ420スポーツ」の虜になっていた。

まずはサスペンションの滑らかな動きが素晴らしい。路面からどんなに強い衝撃が加わっても、420スポーツの足まわりはその衝撃を柔軟に受けとめるとともに、タイヤをしなやかに路面に追従させて安定したロードホールディングを生み出す。しかも、従来のエミーラであればダンパーが対応しきれず、やや荒れた振動を伝えることもあった素早い振幅に対しても適切な減衰力を生み出し、シットリとした乗り味をもたらしてくれるのだ。その洗練された感触は既存のエミーラとは次元が異なるといってもいいくらいの差がある。

それにしてもエミーラで走る狭いワインディングロードは楽しい。なによりボディがコンパクトで視界も良好。おまけにボディの見切りもいいときているのだから、文句の付けどころがない。

しかも、ハンドリングは過敏にならない範囲でレスポンスがよく、リニアリティも良好。おかげで、どれだけ切ればどれくらいノーズが入っていくかが、走り始めた直後から直観的に把握できる。そしてもうひとつ大切なのが、例えオーバースピードでコーナーに突っ込もうが多少リヤが流れようが、「このクルマだったら確実に修正できる」という安心感というか自信を与えてくれる点。試乗当日、猛烈な勢いで飛ばすロータス関係者のあとを何の苦もなく追従できたのは、この軽快で信頼に足るハンドリングがあったからといっても過言ではなかろう。

チタン製エキゾーストが走りに効く!

蛇足ながら、この軽快でレスポンスがよく、にもかかわらず強い安心感が得られるハンドリングは、BEVの「エメヤ」でも同じように感じることができた。その理由を、かれこれ40年近くもロータスに勤務し、現在はディレクター・オブ・アトリビュート&プロダクト・インテグリティの重責を担うギャヴァン・カーショウに訊ねてみたところ、「大事なのはヨーセンターです」との答えが返ってきた。

「ロータスでは、ヨーセンターをドライバーの腰に近いところに設定している。これはエミーラでもエメヤでも同じです。そうすることでアジリティと安心感の両方を生み出せる。もしもヨーセンターがドライバーの腰から遠く離れていると、恐怖感を覚えたり、アジリティが低いと感じることでしょう」。車重が2.5t近いエメヤが、いかにもロータスらしい挙動を示すことを不思議に思っていた私にとって、これは納得のいく説明だった。

取材を進めると、420スポーツの乗り味が従来のエミーラとは段違いの洗練度を実現していたことにも明確な理由があった。サスペンションダンパーにマルチマチックのスプールバルブ・タイプを用いていたのである。

オレンジ✕ブラックの室内は非常にスポーティ

オプションで420スポーツのテーマカラー、タンジェロ・オレンジのインテリアも選択可能。カーボン製シフトパドルがスポーティな雰囲気を高める。
【2】

従来のダンパーが、シムと呼ばれる板バネ状のパーツを多数組み合わせて減衰力をコントロールしていたことは皆さんもご存じのはず。しかし、シムは耐久性に欠けるうえ、高い周波数域では狙いどおりの減衰力を発生しにくいという弱点があった。

一方のスプールバルブ・ダンパーは、側面にオリフィスを設けた円筒形の金属製パーツをコイルスプリングで支える構造を採用。ダンパーピストンの動きにあわせて円筒形パーツが上下すると、オイルの流量を規制するオリフィスの開口面積も変化し、これによって減衰力が調節される仕組みとなっている。結果としてスプールバルブ・ダンパーは耐久性に優れると同時に、高い周波数域でも設定どおりの減衰力を発生できるという特性を手に入れた。いずれも、私が420スポーツで感じた乗り味と見事に符合する。

今回はヘセルのテストコースでも420スポーツを試すチャンスがあったが、限界付近でもトリッキーな動きを示さず、安定した姿勢を保ったままテールスライド状態に持ち込めるそのハンドリングは、既存のエリーゼやエキシージといったモデルでは求め得なかったものだ。その理由についてテストドライバーと議論すると、彼は「ロングホイールベース化によってスタビリティが向上したからだろう」と答えたが、私が「リヤトレッドが広がったことで相対的に重心点が下がったことも関係しているのではないか?」と指摘すると、「それも影響していると思う」との答えが返ってきた。

圧倒的にコントローラブル!

0→100km/h加速3.9秒、最高速度300km/hを実現。ロータスは「最速の4気筒エンジン搭載モデル」と謳う。その真価は、圧倒的な完成度を誇るシャシーに宿る。価格は2000万円超が予想されている……。
0→100km/h加速3.9秒、最高速度300km/hを実現。ロータスは「最速の4気筒エンジン搭載モデル」と謳う。その真価は、圧倒的な完成度を誇るシャシーに宿る。価格は2000万円超が予想されている……。

メルセデスAMG製2.0リッターエンジンから最高出力421PSを絞り出すパワートレインは、ターボSE(最高出力は406PS)との明確な差こそ感じられなかったものの、過給圧を高く保つ走り方をすれば十分なパワーとレスポンスを発揮してくれるので、ワインディングロードやサーキットであれば不満を覚えることはないはず。ちなみに0-100km/h加速は3.9秒、最高速度は300km/hのエミーラ420スポーツを、ロータスは「最速の4気筒エンジン搭載モデル」と称している。

いずれにせよ、420スポーツの魅力はシャシーの圧倒的なクオリティ感にある。日本での価格は2000万円を軽く越えるだろうが、その価値は十分にあると思う。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OHTANI)
PHOTO/Lotus cars
MAGAZINE/GENROQ 2026年10月号

SPECIFICATIONS

ロータス エミーラ420スポーツ

ボディサイズ:全長4413 全幅1895 全高1230mm
ホイールベース:2570mm
車両重量:1455kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1991cc
最高出力:310kW(421PS)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/5000rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35ZR20 後295/30ZR20
最高速度:300km/h
0-100km/h加速:3.9秒

【問い合わせ】
ロータスコール
TEL 0120-371-222
https://www.lotus-cars.jp

「ロータスエミーラ」を「ターボ」と60万円高い「ターボSE」で悩む【どっちを買う?重箱の隅ツツキ隊:13】

クルマを購入する際、車種は絞れてもグレードは何を選ぶべきか……。最後まで悩んだ経験をお持ちの方も少なくないはずだ。車種によっては、メーカー(ブランド)が想定するユーザー層が、グレードの装備差に表れている場合もある。この連載ではグレード選びに迷った際の最終決断のポイントを示唆するものである。今回は、ロータスが最後の純ガソリンスポーツカーとして送り出した「エミーラ」を取り上げる。