800V電気システムが採用される可能性があり、新開発の「EMA」を使用する最初のモデルに
レンジローバーが開発を進めている新型「GT」のプロトタイプが、ドイツ・ニュルブルクリンク周辺に姿を現した。

今回注目すべきなのは、カモフラージュされたGTだけではない。その傍らにはBMWの新型「iX3」が確認されている。

入手した情報によると、このiX3は偶然居合わせた車両ではなく、JLR(ジャガー・ランドローバー)がGTの性能を比較するために用意したベンチマーク車だという。さらにアウディ「Q6 e-tron」も比較対象として持ち込まれていたようだ。
つまり、レンジローバーが新型GTで狙うポジションが、徐々に見えてきたことになる。

GTは、これまでのレンジローバーとは大きく異なるモデルだ。低く抑えられたルーフと流麗なシルエットを持ち、セダン、クロスオーバー、SUVの要素を融合したような独特のプロポーションを採用する。それでもJLRがiX3やQ6 e-tronを比較対象としているのであれば、単なるデザイン重視のクロスオーバーではなく、次世代プレミアムEV市場の中心を狙っている可能性が高い。
今回目撃されたプロトタイプは、以前確認された開発車両と同様、ブラウンとホワイトを組み合わせたデジタルカモフラージュに覆われている。ただし同じ個体ではない。フロントではブラウンのカモフラージュ部分が拡大され、ルーフのパターンも変更。サイドミラーにはカモフラージュがなく、ホイールも異なるスポークデザインとなっている。さらに、そのホイールには傷も確認できた。世界有数の高速コースであるニュルブルクリンクで、本格的な走行テストが進められていることをうかがわせる部分だ。
パワートレインもGTの重要なポイントとなる。プロトタイプにはエキゾーストパイプが確認できず、まずEVとして市場投入される計画だ。さらにJLRは、その後ハイブリッド仕様もラインナップする方針を示している。
EVには800V電気システムが採用される可能性があり、新開発の「EMA(Electric Modular Architecture)」を使用する最初のモデルになるとも伝えられている。800Vアーキテクチャーは高出力な急速充電を可能にするだけでなく、大出力を長時間扱う高性能EVにとって電力効率や熱マネージメントの面でも重要となる。
ここで興味深いのが、やはりBMW iX3との比較だ。新型iX3はBMWの次世代EV「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」を象徴するモデルであり、800Vシステムなど最新のEV技術を投入している。レンジローバーがGTの開発段階からiX3をベンチマークにしているのであれば、航続距離や充電性能だけではなく、動力性能やハンドリング、快適性まで含めて強く意識していると考えられる。
一方、GTにはレンジローバーならではの武器もある。これまで公開されたイメージでは、インテリアは4人乗りを基本とし、大型センターディスプレイとドライバー用デジタルディスプレイを配置。物理スイッチを抑えたミニマルな空間が描かれている。
さらにEVだけでなくハイブリッドを用意することになれば、充電環境などを理由にEVへの完全移行をためらう富裕層も取り込める。これはEV専用モデルとは異なる商品戦略となる。
レンジローバーといえば、これまでは高い車高と圧倒的な存在感、本格的な悪路走破性能を備えたラグジュアリーSUVが中心だった。しかしGTは、その伝統をそのまま受け継ぐモデルではない。低く流麗なボディ、800Vの次世代EV技術、そしてニュルブルクリンクで鍛えた走りを組み合わせることで、レンジローバーそのものの守備範囲を広げようとしている。BMW iX3やアウディQ6 e-tronを実際に比較対象としながら開発しているのであれば、新型GTはレンジローバーにとって単なる新モデル以上の存在になりそうだ。
プレミアムEV市場へレンジローバーがどのような答えを出すのか。その全貌が明らかになる日は近づいている。










