1975年式三菱ミニキャブELバン。ベンチレーターに「MINICAB」の文字がある。

2026年10月18日に千葉県千葉市で開催された「昭和レトロカーミート2026in蘇我」には乗用車ばかりでなく商用車も数多く参加していた。主催が旧車専門誌である『オールドタイマー』であり、同誌では商用車を扱うことが多いため商用車の参加が多かったのだろう。その中でも圧倒的に数が少ない三菱ミニキャブが2台も参加していたのには驚いた。

ホーロー看板なども趣味で集めているので一緒に展示していた。

1台はT130系トラックで、こちらはテレビ番組にも出演されたことがあるため比較的多くのファンが知っている個体。その隣には初代LT30系の最終モデルであるELバンが並んでいた。ナンバープレートが黄色いためサブロクには思えないかもしれないが、れっきとした空冷2気筒2ストロークエンジンを搭載する360cc車。年式が1975年で黄色ナンバーに移行した後のモデルなのだ。

バン用タイヤなのは当然にしても10インチのバイアスタイヤのまま維持している。

このLT系ミニキャブは非常に長寿モデルだったことでも知られる。発売は1966年であり、数度のマイナーチェンジを経て1976年まで作り続けられた。とはいえ、これはバンだけのことでトラックは1971年にモデルチェンジして2代目へ移行している。それだけバンよりトラックの需要が多かったのだろう。

シンプル極まりない運転席まわり。

10年も作り続けられたバンは1971年のマイナーチェンジで「ミニキャブELバン」を名乗るようになる。スタイルもフロントマスクが大きく変わり、初期モデルの面影は無くなった。それでも空冷エンジンを搭載し続けた。年代的には水冷エンジンも登場していたのだが、採用は見送られている。空冷エンジンのためもあるのだろう、LTミニキャブELバンは残存数が非常に少ない。見かけることすら稀な希少車のオーナーは53歳の長久晴夫さん。

メーターも必要最小限の情報しか得られない。

長久さんがミニキャブELバンを手に入れたのは2014年のこと。それより前にもサブロク時代のハイゼットなどを乗り継いできたが、どうしてもミニキャブELバンが欲しかったそうだ。というのもこのルックスに一目惚れしてしまい、探しに探しても見つからずエンジンだけ先に手に入れたほどの入れ込みようなのだ。ミニキャブを選んだ理由としては「三角窓が付いている」ことと「実用的に使えて便利」、さらに「空冷エンジンでシンプル」ということが決め手。

座布団で養生しているが、あまり切れていない運転席。

サブロク時代の軽トラックや軽バンを乗り継いでいるのは、4輪だけでなくソフトバイクも趣味で多数集めているから。小さなサブロクながら排気量の小さなバイクであれば積み込むことは可能だから、自走できないバイクでも直接引き取りに行ける。さらには遠方へツーリングする機会も多く、広い荷室を備えるため車中泊にも使っているそうだ。

リヤシートを折りたたんであるので広い荷室。

多趣味な長久さんは2輪4輪のほか釣りも楽しまれている。釣りに出かけるのもミニキャブが活躍するそうで、確かに現地へ着いて車中泊で朝を迎えれば朝まずめも楽しめる。さらには腐りかけた廃車を見るため、時に長野県までツーリングへ出かけたこともあるそう。『オールドタイマー』には名物企画として「廃車体街道を行く」というコーナーがある。文字通り廃車体を見るために遠方まで取材に出向くのだ。それを個人でも楽しんでいるのが長久さんなのだ。

ルーフの補強フレームにスピーカーをむき出しで固定してある。

さらにはDIYにも興じているとか。ミニキャブや多数あるソフトバイクの置き場として、自らガレージを建ててしまったそうだ。さらには3代目ミニカの後期モデルであるミニカ5まで所有されている。軽自動車規格が変わり排気量が550ccまでに拡大されたことに対応して471ccまで排気量を拡大したモデルだ。これら趣味の乗り物を収納するガレージを手作りしてしまうのだから、まさに趣味人の極みと言えるだろう。

2016年に憧れの地である北海道へ息子さんたちと向かった。

長距離ツーリングも辞さない長久さんだが、圧巻なのが北海道まで制覇したこと。しかも幼い息子さんたちを連れて最北端にある宗谷岬まで走っている。これだけ長距離を走るにはクルマの状態も大事。エンジンが不調になったことも経験したことから、大抵の修理や調整は自分で行うようになった。それもこれもDIY好きの一環なのだろう。充実したDIYライフを楽しんでいる長久さんなのだ。