【うっかり800kmインプレ】カワサキVERSYS 1000 SEは電子制御&ハイテク機能が満載。これは実にいいツアラーだ。

2019年1月に国内発売されたアドベンチャースタイルのツーリングモデル。先進の電子制御技術が積極導入されたことでも注目された。SEには電子制御サスペンション(KECS)も搭載。LEDコーナリングライトや、傷を自己修復する特殊コーティング塗装が施されるなど、上質な仕上がりを誇っている。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

※2019年08月08日に掲載した記事を再編集したものです。
価格や諸元、カラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
カワサキVERSYS 1000 SE
※パニアケースはオプションです

カワサキ VERSYS 1000 SE ……1,868,400円

カワサキVERSYS 1000 SE
エメラルドブレイズドグリーン×パールストームグレー

 カワサキのツアラーを代表するモデルがこれ。Z1000のエンジンを搭載する1043ccモデルの中で、最も高価なモデルだ。同社フルバリエーションの中でもH2やZX-10 系に次ぐ高価格車。ちなみに今回の試乗車はオプションのアクセサリーが多く装着されており、トータル価格は約220万円である。

 ブルートゥースでスマホと連携できるRIDEOLOGY アプリにも対応。スロットルバイワイヤーによる、いわゆる電子スロットル方式を採用。サスペンションも電子制御式等、カワサキが持つ先進電子制御技術の導入でもリーディングモデルなのである。

 パワーユニットやフレーム等の基本部分はZ1000やNinja1000と共通する。ツアラーとしての仕上がりは一級のレベルにある。ちなみに既報のNinja1000もパニアケース等、純正アクセサリーが豊富にオプション設定されているが、パニアケースとトップケースとの併用はできない。しかしヴェルシス1000SEでは同時装着が可能。つまり左右パニアケースとトップケースのトータルで103Lもの積載スペースを誇る。

 開発に掲げられたキーワードは「Any-Road Any-Time」。 「どんな道でも、どんな時でも」がコンセプト。見るからに大きく堂々たるフォルムはアドベンチャーツアラー的なセンスも感じられるが、前後ホイールサイズは17インチ。しかしホイールベースはZ1000やNinja1000より80mmも長い1520mmもある。もちろんフロントのジオメトリーも専用設計されて、キャスターを寝かせ、トレールも長め。リヤタイヤも少し細めに設定された。

 ステアリングの切れ角もZ1000やNinja1000より大きい34度を確保。最小回転半径も3mと小さくなっている。そしてギヤリングも専用設定され燃料性能も高い。同社最大の21Lガソリンタンクと相まってロングツアラーに相応しい作り込みが徹底されているのである。

遠路を厭わない快適性が魅力

 大きく立派な車体に跨がると、自然と背筋が伸びる見晴らしの良いライディングポジションになる。シート高も高め、荷物を満載すれば280kg を超える車重もあって、普段からバイクに乗り慣れた筆者でも扱いは慎重になる。ただ手にするハンドルの位置が高く幅も広いので車体の引き起しや押し歩き時の操舵等は意外と軽く扱えた。
 
 両足の踵が浮いた状態なので、跨がったままバックするのは少々辛い。舗装路の平地なら何とかなるが、足場が悪かったり傾斜があるとバイクから降りて押すことになるので、バックギヤが欲しいと思う場面もあった。

 立ちゴケ等の失敗をしないように、大きなバイクを扱うには独特の緊張感が伴うものだが、特にパニアケースやトップケース搭載ではなおさら慎重になる。しかし、クラッチをミートし車輪が回転し始めると、それまでの緊張感が嘘のようにスゥーと解消されてしまう。
 操舵フィーリングの軽快さも好影響しているのだろうが極めて素直な操縦性と優しい感触の出力特性がライダーの気持ちを“ホッ”とさせてくれるからである。
 
 DOHC16バルブ水冷直(並)列4気筒エンジンは9000rpmで120psを発揮する。燃焼室等はオリジナルの設計でZ1000やNinja1000と比較すると圧縮比が11.8:1から10.3:1へと下げられピークパワーも抑えられた。車重は重いので、厳密に言うとその動力性能も少しばかり控えめな設定なのだ。しかしながらオーバー1000ccのビッグバイクである。実質的なパフォーマンスはまるで不足はないし、むしろ実用域での扱いやすさは増している。
 
 いつでも思い通りの加速力を発揮し、ブレーキパッドにメタル成分が多い様に感じられる強力な制動力&効き味の良さとが相まり、あらゆる交通環境下で常に安全な居場所へ移動しながらスピーディーかつ快適にクルージングできる。少し寝かされたキャスターやロングホイールベースも絶妙な直進安定性を発揮。ウインドプロテクションや快適なシートも含め、ストレスを感じさせない気持ちの良い総合性能が優秀である。
 
 市街地や峠道でも感心させられたのは、爪を隠すかの様に、いかにもジェントルなスロットルレスポンスを発揮するところ。決してレスポンスが鈍いのではなく、あくまで優しい立ち上がりに始まり強烈な加速力へとスムーズに繋がって行くところに大人びた心地よい雰囲気を覚えるのだ。   
 
 今回の試乗では、500km程度を予定した日帰りツーリングに出かけたが、その快適さ故、思わず距離が伸びて実走行は800km。撮影等を含めると900kmを超える試乗になってしまった。燃費計測の都合で3回給油したが、ツーリングのみなら満タンスタートで帰路前に1回の給油でも事足りる。

 トータル燃費率は21.3km/L。高速道路を速い流れに乗って19.5km/L、普通の流れでは21.8km/Lだった。ちなみにローギヤで5000rpm 回した時の速度は47km/h。トップ100km/hクルージング時のエンジン回転数は3900rpmだった。
 
 シートの座り心地も快適で2時間、あるいは連続200km走行も難なくこなせる。全てに大人の余裕を感じさせてくれる乗り味は、泊まり掛けのロングツーリングにも魅力的である。

足つきチェック(ライダー身長170cm/52cm)

シート高は820mm。ご覧の通り両足の踵は大きく浮いた状態になる。平地ならこのままバックも可能だが、地面をしっかりと押すには心もとない状態。一旦バイクを降りて押した方がスムーズに扱えるが、車体は大きく重く、パニアケースもあるので、乗降動作は慎重になる。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…