1000kmたっぷり走った上で、Z900RS SEの細部をじっくり解説してみる|1000kmガチ試乗3/3・カワサキ

純正アクセサリーパーツのハイシートとグラブバーを装着したら、ほとんど非の打ちどころはナシ? いや、それはちょっと言い過ぎのような気がするが、上級仕様のSEは手放しで絶賛したくなるほど、完成度が高いバイクだったのだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

カワサキZ900RS SE……1.650.000円

3.50×17・5.50×17のキャストホイールは、昔ながらのワイヤスポークタイプを思わせる構成。弟分に当たるZ650RSも同じデザインを踏襲している。

■ライディングポジション ★★★★☆

開発ベースのZ900を含めた現代のスポーツネイキッドと比較すると、ハンドルはかなりのアップタイプで、上半身はビシッと直立。昨今のビッグバイクの日本仕様はローシートが標準というケースが増えていて、そういうモデルはシート~ステップの距離が短く、下半身に窮屈さを感じることが珍しくないものの、ステップが現代の基準で考えると前方/下方に設置されているからだろうか、Z900RSの場合は極端な違和感はなかった。SEの公称シート高はノーマル+10mmの810mmだが、足つき性はノーマルとほとんど同じ。

Z900RSとSEで両足がベッタリ地面に接地するには、170cm以上の身長が必要。ただしインターネットで調べてみると、160cm前後のライダーでも何とかなっているケースが多いようだ。ちなみに身長が182cmで、ロングランで尻に痛みを感じた僕は、ウレタン厚が+35mmのハイシートに興味津々なのだが、もし日本仕様が海外仕様と同じハイシートを標準装備していたら、このバイクの人気は現状ほど高くなかった……ような気がしないでもない。

■タンデムライディング ★★★★☆

タンデムライディングはなかなか快適で、ソロと大差ない感覚で走れた。以下はタンデムライダーを務めた富樫カメラマンの言葉。「グラブバーを装備していなくて、後部座席の面積が大きくは見えないから、正直言ってあまり期待していなかったんだけど、座り心地、乗り心地は意外に良好で、加減速で身体が揺すられる感も少な目。グラブバーを付けたら、ロングツーリングに普通に使えるんじゃないかな。あえて問題点を挙げるなら、メインのライダーより後ろに座っているぶん、排気音の大きさが気になるかもね」 なお純正アクセサリーパーツのグラブバーは1万8480円で、グラブバーほど存在感が大きくないサイドグリップは、左右セットで1万5400円。

■取り回し ★★★★☆

大アップハンドルの効果で、一般的なリッターネイキッドと比べると取り回しは楽々。一昔前の倒立フォークを採用したネイキッドは、思ったより小回りが利かないことが多かったけれど、Z900RSではそういう場面に遭遇しなかった。ただしハンドル切れ角は、かつてのゼファー1100やZRX1200ダエグより3度少ない左右35度。ちなみに、現行Z1000は29度で、Z900は33度。

■ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

テーパータイプのスチール製アップハンドルは、幅がかなり広い約850mmで、絞り角は少なめ。個人的には絶妙な形状だと思うものの、アフターマーケット市場では低めや狭め、絞り角が多めのハンドルが数多く販売されている。速度/回転計は往年のZ1/2シリーズを彷彿とさせる指針式で、多機能液晶パネルの上部には、イモビライザー作動時の点滅に加えて、水温/油圧/バッテリーの異常時に点灯する、赤色警告インジケーターを設置。

■左右スイッチ/レバー ★★★☆☆

左右スイッチボックスはオーソドックスな構成。多機能液晶パネルに表示する内容の切り替えと調整&リセット、トラクションコントロールの設定変更は、すべて左側に設置されたマルチファンクションボタンで行える。

ブレンボ製フロントキャリパーの採用に合わせて、ニッシン製ラジアルマスターはピストン径を19.1→17.5mmに変更。レバーの調整段数は、ブレーキ:6、クラッチ:5。なお試乗車は市販のドライブレコーダーを装着。

■燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

ルックスは旧車的なZ900RSだが、コーナリング中にアウト側の内足がピタッとフィットする燃料タンク+サイドカバーには、現代のスーパースポーツと同じ思想が感じられる。ローシートはかつてのZ1/2シリーズ用をアンコ抜きしたかのような形状で、コレはコレで悪くないものの、純正アクセサリーのハイシート:2万5410円に交換すれば、快適性に加えて軽快感も向上しそうである。

前述したように、ステップ位置は現代のスポーツネイキッドの基準で考えると前方/下方。峠道を熱くなって走っているときは、全体をもう少し後方/上方に移動して、バーを固定式&ラバー無しにしたくなったが、さまざまな場面を走るツーリングでは、現状の構成がひとつの正解だと思う。なおヒールプレートのホールド感はなかなか良好だった。

■積載性 ★★★★☆

近年のネオクラシック/スポーツネイキッドでは省略されることが多いものの、Z900RSシリーズはかつてのカワサキの慣例に従い、片側2カ所ずつの荷掛けフック/ボルトを設置。もっとも筆者の私物であるタナックスのWデッキシートバッグを載せてみたら、後方1/4くらいがテールカウル上にハミ出してしまったが(キズ防止のためにウエスを挟んだ)、この部分に対するカワサキのこだわりに、好感を抱くライダーは少なくないだろう。

■ブレーキ ★★★★★

ノーマルとは異なる特別装備として、SEはブレンボ製フロントブレーキキャリパー/パッド/φ300mmディスク、ステンレスメッシュホースを採用。利き方にちょっと唐突感があったノーマルと比べると、コントロール性が格段に良好になっている。一方のリアブレーキはノーマルと同じφ250mmディスク+ニッシン片押し式1ピストンだが、こちらはもともと非常に扱いやすかった。

■サスペンション ★★★★★

リモート式プリロードアジャスターを装備するリアショックはオーリンズS46で、同社のロゴが入ったガードプレートもSEならではの装備。KYB製φ41mm倒立式フォークは一部のパーツと寸法をノーマルと共有しているが、スプリングとダンパー、ブレンボキャリパーに適合するボトムピースは専用設計。前後とも動きはしっとりとしていて、峠道を飛ばしたときも田舎道を淡々と流しているときも、ノーマルとは一線を画する上質さが堪能できた。

■車載工具 ★★☆☆☆

シート裏面に備わる車載工具は、14×17mmの両口スパナ、6nmのL型六角棒レンチ、差し替え式ドライバーの3点のみ。ちなみに、内容はZ900RSのノーマルもまったく同じで、リアショックのプリロード調整で使用するフックレンチは備わっていない。

■燃費 ★★★★☆

約1000kmを走っての平均燃費は、近年の大排気量並列4気筒車では良好な部類の22.0.km/ℓ。ガソリンタンク容量は17ℓだから、かなり早めに始まる燃料計の点滅を気にしなければ(オーナーズマニュアルには残量が約3.9ℓになった時点でと記されているが、試乗車は6~7ℓあたりで点滅が始まる印象だった)無給油で300kmは余裕で走れそうである。ちなみに過去にガチ1000kmで取り上げたカワサキ並列4気筒車の燃費は、ZX-25R:21.5km/ℓ、ZX-10RR:16.4km/ℓ。

テールカウル&ランプは往年のZ1/2に通じる構成なのだが、樹脂製のリアフェンダーはなぜか現代的なデザイン。いわゆるZ1/2スタイルでありながら、基部に防振用のラバーを備え、ステーを長めに設定したバックミラーは、後方視界が素晴らしく良好。

 

主要諸元

車名:Z900RS SE
型式:8BL-ZR900N
全長×全幅×全高:2100mm×865mm×1150mm
軸間距離:1470mm
最低地上高:130mm
シート高:810mm
キャスター/トレール:25°/98mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:948cc
内径×行程:73.4mm×56.0mm
圧縮比:10.8
最高出力:82kW(111PS)/8500rpm
最大トルク:98N・m(10kgf・m)/6500rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2,916
 2速:2.058
 3速:1.650
 4速:1.409
 5速:1.222
 6速:0.966
1・2次減速比:1.672・2.800
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:180/55ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:215kg
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
燃料タンク容量:17L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:28.5km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:20km/L(1名乗車時)

著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…