フル電動福祉車両「eヴィータ コンセプト」が登場

車いすユーザーが求めるフル電動福祉車両「eヴィータ コンセプト」がデビュー「イアン・カラムがデザイン」【動画】

イアン・カラムが立ち上げた「カラム」と、英国において福祉車両を販売する「モタビリティ・オペレーションズ」が共同開発した、フル電動車いすスロープ車両「eヴィータ コンセプト」を発表した。
イアン・カラムが立ち上げた「カラム」と、英国において福祉車両を販売する「モタビリティ・オペレーションズ」が共同開発した、フル電動車いすスロープ車両「eヴィータ コンセプト」を発表した。
フォードやジャガーでデザイナーとして活躍したイアン・カラムが立ち上げたデザインコンサルタント「カラム(CALLUM)」は、多用途EVコンセプト「eヴィータ(eVITA)」を公開した。eVITAは、福祉車両を開発する企業「モタビリティ・オペレーションズ(Motability Operations)」との共同プロジェクトであり、車いす使用者を想定して設計されている。

eVITA Concept

次世代福祉車両を提案

カラムとモタビリティ・オペレーションズが共同開発した「eヴィータ コンセプト」のインテリア。
車いすユーザーのニーズに対応すべく、カラムとモタビリティ・オペレーションズが共同で、多用途EVコンセプト「eヴィータ」を開発。車いすユーザーが求める多くの装備や機能が搭載されている。

デザインコンサルタントのカラムと、英国において福祉車両を展開するモタビリティ・オペレーションズは、次世代フル電動車いすスロープ車(eWAV)「eヴィータ」を発表した。カラムが設計・デザインしたeヴィータは、社会が電動化に舵を切るなか、車いすユーザーのニーズに対応する。

フル電動パワートレインを搭載するeヴィータは、障害を持ったカスタマーの意見を採り入れながら、インクルーシブ(障害や人種、性別の違いを尊重する社会)デザインの原則に基づいて開発。eヴィータを活用し、様々な実証テストを行うことで、モタビリティ・オペレーションズは自動車業界と協力し、電動化の時代に車いす利用者が取り残されないよう、働きかけを続けていくという。

モタビリティ・オペレーションズは、75万人もの障害者とその家族に移動手段を提供し、自立したモビリティの利用を支援する営利企業。顧客の多くがEVへの移行に伴い、直面する様々な課題を浮き彫りにすることで、解決策を見いだそうとしている。

電動車いすスロープ車両が抱える課題

カラムとモタビリティ・オペレーションズが共同開発した「eヴィータ コンセプト」のエクステリア。
多くのEVがフロア下部にバッテリーを搭載しており、車いすに乗ったまま車内に搭載できるだけの室内高を確保するのが困難になっている。

現在、英国では3万4000台以上の車いすスロープ車両(WAV)が稼働中であり、中小型WAVには毎年約4000台の需要が存在している。ただ、WAVの電動化に関しては、多くのEVがバッテリーをフロア下部に搭載していることから、車内の高さやスペースが狭くなり、積載量も制限されてしまう。

このまま解決策がなければ、車いすを利用する顧客がEVに乗り換える際、必要以上に大きな車両を選ぶことを迫られる可能性があるという。モタビリティ・オペレーションズのアンドリュー・ミラーCEOは、今回の取り組みについて次のように説明を加えた。

「EVへの移行はすべての人にとって利用しやすいものでなければ、うまくいきません。私たちは英国において最大規模のWAVの提供し、自立のために自動車を頼りにしている障害者のカスタマーを75万人も抱えています」

「私たちのカスタマーはごくごく一般的な人々です、 そして、私たちはEVを所有することが、すべての人にとってどのような課題を突きつけるのか、実体験に基づいて理解しています。解決策と公平なEV車への切り替えがなければ、何千人もの人々が取り残される可能性があるのです」

「車いすのまま乗れる車両を使用しているカスタマーにとって、小型EVに移行するための手頃な解決策がないことが、最も差し迫った問題です。私たちは前進する方法を見つけようと決意しました。そして、本当にアクセシビリティと包括性をデザインの中心に据えた『eヴィータ コンセプト』をカラムとともに開発し、何が可能なのか、実証できたことを、心から嬉しく思っています」

バッテリーの搭載位置を前席後方に変更

カラムとモタビリティ・オペレーションズが共同開発した「eヴィータ コンセプト」の車椅子用専用装備。
eヴィータは、従来のEVではフロア下部に並べられているバッテリーパックのレイアウトを変更。フロントシート後方の床下に配置することで、車両のテールゲートと最前列の間のフロアを完全にフラット化した。

イアン・カラムが監督し、デザイン責任者のアレック・ジョーンズが率いるカラムのデザインチームは、モタビリティ・オペレーションズのカスタマーの要望に応え、eヴィータをデザインした。

ディメンジョンは全長4520mm、全幅1908mm、全高1800mm、ホイールベース2980mm。エクステリアは大胆で印象的なMPVのシルエットを持ち、フラットなルーフラインは車いすユーザーの乗りやすさが優先された。ボクシーなフォルムは、リヤのテールゲートから乗り込む車いすユーザーに、適切なヘッドルームを提供する。

カルムのエンジニアリングチームは、バッテリーを再パッケージ化し、内部コンポーネントを変更。再設計されたバッテリーパックをフロントシート後方の床下に配置することで、テールゲートから最前列間のフロアを完全にフラット化。これにより、車いすはスロープのあるエントランスから車内へとスムーズに移動することが可能になった。

車高はミニバン並みの1600mmを実現し、乗降のしやすさと、ヘッドルームの拡大に貢献。車いすユーザーのキャビン内における着座位置も改善され、他のパッセンジャーと同じような高さに座ることが可能になった。eヴィータは2基の充電ポートを備えており、ひとつはリヤサイドに、もうひとつはフロントに設置。50kWh容量のバッテリーを搭載し、航続距離は約200マイル(約320km)を見込んでいる。

eヴィータが完成したことを植えて、イアン・カラムは次のようにコメントした。

「現在発売されているEVの多くは、車いすユーザーが必要とする機能性と柔軟性を備えていません。自動車メーカーの開発陣は、WAVユーザーや身体障害者がEVへの移行において、忘れ去られることがないよう、事前に計画を立て、インクルーシブデザインの原則を取り入れる必要があります。eヴィータはデザインと機能性が並行して開発されたため、実用的かつスタイリッシュな、ユーザーフレンドリーなEVになりました」

「eヴィータ コンセプト」を動画でチェック!

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…