60年にわたり進化をつづけてきた「ポルシェ 911」のパワーユニット

「ポルシェ 911」がついにハイブリッドを導入「歴代水平対向エンジンの進化を振り返る」

1963年のデビュー後、常に最新技術を導入しながらも、「水平対向・リヤエンジン」というコンセプトを維持し続けてきたポルシェ 911。2024年、ついにハイブリッド技術が導入される。
1963年のデビュー後、常に最新技術を導入しながらも、「水平対向・リヤエンジン」というコンセプトを維持し続けてきたポルシェ 911。2024年、ついにハイブリッド技術が導入される。
ポルシェ 911に搭載されるエンジンは、過去60年の間に大きく進化を果たした。ボクサー6の排気量は拡大し、今では4倍ものパワーを発揮するようになった。時代に沿った変化を受け入れつつも、基本コンセプトを維持し続けてきた911が、今年ついにハイブリッドパワートレインを導入する。

Porsche 911 

実用に適したターボの導入

1975年、ポルシェはモータースポーツにおいて大成功を収めていたターボチャージャーを911に導入。3.0リッター水平対向ターボは、最高出力260PSを発揮した。
1975年、ポルシェはモータースポーツにおいて大成功を収めていたターボチャージャーを911に導入。3.0リッター水平対向ターボは、最高出力260PSを発揮した。

1963年、ポルシェはフランクフルト・モーターショーにおいて、356の後継モデルとなる新型スポーツカー「901」、のちの「911」をワールドプレミアした。この901は、ポルシェ初の2.0リッター水平対向6気筒エンジンをリヤに搭載。最高出力130PSを発揮し、最高速度は210km/hに達している。そして、その後60年間、水平対向エンジンをリヤに搭載するレイアウトは、脈々と受け継がれてきた。

911の各世代は、駆動技術において新たなマイルストーンを打ち立てている。1970年代初頭、ポルシェはターボチャージャーによるパワーアップをモータースポーツへと導入し、大きな成功を収めた。このテクノロジーは1974年に量産車への搭載が可能となり、 911ターボ(930)を発表。最高出力260PSを誇る911 ターボは、当時最速のスポーツカーのひとつとなる。

911 ターボは排気側の制御バルブでブースト圧を調整することでターボラグを抑え、パワーデリバリーを穏やかにし、日常域での使用を可能にした。ターボチャージャーとフューエルインジェクションを組み合わせたことで、911 ターボは当初からアメリカの厳しい排ガス規制もクリアしている。

空冷から液冷へのパラダイムシフト

1997年にデビューした996型は、それまでの空冷から液冷に変更。多くの911ファンからの反発もあったが、空冷2バルブにこれ以上開発の余地はなかったという。
1997年にデビューした996型は、それまでの空冷から液冷に変更。多くの911ファンからの反発もあったが、空冷2バルブにこれ以上開発の余地はなかったという。

1995年に導入された993型911 ターボは、空冷水平対向6気筒エンジンの頂点に立つパワーユニットであり、911シリーズにツインターボ時代をもたらした。3気筒の各バンク近くに配置された2基の小型ターボチャージャーは、従来のシングルターボよりも、アクセルのあらゆる動きに素早く反応することができた。

この高性能エンジンは最高出力408PSを発揮し、初めて400PSの大台を突破。ポルシェは排気ガス対策も進めており、1995年当時、世界で最も低排出ガスな市販エンジンとなった。

その2年後、エンジニアたちはエンジン開発における次なるマイルストーンを達成する。排気性能の質をさらに向上させるため、4バルブ・シリンダーヘッドを量産化したのだ。それは水平対向6気筒ボクサーユニットを、空冷から水冷に変えるというパラダイムシフトだった。

空冷エンジンの廃止は一部の熱心な911ファンの怒りを招くことになるが、それもすぐに沈静化。996型911は大成功を収め、排ガス、サウンド、燃費の面で大きな進化をもたらすことになる。

2001年から2018年まで、911のモデルラインのチーフエンジニアを担当したアウグスト・アハライトナーは「空冷から液冷への変更は、新技術へのチケットとなりました。空冷2バルブエンジンにはもう可能性がなかったのです」と振り返る。

今回著者が手に入れたのは2001年型「ポルシェ911ターボ」。996のティプトロで、価格はなんと450万円である。

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VTGターボチャージャーの導入

2006年、997型911 ターボに導入された「可変タービンジオメトリー」は、パワーアップだけでなく、レスポンスを劇的に進化させることになった。
2006年、997型911 ターボに導入された「可変タービンジオメトリー」は、パワーアップだけでなく、レスポンスを劇的に進化させることになった。

2006年、997型911 ターボは、従来型からパワーとトルクを10%以上向上させ、出力比は排気量1リッター当たり98kW(133PS)にまで達した。特にレスポンスに関しては、新開発のターボチャージャーテクノロジーによって劇的に向上している。

997型911 ターボは内燃機関としては世界初となる「可変タービンジオメトリー(VTG)」を導入。高温に極めて強い高合金ニッケル系材料の進化によって、市販車に求められる耐用年数を備えたVTGターボチャージャーの製造が可能になった。この技術により、ターボ過給のためにあらゆる速度において排気流全体を最適に利用することができるようになった。

2019年から2022年まで、911と718のモデルラインを率いたフランク-シュテフェン・ヴァリザーは、この新技術導入について次のように指摘する。

「この画期的な成果によって、ポルシェはターボテクノロジーにおけるパイオニアとして、改めて存在感を強めることになりました。VTGターボチャージャーのおかげで、水平対向6気筒ターボは911 GT2 RSで最高主力515kW(700PS)という劇的なパワーアップを達成したのです」

2024年ベールを脱ぐハイブリッド911

911に導入されるハイブリッドパワートレインは、排ガス規制や省燃費を実現しながらも、スポーツ性能を極めた存在になる。
911に導入されるハイブリッドパワートレインは、排ガス規制や省燃費を実現しながらも、スポーツ性能を極めた存在になる。

2024年、ポルシェは911のために、世界耐久選手権(WEC)で導入されているような、スポーツ性能を極めたハイブリッドパワートレインを開発した。現在、911と718のモデルラインを統括するフランク・モーザーは、デビューが迫りつつあるハイブリッド911について、次のように予告する。

「高性能ハイブリッドパワートレインは、これまで911に搭載されてきたパワーユニットの延長線上にあります。そして、その開発はこれからも続いていくのです。ハイブリッド911は、加速するたびにドライバーにメリットをもたらすでしょう。さらに将来の排ガス規制にも対応できる技術も導入されています」

6番手からスタートしたトヨタ・ガズーレーシングのGR010 HYBRID 7号車が逆転で、今シーズン初勝利を飾った。2位と3位にはポルシェが入っている。

イモラ6時間で「ポルシェ 963」2台が表彰台フィニッシュしランキングトップを堅守【動画】

4月21日、イタリアのイモラ・サーキットにおいて、FIA世界耐久選手権(WEC)第2戦「イモラ6時間レース」の決勝が行われ、トヨタ・ガズーレーシングのGR010 HYBRID 7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース)が逆転勝利を飾った。2位にはポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのポルシェ 963 6号車、3位にはポルシェ 963 5号車が入った。この結果、ポルシェがマニュファクチャラーズ選手権トップの座をキープしている。

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