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RAPIDE / RAPIDE S(2009-2019)
ほぼ忠実にコンセプトモデルを再現
これまでアストンマーティンでは1961年の「ラゴンダ・ラピード」以降、細々とではあるが4ドアモデルを送り出してきた。その系譜は1974年から1990年に作られたラゴンダを最後に一旦途絶えることとなったが、2006年1月のデトロイト・ショーで突如復活を果たすこととなる。
それが「ラピード・コンセプト」だ。ホイールベースを2990mmに延長したVHアーキテクチャーに架装された「DB9」をストレッチしたようなファストバッククーペボディは、マレク・ライヒマンの手になるもので、スワンウイングドア、スイッチひとつで透明にも半透明にもできるポリカーボネート製のルーフ、カーボンセラミックブレーキ、LEDヘッドランプ、ジャガー・ルクルト製の時計を埋め込んだインパネなど、興味深いアプローチが多く盛り込まれていた。
その後、生産型となる「ラピード」を2009年のフランクフルト・ショーで披露。さすがにまだLEDヘッドランプは実用化できなかった(テールライトには片側360個のLEDを使用)ものの、それ以外はコンセプトをほぼ忠実に再現しており、そのボディは全長5019mm、全幅1929mm、全高1340mmでDB9より300mm長く、70mm高くなった。またハッチバック式のリヤゲートを持つラゲッジルームは、可倒式のシートを採用することで最大886Lと、アストンマーティン史上最大の荷室容量を実現していた。
サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンで、アダプティブダンピングシステム、ダイナミックスタビリティコントロールといった電子デバイスも装備。また20インチサイズのタイヤには専用設計のブリヂストン・ポテンザS001が採用されたことも話題となった。
2013年にマイチェンモデルとして「ラピードS」発表
エンジンはDB9譲りの5.9リッターV12DOHCで最高出力470PS、最大トルク600Nmを発生し、ギヤボックスにはZF製6速AT“タッチトロニック2”を搭載。車両重量は1950kgながら、その最高速度は303km/h、0-100km/h加速は5.3秒と、当時のスポーツサルーンの中でも出色のパフォーマンスを示した。
生産は本社ゲイドン工場ではなく提携を結んだオーストリアのマグナ シュタイヤーのグラーツ工場で行われ、2010年4月からデリバリーが開始された。グラーツでは年間2000台の生産が可能とアナウンスされていたが、実際には予定数を上回ることなく2012年に提携を解消。2012年秋からゲイドンに生産ラインが移されたものの、2013年初頭にその生産、販売は中止された。
そして2013年、初のマイナーチェンジモデルというべき「ラピードS」が発表された。これは新しいDB9やヴァンキッシュと同じ第4世代のVHアーキテクチャーをベースに、558PSへとチューンされた5.9リッターV12ユニットを搭載したもので、その搭載位置も歩行者保護と、ハンドリングの向上を図って約20mm低められている。
それにあわせてフロントグリルの形状も変更され、冷却効果が改善されたほか、従来より11%の軽量化を果たした新デザインの20インチ鍛造アルミホイールが採用されたのもトピックと言えた。
2019年にフル電動モデルが予定されるも
その後2015年モデルでは、ギヤボックスにZF製タッチトロニック3(8速AT)を新たに採用。5.9リッターV12はボッシュの新しいマネジメントシステムにより若干のパワーアップが図られるとともに排出ガスの削減と燃費の改善も図られている。
さらに2017年にはアストンマーティンのスポーツブランドとして創設されたAMR初のモデルとして「ラピードAMR」を発表。これはスポーティーなデザインのグリル、フロントスプリッター、サイドスカート、トランクリッド、そして専用デザインの21インチホイール、カーボンファイバー製シート、センターコンソールなどを奢ったボディに、600PSを発生する5.9リッターV12を搭載したもので、最高速度は336km/hを記録するに至った。
その一方で、来るべき電動化の時代に向けBEVのラピードEの開発が2015年から進められ、2019年からの販売が予定されていたが、2020年にプロジェクトは中止。それとともにラピード自身の生産も中止されてしまった。