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いつでも携行したくなる手のひらサイズ一眼
LUMIX S9は出会った瞬間から旅に持ち出したくなるカメラだ。パナソニックがライカ、シグマと提携して生み出したLマウントシステムは、各社が提供する様々なスペック、性能、そして味のあるレンズを活用できるフルサイズのミラーレスカメラシステムとして好評だが、LUMIX S9がユニークなのは手に取った瞬間に気づくはず。伝統的なレンジファインダーカメラへのオマージュを感じる洗練されたデザインや486gのボディは従来のフルサイズカメラへのイメージを覆すに十分なインパクトだ。このスタイリッシュで威圧感のないボディは、旅行先でも特異な空気を醸し出すことなく、自然に街に溶け込めるはず。
画質面では“最新のフルサイズCMOS”だから、誰にでも安心できる基礎体力を持つが、LUMIX S5IIと同じ25.28メガピクセルセンサーはRAWでの14ビット記録、高感度と通常感度時の画質を両立するデュアルネイティブISOが、幅広いシーンで美しい写真を保証する。
プロ向けの映画用カメラでの経験値が高いパナソニックだけに動画機能も充実している。動画記録でも評価が高かったS5IIの特徴は引き継ぎ、4K/60p記録にはもちろん、10ビット4:2:2の高品質な映像を内部記録できる。1カットあたり15分と動画撮影の保証時間が短いものの、5.8K/30pやアナモフィック6K/30pにも対応しているので、ちょっとした映像作家気分が味わえる。
LUT機能を使えば気分はフォトグラファー
筆者が気に入ったのはなんといっても、使いやすいLUT(Look Up Table)機能だ。LUTとは色やコントラストを一気に変換できる「色変換テーブル」のこと。
実はパナソニックはシネマトグラファー(映画の撮影監督)との協業経験が豊富で、色や明暗の表現で映像全体の雰囲気を引き出す機能を得意としてきた。LUT機能はそんなパナソニックの経験を引き出すもので、スマホ上でLUXを編集した上で39種類をカメラに登録し、撮影時にリアルタイムに適用できる。使用するとわかるが、自分だけのスタイルを追い込み、雰囲気ごとに切り替えて表現手法のひとつとして完全に使いこなすことができる。LUTの強さを0~100%で調整したり、2つのLUTを組み合わせるといったことも可能だ。
2種類のレンズキットを用意
ところで組み合わせるレンズはLマウントの多様な製品を使えるが、実は未発売の期待作がある。キットレンズの「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」は、その描写力やAPS-Cサイズにクロップした場合も含めた焦点距離も魅力だが、実はこの秋に「LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3」という超コンパクトなレンズの発売が予定されている。本記事でも紹介している、ボディキャップのように使えるマニュアルフォーカスの「LUMIX S 26mm F8」も似合うが、上記の新レンズが登場したらさらにS9の魅力は高まるはず。
少しばかりレンズが暗くても気にしなくていい。5軸5段のボディ内手ブレ補正の効果は極めて高い。この小さな1台が、私たちの創造性をどこまで引き出してくれるのか。その可能性を探る旅は、きっと楽しいものになるだろう。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
PRICE
20万7900円(公式通販サイト)
評価
フルサイズセンサーならではの描写力、表現力に創造性を活かせるLUT機能、シンプルな操作性。常に行動をともにするパートナーとして愉しい時間を共にしたいカメラだ。
コストパフォーマンス:4
画質:5
創造性:5
携帯性:4
動画性能:3
【問い合わせ】
パナソニック株式会社
TEL 0120-878-638
https://panasonic.jp