ブガッティ110周年記念車「チェントディエチ」の高気温下テストとは?

ブガッティ チェントディエチが灼熱の地へ!10億円超のスーパーカーを炎天下でテストする理由

アメリカ アリゾナでテスト走行を実施するチェントディエチのプロトタイプ。フロントビュー
アメリカ アリゾナでテスト走行を実施するチェントディエチのプロトタイプ。フロントビュー。
ブガッティは、2019年に発表した同社の創業110周年記念車「チェントディエチ」の開発を進めている。伝説的な「EB110」にオマージュを捧げる特別なモデルで、製造するのはわずか10台のみ。800万ユーロ(約10億5800万円)という驚愕のプライスタグを掲げる「チェントディエチ」は、2022年のデリバリーを目指して過酷な走行テストを繰り返している。

Bugatti Centodieci

邦貨約10億円超でも数週間で完売

ブガッティ チェントディエチの正面ビュー
ブガッティの創業110周年を記念して、2019年に発表された「Centodieci(チェントディエチ=イタリア語で110を意味する)」。伝説のEB110にオマージュを捧げる特別なモデルで、10台のみを販売する。

ブガッティは2019年夏に、創業110周年記念車「チェントディエチ」を発表した。10台のみを製造するウルトラレアなモデルであり、価格も800万ユーロ(約10億5800万円)と規格外。それでも、発表からものの数週間で見事“完売御礼”となっている。

2022年のデリバリーを目指す「チェントディエチ」は、現在世界各地でプロトタイプによるテスト走行が行われている。寒冷地や高速走行、耐久テストなど様々な開発プロセスをこなし、この夏には3週間にわたる灼熱のテストが実施された。

8台のブガッティがアリゾナを走る

アメリカ アリゾナでテスト走行を実施するチェントディエチのプロトタイプ。リヤビュー
アメリカのアリゾナでテスト走行を実施するチェントディエチのプロトタイプ。2022年のデリバリーを予定しており、開発は佳境を迎えている。

チェントディエチのプロトタイプを連れだってアリゾナの地を訪れたのは、27名のエンジニア。真夏には気温が50度を超えることもある砂漠地帯でのテストは、人にとってはもちろん、クルマにとっても過酷なことこのうえない。

今回アメリカに上陸したのは8台のブガッティ。1台のチェントディエチのプロトタイプと4台のシロン スーパースポーツ、そして3台のシロン ピュールスポールが連なる壮麗な隊列はカリフォルニアから一路アリゾナを目指した。

ツーソン北部のレモン山では、標高2800mの山頂に繋がるワインディングロードが待ち受けている。ブガッティのエンジニア陣は貸し切りにした道路上で、320km/hに達する高速走行をはじめとした様々なシチュエーションで、走行テスト距離は800kmに及んだ。荒れた路面で乗り心地を評価したり、渋滞を想定して低速でストップ&ゴーを繰り返したり、焼き付けるような太陽の下でもエアコンが十分に働くかどうかをチェックしたりと、確認すべき項目は多岐にわたる。200ものセンサーを備えた現代車とあって、電装関係の状態もあらゆる状況下で細かく、しつこく吟味される。

熱による“ゆがみ”も徹底的にチェック

ブガッティ チェントディエチのインテリア
燦々と照りつける太陽のもとでも内装材がブガッティ品質をキープできるかどうかも、今回のテストの重要なチェック項目。

灼熱地帯でのテストは、事前に実施したナルドでの高速テストやシミュレーション試験で得られたデータと比較しながら進められる。ブガッティの総括車両開発責任者、ピエール・ロメルファンガーは「熱帯地域では、クルマ全体はもちろん、シャシーやエンジン、トランスミッション、温度管理システム、電装品などにフォーカスしてテストを行います」 と語る。

さらに、灼熱の太陽にさらされても内装材やボディパーツにゆがみが生じていないかどうかも、見た目からフィールまで含めて厳格に点検されるという。

酷暑でもブガッティはブガッティらしくあるべし

アメリカ アリゾナでテスト走行を実施するチェントディエチのプロトタイプ。フロントビュー
ブガッティはたとえワンオフモデルであっても、10台の限定モデルであっても、量産モデルと同じ開発プログラムをすべての車両に適用する。

7000rpmで1600psを発生する8.0リッターW型16気筒を搭載するチェントディエチは、エンジン温度の調整のためにオイルクーラー付近にエアインテークを追加している。

「チェントディエチは専用のボディワークをもつので、空気の流れも変わっています。また、エンジンコンパートメントを覆うガラスカバーは、摂氏45度オーバーという高温下では急激な温度変化に繋がります」 と、ブガッティの少量生産プロジェクトで技術企画マネージャーを務めるアンドレ・クーリッヒは説明する。

「このような灼熱の地でのテストは、チェントディエチがすべてのブガッティ車と同じように、完璧で信頼性に優れ、かついかなる暑さの中でも安全に運転できるクルマであるかどうかを確認するために必要なのです。たとえ顧客の皆さまがこのような場所で運転する可能性がなかったとしても。今回のテストでは、チェントディエチは酷暑の中で何時間も続けてドライブしても問題がない理想的なセットアップに仕上がっていることが確認できました」

行く先々で注目の的に

アメリカ アリゾナでテスト走行するブガッティの車列
アメリカのアリゾナでテスト走行するブガッティの車列は、行く先々で人々の注目を集めた。

8台のブガッティの隊列は、ガソリンスタンドや駐車場など、どこに現れても注目の的になった。人々はクルマの周りに集まり、写真を撮ったりエンジニアに質問を投げかけたりと興味津々。ブガッティにひと目惚れしたとある女性は、その場でエンジニアの面々を地元の自動車クラブに招待したそうだ。

アリゾナでのテストを無事終えたチェントディエチは、すでにヨーロッパへもどって最後の耐久テストに挑んでいる。大陸間を高速で走行する距離は、じつに3万kmに及ぶ。徹底的なテストを念入りに繰り返したチェントディエチは、開発チームの承認を獲得した後に、モルスハイムでハンドメイドによる生産をスタートする。

ブガッティ チェントディエチの風洞実験イメージ。フロントビュー

ブガッティ チェントディエチ、邦貨約10億円のスーパーカーの開発現場に迫る 【動画】

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著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…