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オーディオブランドとしての矜持
音楽業界は過去10年で驚くほど成長した。背景にあるのは音楽ストリーミングとワイヤレスのオーディオ機器の普及だ。そんなワイヤレス時代を先取りし、米国発のオーディオブランドとして定着したのがSonosだが、満を持して登場した彼らのワイヤレスヘッドフォン「Sonos Ace」は、数多くのブランドが参入するジャンルの中でユニークな魅力を放っている。
サウンドクオリティ面ではハリウッドから程近い拠点で開発する強みを活かし、世界的ヒット曲を手掛けてきた録音エンジニアなどが、音質チューニングに参加。手掛けてきた作品の表現を基準に音決めをする伝統がSonosにはある。エド・シーランの「Shivers」では音場の見通しが心地よく、上下左右、そして奥行方向にも広がるサウンドステージを描き出す。シンセベースが音場の中に現れると、そこから周囲に心地よく広がり、消えていく音のグラデーションが美しい。そんな音場表現だからこそボーカルが際立つように浮かび上がる。
シンプルな操作性に感動
7万4800円という価格を考えるなら高音質であることは“当たり前”とも言えるが、オーディオ機器は音楽を楽しむエモーショナルな機器であることを改めて感じさせる音作りだ。しかしAceの特徴は音質だけではない。Sonos製サウンドバー(Arc、Beam、Beam(Gen2)、Rayに対応)と組み合わせることでドルビーATMOS配信の空間オーディオを的確な立体音響で楽しめる。ブレランドの「Praise the Lord」では、遠い位置に感じる豊かなギター、左右からの取り囲まれるようなリズミカルなハンドクラップ、床から湧き上がるようなベースなど、立体的に配置された中で、目の前で語りかけるようにヴォーカルが飛び込んでくるきめ細かなアレンジ設計が堪能できる。
この立体音響技術はSonos独自に開発したもので、サウンドバーに内蔵された優れた信号処理プロセッサが実現するものだが、彼らの真骨頂はサウンドバー連動のシアター機能にある。Sonos Arcで映画など映像作品をドルビーATMOSで楽しんでいるとき、Aceを装着して専用ボタンを押せば、その瞬間に立体音響で包まれたホームシアターの音場が、そのままAceからの音声に切り替わる。映像を楽しんでいる時のサラウンド感をそのままにヘッドフォンでの視聴に切り替えることができるのだ(ヘッドフォンからサウンドバーへの切替も可能)。映画のサウンドミックスを手がけるエンジニアにアドバイスを受けているというだけあり、セリフの明瞭さは特徴的で、会話の細かなニュアンスまでリアルに感じ取れた。
直尺映画も楽しめる抜群のフィット感
ホームシアターでの長尺映画でも快適に楽しめるよう、低反発のメモリーフォームで作られたイヤークッションが、頭を優しく包み込む。イヤーカップは薄く仕上げられ、ヒンジ部を工夫することで、装着時のシルエットがコンパクトになる点も魅力。そしてもちろん、業界最高クラスのノイズキャンセリング機能も備える。外出先でも役立つが、自宅シアターでの利用でも暗騒音が抑えられ作品に没入する手助けをしてくれるはずだ。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 10月号
PRICE
7万4800円
評価
音楽用だけではなくホームシアター空間とのシームレスな融合というユニークな切り口がAceを独自製の高いデバイスにしている。単体のヘッドフォンとしての魅力もとても高い。
音質:4
装着感:5
バッテリー:4
コストパフォーマンス:3
携帯性:5
【問い合わせ】
Sonos Japanカスタマーセンター
TEL 0120-635-220
https://www.sonos.com/ja-jp/home