スーパーカー並みに速い“5ドアGT” 電気自動車の 「ロータス エメヤ」に試乗

スーパーカー並みの速さを誇る新型EV「ロータス エメヤ」に試乗「こっちの方がよくできている!」

先月のエレトレに続き、今月はロータス製EVの第三弾、ハイパーGTのエメヤを取り上げる。一見すればわかるように、SUVのエレトレと4ドアサルーンのエメヤは、デザインの方向性はもちろん、モーターやバッテリーなど数多くのコンポーネントを共有する。果たして走りにはどんな違いがあるのだろうか。
0→100km/h加速はなんと2.78秒!
エレトレに続き今回はロータス製EVの第3弾、ハイパーGTの「エメヤ」を取り上げる。一見すればわかるように、SUVのエレトレと4ドアサルーンのエメヤは、デザインの方向性はもちろん、モーターやバッテリーなど数多くのコンポーネントを共有する。果たして走りにはどんな違いがあるのだろうか。(GENROQ 2025年1月号より転載・再構成)

Lotus Emeya R

モーターは前306PS、後612PS

エレトレと比較すると、エメヤは全長と全幅はほぼ同等、全高のみ172mm低い。その一方でホイールベースは50mm長く、より伸びやかに見えるのはこのせいもあるだろう。
エレトレと比較すると全長と全幅はほぼ同等、全高のみ172mm低い。その一方でホイールベースは50mm長く、より伸びやかに見えるのはこのせいもあるだろう。

先月ドライブしたエレトレがRグレードだったので、できれば今回はベースグレードのエメヤがいいなと思っていたのだが、またしてもRだった!

ロータスのスポーツカーは最も軽いベースグレードこそ主役だったが、電動化となれば話は違うのだろう。今回もシステム総計918PS、その圧倒的な加速を堪能してみよう。

R以外を希望した理由は、スペック的なものである。SUVスタイルのエレトレと5ドア・サルーンのエメヤの中身に共通項は少なくない。特に車体の前後に備わるモーターの出力設定は同一で、Rはフロント306PS、リヤ612PSとなっている。これに対するベースモデルは前後とも306PS。エメヤというクルマの本質に迫るのであれば、素のモデルの感触を確かめてから高性能モデルの刺激に浸るという流れが常套ではないだろうか。

それと今回もうひとつ理由を挙げるとすれば、エレトレRの加速がまぁまぁ暴力的だったから。それを先月は「ワープ感」というポジティブ方向の言葉で表現してみたのだが、本音を言うと滑走路みたいな広い場所で試してみたいパフォーマンスだと感じていた。あたりは柔らかいけれど、キレたら怖そうなエレトレR先輩。その同僚が怖くないといったらウソになるだろう。

それと今回もうひとつ理由を挙げるとすれば、エレトレRの加速がまぁまぁ暴力的だったから。それを先月は「ワープ感」というポジティブ方向の言葉で表現してみたのだが、本音を言うと滑走路みたいな広い場所で試してみたいパフォーマンスだと感じていた。あたりは柔らかいけれど、キレたら怖そうなエレトレR先輩。その同僚が怖くないといったらウソになるだろう。

素晴らしい製造品質の高さ

先月のエレトレに続き、今月はロータス製EVの第三弾、ハイパーGTのエメヤを取り上げる。一見すればわかるように、SUVのエレトレと4ドアサルーンのエメヤは、デザインの方向性はもちろん、モーターやバッテリーなど数多くのコンポーネントを共有する。果たして走りにはどんな違いがあるのだろうか。
デザインの方向性はSUVのエレトレと共通で、エメヤはその5ドアサルーン版という趣。試乗車のボディカラーは「ファイアグローオレンジ」。

さてエメヤRである。デザインの方向性はエレトレと全く一緒のよう。細長いダブルの瞳は眉毛とまつ毛のようなもので、実際のランプユニットはブラックアウトされたその下のエリアに仕込まれている。また先月のエレトレRは控えめでオシャレなカムイグレーだったが、今回はメタリックの粒が粗くバチバチ輝くファイアグローオレンジ。その塗色も不敵なパフォーマンスとロータスらしさをうまく表現できていると感じた。

エレトレのときには感じなかったのだが、エメヤのデザインに1970年代の2代目エリートやエクラ的な懐かしさを感じるのは筆者だけだろうか? イタリアでもドイツのそれでもないスタイリングに伝統的なロータスの血が見え隠れするのである。

しかも見れば見るほど、ボディのクオリティ、パネルの建てつけの精度がすばらしい。鼻先からリヤエンドまで綺麗なストリームラインを描くパネルとガラスを、完全に平滑にした仕事はお見事。アウディもかくや、というレベルだ。エレトレもそうだったのかもしれないが、あちらは背が高くルーフを俯瞰して見ることができなかったので悪しからず。

ドライバーズシートに乗り込む際に感じたのは、フロアがかさ上げされていること。だがシートに座ってしまえば違和感はない。ダッシュパネルの設え、シートのデザインまで含め、エレトレと同じように見える。コクピットの眺めはエレトレの場合でもボディが薄いスポーティなクルマ風だったので、セダンタイプのエメヤの方が違和感なく調和したデザインといえるかもしれない。

一方リヤシートもアストンのラピードやパナメーラのように、いかにも「スポーツカーメーカーが4ドアモデルを造るとこうなります」といった感じの、フロントシートがそのままリヤにも使われているデザイン。だがここに至ってもライバルたちより、そして先月のエレトレRよりもはるかに立派に見えた。そういえばエレトレRは黒っぽい革内装で、しかも5人乗りタイプだったからかもしれない。

唯一気になったのはリヤシートから伸ばした足先がフロントシートの下に入らないこと。件の分厚いフロアの弱点がここに露呈しているのだが、それ以外に特にネガは感じなかった。フルサイズのドイツ・サルーンに匹敵するリヤシートである。

仮想敵はポルシェ・タイカンターボS?

バッテリー容量は102kWhで、一充電航続距離は435~485km(WLTP統合)を標榜。充電は200Vの普通充電とCHAdeMO方式の急速充電に対応。コネクターは左リヤフェンダー部にある。
バッテリー容量は102kWhで、一充電航続距離は435~485km(WLTP統合)を標榜。充電は200Vの普通充電とCHAdeMO方式の急速充電に対応。コネクターは左リヤフェンダー部にある。

今回は東名を抜けて箱根の稜線を縫うようなワインディングで走らせた。走りに関してもエメヤRはエレトレRとは微妙に、いやけっこう違っていた。基本的な挙動は似ているのだが、それでも「こっちの方がよくできている!」といきなり強く思えたのはエメヤRの方だったのだ。

そう感じてからは「なぜそうなのか?」と思案を巡らせながらの試乗となった。ストロークやエアサスの設定はもちろん違うはずだが、まさか別のエンジニアリングチームが仕上げたわけではないだろう。となれば考えられるのは物理の法則以外にありえない、ということ?

思い当たる節はあった。少しコーナーをハードに攻めてみると、エレトレRではエアサスが目いっぱい頑張っている感じがするのに、エメヤは横Gがフルに掛かる前にヒラッとかわしてしまう感じ。その身のこなしはまるでエリーゼやエヴォーラといったロータスを彷彿とさせる。

今回も一瞬のフル加速を試してみたのだが、エレトレRは実際の加速がはじまる前にトラクションがリヤタイヤに集中して沈む一瞬の間があるのだが、エメヤRはリヤが沈み切る前に進んでいく。そしてリヤの2段スポイラーを立ち上げ、静かに矢のように加速していくのだ。

加速しはじめの挙動が迫力たっぷりなエレトレRに対し、エメヤRはすまし顔。だからこそエメヤRはスロットルを踏み続けるのも容易で、怖くないのである。というかBEVの出力特性は、加速しはじめにガツンとパワーが立ち上がり、その先のパワーカーブはフラットなので、迫力があっても最初だけなのである。しかもRグレードには後輪側に2段ギヤボックスが備わり、これがタイカンのようにウルトラロー+標準ギヤという設定だとしたら、より「加速しはじめ偏重」ということになる。

失礼な話、エメヤRがいきなりここまでよくできているとは思っていなかったので、今回は心底驚かされている。エメヤRの直接的なライバルはタイカンターボSあたりだろうが、それと脳内比較すると設計年次の違いからくる優劣よりもポルシェの凝縮感対ロータスの軽快さという違いを強く感じる。最先端モデルのリストにエメヤRを追加することは必然といえるだろう。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2025年1月号

SPECIFICATIONS

ロータス・エメヤR

ボディサイズ:全長5139mm 全幅2005mm 全高1464mm
ホイールベース:3069mm
車両重量:2575kg
システム最高出力:675kW(918PS)
システム最大トルク:985Nm(100.4kgm)
トランスミッション:2速
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40R21 後305/35R21
最高速度:256km/h
0-100km/h加速:2.78秒
車両本体価格:2268万2000円

【問い合わせ】
ロータスコール
TEL 0120-371-222
https://www.lotus-cars.jp

ロータスの新時代を拓く電動SUV、エレトレが日本の道を走り出した。ロータスのイメージといえば、軽量さが売りのライトウエイトスポーツ。しかしエレトレはその真逆ともいえるモーターで走る巨大なSUVである。果たしてそこにロータスらしさはあるのか。早速試乗に連れ出してみた。

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著者プロフィール

吉田拓生 近影

吉田拓生

1972年生まれ。趣味系自動車雑誌の編集部に12年在籍し、モータリングライターとして独立。戦前のヴィンテ…