フェラーリのワンメイクレースマシン「296チャレンジ」に試乗で感動

最新フェラーリ・レーシングカー「296チャレンジ」に試乗!「ル・マン勝者のハイパーカーを超える700馬力」【動画】

2024年シーズンのフェラーリ・チャレンジでデビューを飾ったレーシングカー、296チャレンジ。まず欧州・北米のコンチネンタルシリーズに投入された9代目ワンメイクレースカーは、2025年からいよいよ本邦含む英国、豪州など各国シリーズでも導入される予定だ。そのシーズンに我々メディアにもそのポテンシャルを試す機会が与えられた。
2024年シーズンのフェラーリ・チャレンジでデビューを飾ったレーシングカー、296チャレンジ。まず欧州・北米のコンチネンタルシリーズに投入された9代目ワンメイクレースカーは、2025年からいよいよ本邦含む英国、豪州など各国シリーズでも導入される予定だ。そのシーズンに我々メディアにもそのポテンシャルを試す機会が与えられた。
2024年シーズンのフェラーリ・チャレンジでデビューを飾ったレーシングカー「296 チャレンジ」。まず欧州・北米のコンチネンタルシリーズに投入された9代目ワンメイクレースカーは、2025年からいよいよ本邦含む英国、豪州など各国シリーズでも導入される予定だ。その日本デビューシーズンに我々メディアにもそのポテンシャルを試す機会が与えられた。(GENROQ 2025年2月号より転載・再構成)

Ferrari 296 Challenge

9世代目のフェラーリ・チャレンジ車両

2024年シーズンのフェラーリ・チャレンジでデビューを飾ったレーシングカー、296チャレンジ。まず欧州・北米のコンチネンタルシリーズに投入された9代目ワンメイクレースカーは、2025年からいよいよ本邦含む英国、豪州など各国シリーズでも導入される予定だ。そのシーズンに我々メディアにもそのポテンシャルを試す機会が与えられた。
2024年シーズンのフェラーリ・チャレンジでデビューを飾ったレーシングカー、296チャレンジ。

通常、試乗記は購入を検討する読者への助言として書かれるものだが、今回は極めて限られた対象者に向けたものであることを、最初にお断りしておきたい。試乗車はフェラーリによるワンメイクレース、フェラーリ・チャレンジ参戦車両である「296 チャレンジ」なのである。

1993年に始まったフェラーリ・チャレンジは、世界各地で行われる歴史あるワンメイクレースだ。現在は欧州、北米、英国、日本の4地域で展開され、2025年には豪州シリーズも加わる予定である。ジェントルマンドライバー向けのレースではあるが、その競技レベルは高く、プロドライバーのキャリアにつながる例もある。例えば2018年に欧州シリーズのプロクラスチャンピオンを獲得したニクラス・ニールセンは、翌年フェラーリのファクトリードライバーとなり、2024年のル・マン24時間レースではハイパーカーカテゴリーで総合優勝を飾っている。

今回試乗した296チャレンジは、フェラーリ・チャレンジ専用車両として開発された9世代目のモデルとなる。その系譜は初代の348に始まり、F355、360、F430、458と続き、458Evo、488、488Evoと進化を重ね、2023年に登場したのがこの最新モデルである。ベースは市販プラグインハイブリッドモデルの「296GTB」だが、パワートレインとエアロダイナミクスに大幅な改良が施されている。エンジンは296GTBと同じ3.0リッターV型6気筒ツインターボだが、レース仕様に変更されており、モーターやバッテリーは取り除かれ、エンジン単体の最高出力は296GTBの663PSを上回る700PSに向上している。最大トルクは740Nmと同値だ。なおトランスミッションはGTB用8速ではなく7速。関係者によると488GTBからの流用だという。

250km/h走行時に最大870kgのダウンフォース

試乗はスペインのプライベートサーキット、モンテブランコで行われた。今回の試乗会が特別だったのは、単なる試乗に留まらず、コーチが同乗し、ブレーキやアクセルのタイミングを指導してくれる点だ。さらに走行後にはデータロガーを用いた解析を通じて、改善点を具体的に教えてくれるという。このカリキュラムはフェラーリのドライビングレッスン、コルソ・ピロタのパーソナルコーチングと同等の内容だ。

ピットで暖気する黄色いリバリーの296チャレンジを目の前にすると、低くワイドなフロントスポイラーや巨大なリヤウイングが醸し出すレーシングカー然とした佇まいに圧倒される。これまでのチャレンジマシン、特に488チャレンジ以前は市販車の魅力を活かす方向性だったが、488チャレンジEvo以降その設計思想は大きく変化した。レーシングカーとしての性能を追求し、空力性能の向上が重点的に図られている。今回もGT3マシンに採用される技術が取り入れられており、例えばフロントバンパー中央のエアインテークから取り入れた空気はラジエーターを効率的に冷却し、フロントフード上ベントから排出された空気はフロントウインドウを通じてルーフへ送られる。アンダーボディの密閉性を高めることで高いダウンフォースを実現している。固定式スワンネック型リヤウイングは7段階調整が可能で、250km/h走行時に最大870kgものダウンフォースを生むが、これは先代モデルである488チャレンジEvo比で18%の増加となる。

296GTB同様に軽量なドアを開け、ロールケージが張り巡らされた室内に乗り込む。スライド機能を備えたフルバケットシートは前後の調整が容易だ。ポジションを合わせ、エンジンの始動・停止手順、さらに近年のレーシングカーの肝とも言えるトラクションコントロールやABSの調整方法などについての説明を受ける。準備が整うとメカニックが6点式シートベルトをしっかりと締めてくれる。レーシングカー試乗の特別感を高める一幕だ。

レーシングカー499Pを上回る最高出力700PS

いよいよ走行順が回ってきた。右パドルを引いて1速に入れて発進する。室内はギヤの音が響くこともなく、市販車とさほど変わらないが、その加速感はまるで別物だ。車重がGTBより140kg軽量化された効果もあり、296チャレンジは驚くほど機敏である。エンジンは4000rpm付近からすでに十分な出力を発揮し、700PSを誇る3.0リッターV6ツインターボのポテンシャルを存分に感じさせる。何しろ700PSという出力はル・マン24時間で2年連続優勝を果たしたフェラーリのハイパーカー「499P」を上回るスペックである。

モンテブランコは低速コーナーの多いコースだが、パドルは操作しやすく応答も俊敏で変速が楽しい。コーナー立ち上がりでアクセルを多めに踏み込んでも、マシンが大きく暴れることはなく、優れたトラクションコントロール(TC)が抜群の性能を発揮する。TCは2つの4段階調整ダイヤルで設定できる。ステアリング右側のダイヤル「TC1」は効き始めのタイミングを調整し、左側の「TC2」はその強さを変更する仕組みだ。試乗開始時はやや強めの「3」に設定されていたため、タイトコーナー立ち上がりでは頻繁にその作動がメーターに表示されていたが、その介入は自然で介入させないように走ることで速くスムーズに走れると感じた。今回、WECで499Pを駆る中国人ワークスドライバーのイェ・イーフェイもゲストとして来ていたが、聞くとトラクションコントロールはオフにするよりも路面状況に合わせて1か2で走った方が速いという。

ブレーキ性能は長足の進化を遂げている。296GTB同様、バイワイヤーブレーキを採用するが、このペダルフィールが秀逸だ。以前「488チャレンジEvo」に試乗した際には、ブレーキペダルの踏み応えが柔らかく不安感があったが、296チャレンジではまったく不安がなかった。適度な踏み応えでコントロール性も高く、GT3マシンのような120kgという桁外れの踏力を要求しない点も好印象だ。ABSは4段階で調整でき、コースや路面に応じたセッティングが可能だ。1〜2がドライ用、3〜4がウエット用となっている。F1技術を応用した専用設計のスリックタイヤは、前280/680ZR19(11J)、後300/720ZR19(12J)で488チャレンジEvoと比べ前輪が拡大し、後輪は同程度だという。

大きな成長をもたらすコーチの指導

ムジェロ・サーキットで先代のラップタイムを2秒短縮したという296チャレンジの走りに納得してピットイン。試乗後コーチからのフィードバックを受ける。なんと、私のラップタイムは1分44秒でコーチと9秒差だった。改善点をデータロガーで具体的に指摘され、次の走行ではブレーキングポイントを奥にし、トラクションコントロールを両方「2」に変更するなどのアドバイスを実践し、結果として3秒差まで縮められた。冒頭、読者への助言と書いたが、フェラーリ・チャレンジ・ジャパンに参戦する猛者には到底及ばないので、“助言”ではなく“独り言”に改めたい。

ともあれ今回感動したのは、マシンの完成度もさることながら、大きな成長をもたらしてくれたコーチの指導だ。コルソ・ピロタには、3つのプログラム初級の「スポーツ」、中級の「エヴォルツィオーネプラス」、実戦的な「レース」が用意され、それぞれで今回のようなパーソナルコーチングを受けられる。すでに2025年スケジュールも発表されているので気になる方は公式ウェブサイトを確認してほしい。

大進化を遂げた296チャレンジの試乗を通じて、その性能だけでなく、フェラーリが提供するドライビングの学びの場も実感できた。熟練者から初心者まで、それぞれのスキルに応じて楽しめる懐の深さがある。2025年には30台あまりが参戦するというフェラーリ・チャレンジ・ジャパン。フェラーリの最先端技術の結晶とも言えるこのマシンでサーキットを楽しめる人が心底羨ましい。

「296 チャレンジ」のインプレッションを動画でチェック!

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/Ferrari S.p.A.
MAGAZINE/GENROQ 2025年2月号

※2025/2/15 動画を追加しました

SPECIFICATIONS

フェラーリ 296 チャレンジ

ボディサイズ:全長4602 全幅1958 全高1159mm
ホイールベース:2600mm
車両乾燥重量:1330kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:700PS/7500rpm
最大トルク:740Nm/6000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前280/680ZR19(11J) 後300/720ZR19(12J)

【オフィシャルサイト】
フェラーリ・ジャパン
https://www.ferrari.com/ja-JP

アジアン・ル・マン・シリーズ開幕戦「セパン4時間レース」で表彰台を独占した、フェラーリ 296 GT3。

「フェラーリ 296 GT3」が100勝目を達成! ALMS「セパン4時間レース」で表彰台独占

12月7〜8日、セパン・インターナショナル・サーキットを舞台に開催された2024-2025年シーズンのアジアン・ル・マン・シリーズ開幕戦「セパン4時間レース」。そのGTクラスのレース1において、カーガイ・レーシングのフェラーリ 296 GT3 57号車(内田優大/エステバン・マッソン/ダニエル・セラ)が優勝した。

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著者プロフィール

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka) 近影

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka)

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…