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Dacia Sandero
ヨーロッパで販売首位争い
2024年のヨーロッパで販売首位争いを「テスラ モデルY」、そしてもう1台は「ダチア サンデロ」である。後者こそ、日本では注目されなかったが伝えておきたい名車にふさわしい。
ダチアとは、欧州を含む一部地域でルノー・グループが展開している1ブランドだ。その始まりは遠く1966年、当時のルノー公団と社会主義時代のルーマニア政府が提携に調印し、同国で生産開始したルノー「8」に遡る。その後1999年にルノーが株式の過半を取得。ワールドカーとして再出発することになった。欧州市場で新生ダチアの事実上第1弾となった2004年初代「ローガン」は、西欧のさまざまな国・地域のルノー・ネットワークで販売開始された。同車は1.4リッター、1.6リッターエンジンをはじめ、ルノー車と多くの機構を共有しながら価格は1万ユーロ以下であったことから、大きな注目を浴び、ダチアの名前を一気に有名にした。
サンデロは、ローガンを基に2008年モデルイヤーに投入されたハッチバック車で、2020年に登場した現行型は3代目である。ルノーの「クリオ」「キャプチャー」と同じCMF-B LSプラットフォームを使用している。
フィアットに次ぐ4位のダチア
サンデロとクロスオーバー版の姉妹車「サンデロ ステップウェイ」は11月、2024年で4回目のヨーロッパ月間販売首位に輝いた。イタリアでは、依然登録台数トップでありながら発売後12年が経過して老朽化した「フィアット パンダ」に迫り始めた。同時に、ダチア全体をランキング上位に浮上させる原動力になった。11月、イタリア国内ブランド別新車登録台数でダチアは、1位トヨタ、2位VW、3位フィアットに次ぐ4位である。フィアットを抜くのは時間の問題であろう。
今やダチアはルノー販売店では無くてはならない商品だ。筆者が住むシエナ県のディーラーにおける営業部員ダニエレ・リッツォ氏によると、もはや販売比率はルノー1に対してダチア2。仕様によっては最高4ヵ月待ちだ。いっぽう、彼の同僚で先輩格のアルド・バリオーニ氏は、ダチア好調の理由を解説してくれた。第1はメーカー戦略として高価格化・電動化を進めたルノーブランドの代替として、多くの人々が現実的な選択肢としてダチアを選んでいること。第2は2022年の部分改良だ。「従来35歳以上だったダチアの顧客層が一気に若返った」とアルド氏は話す。
欧州で久々に吹いた新しい風
ちなみに筆者の周囲のイタリア人にも、パンダから現行サンデロに乗り換えた知人がいる。そればかりか、早3台目の現行サンデロだ。というのは、1台目は勝手に突っ込んできたクルマによる交通事故で全損。2台目は一人娘に「盗られて」しまった。仕方がないので買い直したのが今のクルマという。成熟市場ヨーロッパで久々に吹いた新しい風ダチアと、それを起こした“名車”それがサンデロである。