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行政サービスアプリ、進化す
“買った”のではないが、2024年最後になって面白いものを入手できた。2024年12月4日にイタリアで導入された「デジタル運転免許証」である。2023年から予告されていたものが実現したかたちだ。
デジタル免許証は2020年4月にイタリア政府が開始した行政サービス用スマートフォンアプリ「アップ・イオ(App IO)」のウォレットに免許保持者が任意で追加する。筆者はデジタル免許導入2日後の12月6日、インストール済だったアップ・イオにその追加を試みた。即座に完了かと思いきや、まずは陸運局に照会というプロセスがあって、通知にしたがってウォレットに免許が追加できたのは2日後だった。ちなみに今回のアプリ更新では、健康保険証や身障者手帳も電子化できるようになった。
当局の説明によれば、免許証は警察による路上検問の際も有効という。さらに更新月が近くなるとメッセージが届くらしい。これは便利だ。ここまでくると、将来は更新手続きもオンライン化してほしいと欲がわく。ただし、健康診断(指定医師がイタリア自動車クラブや自動車教習所にやってくる日に受診する)がある以上、こちらは難しいかもしれない。
こんな時代もありました
思えば1997年、日本の運転免許証を書き換えるかたちでイタリアの免許証を手に入れたときは、なんと紙製だった。三つ折りにしても7✕10cmはある。当時、EU圏以外の外国人が携帯しなければならない滞在許可証は、さらに大きいA4の紙製だった。どちらも嵩張って困った。
その後イタリアでも1999年から欧州連合共通のプラスチックカード式免許が導入された。しかし、当時筆者は50歳以下だったので10年間更新が不要だった。さらにカード式に切り替えてもらうには手数料が必要だったので、紙製をそのまま使い続けることにした。さらに更新時も手続き済の証紙を貼るだけでよかった。したがって「財布に入れにくいぞ」と文句を言いつつ、紙製免許証を20年も使ってしまった。
日本を追い越して電子化
今回導入されたデジタル免許は目下のところ、国内のみ有効という制限付きだ。さらに、国家警察、軍警察、財務警察、都市警察とやたら交通に関連する公安組織が多いこの国。検問担当の警察官が本当に対応端末を所持しているのかも心配になってくる。
それでも、日本を追い越して電子化してしまったことは事実である。突然何が起きるかわからないこの国で、あともう少し生活してみるか、という意欲を沸かせてくれた年末のイノヴェーションであった。
Text & Photo/大矢アキオ ロレンツォ Akio Lorenzo OYA 在イタリア・ジャーナリスト