国柄とブランドが示す価値観「ルノー アルカナ」と「アウディ Q3スポーツバック」の違い

車名も新たな新生「ルノー アルカナ エスプリ アルピーヌ」と「アウディ Q3スポーツバック」をスペック比較

2024年10月、ルノーはクーペSUV「アルカナ」から「ルノースポール」の名称を外し、新たに「エスプリ アルピーヌ」の名を冠した。「アルピーヌ」といえば、フランスの名門スポーツカーブランドだ。改良を受けた新型「ルノー アルカナ エスプリ アルピーヌ」と、隣国ドイツの「アウディ Q3 スポーツバック」のスペックを比較し、それぞれの違いを検証してみよう。

RENAULT ARKANA
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AUDI Q3 SPORTBACK

流麗なスタイルのアルカナと精悍なQ3スポーツバック

新型「ルノー アルカナ エスプリ アルピーヌ」と「アウディ Q3 スポーツバック」をまずはデザイン面から比較する。

アルカナは流麗なクーペSUVのフォルムが特徴的だ。なだらかにリヤへと流れるルーフラインによりスポーティなシルエットを形成しており、各部にはルノーの新たなスポーツブランドとなった「アルピーヌ」のブランドバッジが特別感を演出している。曲線デザインのLEDテールライトも相まって、アルカナからはフランス車らしい雰囲気がしっかりと感じられる。

対するQ3スポーツバックは、アウディのSUVらしい直線的な造形を保ちつつ、スポーツバックならではの独特なシルエットを取り入れている。八角形のシングルフレームグリルと、シャープなデザインのマトリックスLEDヘッドライトも相まって精悍さではQ3スポーツバックが上だ。

ルーフラインの傾斜はアルカナに比べると立ち気味だが、そのぶん後席頭上や荷室空間は広く、それでいてQ3のハッチバックモデルとは異なる特別感もしっかりと備わる。

内装デザインに関しても曲線基調のアルカナと、直線基調のQ3スポーツバックでは対称的だ。アルカナのインテリア造形は保守的だが、各部にはブルー加飾が施され、シートにはブルーステッチやアルピーヌロゴが配置されるなどドライバーの気分を高める演出が施されている。

対するQ3スポーツバックは金属無垢材から削り出したような独特なデザインで堅牢性とスポーツ性を演出する。両者の内外装には、メーカーそれぞれの国柄が色濃く反映されているようだ。

ルノー アルカナ エスプリ アルピーヌ Eテック フルハイブリッド

ボディサイズ=全長4570mm×全幅1820mm×全高1580mm
ホイールベース=2720mm
車両重量=1470kg
タイヤサイズ=225/45R19

アウディ Q3スポーツバック 35TFSI S line

ボディサイズ=全長4520mm×全幅1840mm×全高1565mm
ホイールベース=2680mm
車両重量=1550kg
タイヤサイズ=235/50R19

F-1技術を燃費改善に応用したルノーの「E-THCH」

両車のエンジン排気量は同じくらいだが、走りと燃費性能へのアプローチは大きく異なる。絶対的な動力性能で勝るのはQ3スポーツバック、燃費性能で優れるのはアルカナだ。

Q3スポーツバックの35TFSIは、最高出力150PS、最大トルク250Nmの1.5リッター直4ターボエンジンに7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせて、ターボ過給領域を効率的に使って走る。不足しがちな発進トルクはマイルドハイブリッドシステムで補っている。低負荷時には2気筒停止、あるいはエンジンを全停止するコースティング走行も積極的に使ってWLTCモード燃費は15.4kmLとなっている。

それに対しアルカナは、1.6リッター直4自然吸気エンジンにF-1で培った技術を盛り込んだルノー独自のハイブリッドシステム「E-THCH(Eテック)」を用いる。Eテックはノンシンクロトランスミッションに最大トルク205Nmのモーター1基を搭載し、さらにエンジンにもサブモーターを搭載している点が大きな特徴だ。動力伝達効率が高い代わりに変速ショックが出やすいノンシクロトランスミッションの動作を、サブモーターでエンジン回転数を同期させてやることで滑らかな変速と高効率な走行を両立させており、アルカナの燃費性能は輸入車同クラスのトップレベルとなる22.8km/Lにものぼる。

ルノー アルカナ エスプリ アルピーヌ Eテック フルハイブリッド

エンジン形式=直列4気筒DOHCガソリン+モーター
排気量=1597cc
最高出力=94ps/5600rpm
最大トルク=148Nm/3600rpm
トランスミッション=マルチモードAT
駆動方式=FWD

アウディ Q3スポーツバック 35TFSI S line

エンジン形式=直列4気筒DOHCガソリンターボ+モーター
排気量=1497cc
最高出力=150ps/5000〜6000rpm
最大トルク=250Nm/1500〜3500rpm
トランスミッション=7速Sトロニック
駆動方式=FWD

ドイツの鉄板モデルとフランスの意欲作

車両価格は約50万円ほどアルカナのほうが安い。フレンチ・クーペSUVとしての流麗なスタイリングと、凝った構造のフルハイブリッドを考慮するとアルカナはお買い得感が高いモデルといえるだろう。

一方のQ3スポーツバックは高品質で高機能なインテリアと高い実用性が魅力となる。価格の高さは気になるものの、細部の質感やインフォテインメントシステムの機能などはアウディらしく非常に優れたものだ。

車両価格と燃費性能によるコストパフォーマンスを重視しながら、個性的なデザインのクルマを求めるならアルカナが適している。クーペSUVのスタイリングを維持したまま、高級感と使い勝手を両立したクルマを求めるならQ3スポーツバックが最適だ。ただし、パワートレインのメカニズムに対して好奇心をくすぐられるのは、間違いなくEテックを採用するアルカナの方といえるだろう。

車両本体価格

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