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BMW X3 M50 xDrive
最近のBMWの動的質感は素晴らしい

BMWのX3が新型となって上陸を果たした。4代目となる新型X3の日本導入モデルはすべてxドライブかつマイルドハイブリッドとなる。エンジンは直列4気筒のディーゼルとガソリン、そして直列6気筒のガソリンが用意される。となればGENROQ的にはストレート6に食指が動く。
スタイリングは最近のBMWらしく顔のインパクトが強め。でもこの大きな顔も見慣れてきたし、嫌いではない。今回のように夜の撮影ではキドニーグリルを縁取るアイコニックグローが最新世代のBMWらしさをしっかりと主張してくれる。
フロントマスク内でブラックアウトされている面積は多めだが、実際の孔は3割ほど。ダイナミックな見た目に対して、空気抵抗の対策が徹底されているのだろう。試乗車のボディカラーはデューン・グレーで、対するインテリアはエスプレッソ・ブラウン。つまりけっこうなお洒落な組み合わせとなっていた。


運転席で操作系をチェックしたときにホッとさせられたのは、シフトレバーの後方に「いつものダイヤル」がちゃんと備わっていたこと。X1やX2はOSの違いからコレが省かれていてしっくりこなかった。
2枚の横長がディスプレイを繋いだカーブドディスプレイも7シリーズ等に通じる角ばったもので高級感がある。一方でダッシュ中央部やドアパネルにまでUの字型に進出した太い光の帯、インタラクションバーは少しくどい感じがした。
今回のテストドライブは銀座をスタートして、夜の都心を巡るコースに決めた。「普通のX3」くらいの気持ちでいたのだが、走りの印象は想像以上だった。一言でいうと洗練されている。ガソリンエンジン車と思えないほどスムーズだったのだ。
ここ10年くらいのBMWの動的質感は独特なもの。実際の車重よりはるかに軽く、硬く感じられるシャシーと、無駄な動きを排除したアシ捌きを特徴としている。新型車が出るたびに、その傾向がさらに強まったことを感じるのが常だったのだが、今回の新型X3が踏み出した一歩はこれまでになく大きなものだと実感した。思わず「これはすごい!」と声を上げてしまったほど。
首都高速に合流してすぐマイモードをエフィシェントからスポーツに変え、スロットルを深く踏み込んでみた。ストレート6ターボエンジンは振動を感じさせず即座にシュンッと回り、ターボラグや低回転域のトルクの弱さ、さらにはシフトアップの谷間などはMHEVのモーターによってきれいに均されている。そこに変速の滑らかさも加わるので、パワートレイン全体の質感はBEVに近いシームレスな感じがした。
その静寂を破るようにステアリング裏のパドルを使ってストレート6エンジンを積極的に回すと、若干高めな6気筒の快音とキレの良さがクローズアップされ、車名に入るMの文字に相応しい快活な感じが伝わってくる。それでもなおエンジンの横ブレのような振動は微々たるもので、結果的にはそれが歴代のX3にはなかった洗練されたドライブフィールに繋がっていた。
気持ち良すぎるストレート6が白眉


一方コーナリングにも確かな洗練が感じられた。スピードに関係なくほとんどロールを感じさせず、不思議なくらいフラットにコーナーを抜けることができる。X3 M50のアシにはMスポーツサスペンションが装備されているが、特にスプリングが硬いという感じもないし、スポーツモードでダンパーの減衰を高めた場合でも突っ張るような感じは皆無。最新のクロスオーバーSUVは電制スタビライザー等の力を借りなくてもロールが最小限に抑え込まれているものが多いが、新型X3はその基準をさらに引き上げた印象だ。
ひどくスムーズに回るストレート6と洗練されたシャシーという組み合わせは、つまり1970年代から続いてきたBMWのお家芸そのものだ。かつては3シリーズのセダンがメインモデルだったわけだが、それがX3に移行しているのだとすれば、新型X3の仕上げに力が込められていて当然なのかもしれないし、もしかしたら今後登場してくるBMWモデルが皆このレベルで長足の進化を遂げているのかもしれない。
少し気になったのはそのサイズ感だった。先代からあまりサイズアップしていないとはいえ、新型X3のボディは初代X5のそれに近いくらいなのだ。となれば、日本における普段使いを考えればジャストサイズはX1やX2ということになる。
以前ドライブしたX1、X2の印象は素晴らしいものだった。けれど新型X3に乗ると根本的な質感の違いに気づかされることになる。それはエンジンの縦置き横置きの違い、つまりプライマリーの駆動輪の違いも関係しているはずだし、狙っている客層の違いから来る味付けも含まれるだろう。X2に対する好印象は変わらないが、それでも古くからの概念でBMWを捉えているようなクルマ好きに響くのは、間違いなく新型X3の方だと言い切れる。
早くもベストセラーの予感

試乗を終えた後で再びリヤシートやラゲッジスペースをチェックしてみると、BMWの3シリーズのイメージより確実に広いスペースが確保されていた。となるとX3はX5のオルタナティブにもなりうる?
新型X3には今回かなり心を動かされた。でも待てよ、これでオプション装備が300万円くらい載っていたら興ざめだ! と思ってチェックしたらさにあらず。試乗車のオプション価格は15万チョイ。6気筒搭載の素の新型X3、しばらくはベンチマークの1台になりそうな予感だ。
REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2025年4月号
SPECIFICATIONS
BMW X3 M50 xドライブ
ボディサイズ:全長4755 全幅1920 全高1660mm
ホイールベース:2865mm
車両重量:2000kg
エンジン:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2997cc
最高出力:280kW(381PS)/5500rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/1900-4800rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20 後285/40R20
車両本体価格:998万円
【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/