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M3(E46)
排気量を3.2リッターに拡大

3シリーズがE46型へとフルモデルチェンジを果たした翌年の1999年、BMW M社はフランクフルト・ショーで3代目となる「M3」を発表した。比較的おとなし目だった先代とは対照的に、新しいM3はホイールアーチの拡大により20mmワイド化されたボディ、大口径のインテークと一体化した専用のエアダム、左右フロントフェンダーのエアアウトレット、サイドとリヤのスポイラー、そしてパワーバルジのついたエンジンフードなど一目でスタンダードの3シリーズと区別できる、マッシブなスタイルに生まれ変わった。
エンジンはアルミブロックのM54型ではなく、先代M3に使われた鋳鉄のS50B32型のシリンダーブロックをベースに、ボアを87mmに拡大して排気量を3246ccへと引き上げたS54B32型直列6気筒DOHCで、6連スロットルバルブ、フライバイワイヤ機構、ダブルフロー構造のエキゾーストなどを備え、最高出力343PS、最大トルク365Nmを発生した。
組み合わされるギヤボックスはゲトラグ製420G 6速MTもしくは、2ペダルのSMG-Ⅱ6速セミATの2種類。SMG-Ⅱは先代での失敗を踏まえて多くの部分が改良され、変速スピードが速められたうえに信頼性の向上も図られている。
これらの改良を受け、ボディ自体にも多くの補強を実施。またアルミが多用された前後サスペンションも強化、リセットが行われているほか、ブレーキにはフローティング構造のブレーキディスクが使用されている。
ボディ拡大とともに軽量化を徹底


ボディは2ドアクーペとコンバーチブルの2タイプで、4ドアセダンやワゴンの設定はない。また車格の拡大に伴う重量増を受け、ボンネットフードにアルミを使用。スタンダードより40%軽いが、剛性自体はスチール製と同レベルに保たれていた。
タイヤはフロント225/45ZR18、リヤ225/40ZR18で、ホイールにはフロント8J、リヤ9JのMスタイリングの手による軽合金製を採用。気になるパフォーマンスは0-100km/h加速5.2秒とアナウンスされた。
そして2000年、BMW M社はアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)GTクラスのホモロゲーションを獲得するために、460PSの4.0リッターV8DOHCのP60B40エンジンを搭載。ルーフ、リヤウイング、フロントバンパーとリヤバンパーをカーボン複合材製に換えることで、車重を1350kgとした「M3 GTR」を10台限定で発売。当初、そのうち3台はホモロゲ取得のためにロードバージョンとして製作されたが、規定の変更により販売されることはなかった。
こうして誕生したM3 GTRは期待に応えて2002年にALMSでGTクラスのチャンピオンを獲得。2004年と2005年のニュルブルクリンク24時間レースでも優勝を飾っている。
ライトウェイトバージョンの誕生



このE46型M3でもうひとつ忘れてならないのが、伝説のCSL(Coupe Sport Leichtbau=軽量スポーツクーペの意)の名を冠して2003年に1383台限定で販売された「M3 CSL」だ。
これはM3のルーフ、センターコンソール、ドアトリム、ラゲッジルーム・フロアをカーボンファイバー製とするとともに、リヤに薄肉ガラス、そしてFRP製のフロントバケットシートを使用。さらにエアコン、オーディオ、ナビ、遮音材、電動シートといった快適装備も削減することで車重を110kgも軽量化した、文字通りのライトウェイトバージョンであった(なお、エアコン、オーディオは無償オプションで装着可能)。
シャシーはスプリングやダンパーを強化しステアリングレシオも速められたほか、19インチのミシュラン・パイロットスポーツを標準装備。あわせて前後ディスクブレーキも強化されている。
エンジンは、排気量はそのままにカムシャフトの変更、カーボン製のマニフォールドの採用することで、360PSの最高出力と370Nmの最大トルクを発揮。ギヤボックスはシフトタイミングを短縮するなどの改良が施されたSMG-Ⅱ6速セミATのみの設定となっている。
加えてボディもカーボンファイバー製フロントスプリッター、リヤディフューザーを装備することでダウンフォースの発生量を50%アップ。ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで7分50秒というタイムを叩き出し、その実力を証明した。