目次
Rivian R1T
第一弾のプロダクトは電動ピックアップトラック
かねてより動向が注目されていたアメリカの新興EVメーカー、リヴィアンがとうとう本格的に動き出した。2021年9月には、イリノイ州の工場で市販第一号となる電動ピックアップトラック「R1T」のデリバリーを開始。さらに同年11月10日、リヴィアン オートモーティブとして米ナスダック市場へ上場。終値で計算した時価総額は859億ドル(約9兆8000億円)にのぼり、米最大手GMにほぼ並ぶほどの勢いを見せつけた。
リヴィアン オートモーティブは、米マサチューセッツ工科大学で機械工学の博士号を取得したロバート・J・スカリンジにより2009年に設立された。当初の社名は「Mainstream Motors」であり、2年後に現在の「Rivian」へ改名。ここ数年の間に一気に自動車メーカーとしての基盤を拡大し、従業員や支援者、協力パートナーの後押しを得て、瞬く間に市販モデルの量産をスタートするまでになった。フォードからの出資を受けているのはもちろん、Amazonのバックアップも獲得しており、すでに同社は商用バンを10万台発注済みであるという。
車両価格は邦貨約770万円から
リヴィアン オートモーティブにとっての市販第1弾となるモデルが、ピュアEVの「R1T」。4基のモーターを搭載するフルサイズのピックアップトラックであり、車両価格は6万7500ドル(約770万円)〜とエグゼクティブサルーン並みのプライスタグを掲げる。ちなみにピックアップトラックの代表選手、フォード F150のエントリーモデルは2万9290ドル(約334万円)である。
リヴィアン車のベースは「スケートボード プラットフォーム」と呼ぶ車台。薄型平面のバッテリーパックを主体に、4基のモーター、独立エアサスペンション、油圧式電制アンチロールシステムをすべての車両に搭載する。航続距離はEPAモードで最長314マイル(約505km)。ただしこれは21インチのロードタイヤ装着時の数字であり、20インチのオールテレイン、22インチのスポーツタイヤの場合は10%前後短くなるそうだ。ちなみにタイヤはすべてピレリと共同開発した専用モデルとなる。
4基のモーターを搭載した全輪駆動
モーターはフロント側が415hp/560Nm、リヤ側が420hp/671Nmを発生。状況や走行モード(距離重視の前輪駆動モードや「オフロードラリー」モードなど様々な設定がある)に応じて4輪に最適なトルクを配分する4WDである。エアサスペンションにはアクティブダンパーを装備し、路面状況を読みとりながら5ミリ秒ごとに減衰力を調整する機構を採用している。
ボディサイズは全長5514mm、全幅2077mm、全高1986mm(アンテナ含む)でホイールベースが3449mm。EV専用プラットフォームを活かした広大な空間づくりは圧倒的で、フロントボンネットの下と荷台に加えて、キャビン後方とリヤホイールの間にまで収納スペースを確保しているのもユニークだ。
ディフェンダー並みの渡河性能
グラウンドクリアランスも378mmと余裕たっぷりで、公式資料によれば3フィート強(およそ910mm)というディフェンダー並みの渡河性能を実現しているという。牽引能力は約4989kg、0-60mph加速は3秒を謳う。
コクピットはディスプレイ主体によるシンプルな仕立てで、木目のパネルやヴィーガンレザー(人工レザー)を使った“リビング調”のインテリアもいかにも現代的。オーディオメーカーのメリディアンと共同開発したAVシステムはとりわけ特徴的で、Bluetooth搭載の着脱式ポータブルスピーカーを採用しており、キャンプの際などは荷台に置いて屋外スピーカーとして活用することもできるそうだ。
“純正キッチン”もラインナップ
アウトドアユースを見込んでルーフ設置式テントやルーフレールなどのギア類もオプションで用意する。なかでも目を惹くのが、日本のアウトドアブランド「スノーピーク」とコラボレーションした2口コンロと4ガロンタンク付きのシンクを備えた「キャンプキッチン」。食器類やマグカップ、ケトル、コーヒーグラインダーといった専用の調理機器を純正アクセサリーとしてラインナップしている。
リヴィアンは、三菱自動車が2015年に閉鎖した米イリノイ州ノーマルの完成車工場を2017年に買収。同地で現在R1Tの生産を行っており、間もなく電動ピックアップの「R1S」の製造もスタートするという。同工場には2021年11月現在3400名の従業員が働いているが、その2倍まで人員を拡充する計画もある。
ルシードやフィスカーも第一歩を踏みだそうとしている今、EVスタートアップの乱戦は必至。真のテスライーターとなるのはどの企業なのか。彼らの作る自動車は、果たして既存の自動車メーカーが作るEVとしのぎを削る商品性を備えているのか。2022年、その答えを明らかにするべく、本格的なEV競争の幕が切って落とされる。