【最新タイヤテスト】 ミシュランの新製品、パイロットスポーツ5を試す

ミシュランの新主力スポーツタイヤ、パイロットスポーツ5を深掘り! テストコースでそのポテンシャルを引き出す

ミシュラン パイロットスポーツ5インプレッション
ミシュラン パイロットスポーツ5インプレッション
ミシュランの新スポーツタイヤ「パイロットスポーツ5」は、看板モデルのシリーズ最新作。すでに従来モデルのパイロットスポーツ4が高評価を得ている中で刷新された5世代目は、どのような進化を行ってどういった性格付けがなされているのか? モータージャーナリストの山田弘樹がテストコースで試乗しインプレッションをレポートする。

MICHELIN PILOT SPORT 5

第5世代に進化したパイロットスポーツ

ミシュラン パイロットスポーツ5インプレッション、走行シーン
ミシュランのスポーツタイヤブランド、パイロットスポーツが5世代目に進化。ミシュランは「ユーザーの求める『走る愉しさ』から『見た目の満足感』に至るまで、スポーツタイヤに求められる性能領域を最大化した製品」と謳う。

ミシュランのスポーツラインである「パイロットスポーツ」が、第5世代へとフルモデルチェンジ。併せてSUV用タイヤのラインナップに「プライマシー SUV+」が加わり、今回はこのふたつのタイヤを、栃木県にあるGKNテストコースで試乗した。

まず最初に試乗したのは、パイロットスポーツ5(以下PS5)だ。サイズは225/40R18で、これをトヨタ カローラスポーツ(ハイブリッド)に履かせ、外周路とウェットハンドリング路を走行。先代モデルであるパイロット スポーツ4(以下PS4)との比較試乗で、その性能向上幅を確認した。

ちなみに現在パイロットスポーツシリーズは、4つのバリエーションで展開されているのだが、その世代交代が入り組んでおりちょっとだけややこしいので、ここで少し交通整理をしておこう。

まず覚えておきたいのは、今回試乗したパイロットスポーツシリーズが、ミシュランにおける最もベーシックなスポーツタイヤということである。そしてこの上位にはフラッグシップシリーズとして、よりハイスペックな“S”シリーズが用意されている。具体的なタイヤ名でいうとそれは、「パイロットスポーツ4S」となる。

つまり「パイロットスポーツ5」は数字こそ大きいけれど、ベーシックスポーツグレードの最新世代という位置づけなのだ。さらに公道を走れるサーキットタイヤとしては「パイロット スポーツCUP2」などが属する“CUP”シリーズがある。また昨年には時代の要求に応じるかのようにして、「パイロット スポーツEV」がラインナップされた。

パイロットスポーツ4でも充分高性能だが・・・

さて話をパイロットスポーツに戻すと、今回PS5のPS4に対する進化のポイントは、ずばりウェット性能の向上である。スポーツタイヤがそのフルモデルチェンジを謳うならば、普通はドライグリップ性能の向上をアピールするのがセオリーのように思えるが、そこはいかにもミシュランらしい。そしてこの玄人好みな進化に筆者は、大いに唸らされた。

最初に試したステージは、ウェット旋回路だった。ここでPS4は、いつも通りのアベレージが高い、素晴らしい走りを披露してくれた。ブレーキングでは濡れた路面でもゴムが確実に路面をつかみ、減速Gを素早くはっきりと立ち上げてくれる。

そこからハンドリングを切り始めても、タイヤがガッチリとした剛性感を保ち続け、前軸荷重が重たいカローラスポーツ ハイブリッドの旋回姿勢を極めて良好に保ってくれた。PS4はタイヤ全体でその剛性を高く取っているため、操舵時の手応えは明確。一次旋回からさらに回り込むような複合コーナーでも、ハンドルをどれだけ切りましていけばよいのか、とても判断しやすい。

そしてクリッピングポイントからアクセルを踏み込んで行けば、素早く確実に、トラクションを掛けていくことができる。正直言って、まだモデルチェンジの必要などないのではないかと思えるほど、PS4のパフォーマンスは高かった。

さらに向上したウェット性能とドライグリップ

しかしPS5は、これを大きく上回るウェット性能を有していた。まずPS4に対しては、ゴムが路面を捉える感触が、圧倒的に濃厚である。そしてブレーキングからターンインにかけて、タイヤがもっちりとたわむ。これに最も大きく貢献していのは、従来よりもシリカの配合を増やしたコンパウンドのグリップ特性だ。

そしてこうした柔軟なコンパウンドでも応答遅れを感じないのは、トレッドパターン及び内部構造の最適化によって、その剛性バランスが引き上げられているからである。左右非対称パターンとなる「デュアル・スポーツ・トレッドデザイン」は、イン側のパターンでボイド比を高めて排水性を向上させながらも、アウト側に大型ブロックを配置。なおかつトッププライベルトにはアラミドとナイロン繊維のハイブリッド素材を使い、接地面の変形を抑えている。

こうした工夫によって踏面の圧力分布がより均等に保たれるから、柔らかいゴムでもタイヤがよれない。なおかつタイヤが路面を滑らず捉え続けることで、ライフも長く稼ぐことができる。

安全性を妥協しない進化がミシュランらしさ

ちなみにミシュランが行ったテストだと、ドライ路面では両者にほぼ差はないものの、ウェット路面では最速ラップで1.7%、平均ラップで1.5%もそのタイムが向上したという(テスト車両はトヨタ86)。

スポーツタイヤのフルモデルチェンジなら、普通はドライ性能の向上を謳うのがセオリーだろう。しかしここでウェット性能の向上を求めるのは、いかにもミシュランらしい。もちろんそこにはパイロットスポーツがベーシックなスポーツタイヤである、というキャラ設定も大きく関係しているだろうが、ともかくその安全に妥協しない姿勢には大いに感心させられた。

そして図らずもウェット走行となった高速周回路でも、この傾向は変わらなかった。PS4はやはり剛性感の高さが特徴的で、70km/h規制の小バンク、100km/h規制の大バンク共に、ステアリングの切り始めから高い安心感を持ってコーナーへと入っていくことができた。ウェット性能も高いレベルでグリップが保たれており、同グレードのライバルタイヤたちと比べても、やはりその存在は抜きん出ていると感じた。

スポーツタイヤながらも快適な走行フィーリングを発揮

ミシュラン パイロットスポーツ5インプレッション、走行シーン
パイロットスポーツ5は「硬すぎず柔らかすぎず、タイヤ全体でしなやかにグリップする」と筆者は評価し、乗り心地もパイロットスポーツ4より洗練されたと語る。

しかしPS5は、その上を行く包容力と上質感、そして高いグリップ力をもって高速周回路のバンクをクリアした。なおかつ80km/hからのレーンチェンジでは操舵応答性の高さだけでなく、切り返しにおけるヨーモーメントの収まりも一枚上手であった。

硬すぎず柔らかすぎず、タイヤ全体でしなやかにグリップするPS5は、安定性が高いだけでなく快適だ。今回は雨のためロードノイズの差までは確認できなかったが、乗り心地面でもPS4より洗練された印象を持った。

そのテイストだけで言えば、操舵レスポンスが鋭いPS4の方が、スポーツタイヤらしいと感じるドライバーはいるだろう。そして荷重が大きくかかるドライ路面であれば、よりそのフィーリング差は、明確なものになるかもしれない。

しかし今回のようなウェット路面で、どちらがより高いスピード領域を安定して走れるか、安心して踏めるかと言えば、筆者は断然PS5を支持する。そしてその快適な走行フィーリングには、かつてコンフォートタイヤとまで謳われた「PS3」のイメージが重なった。

パイロットスポーツ5は日常生活に根差したスポーツタイヤだ

パイロットスポーツの中では安定性及び安全性にベクトルを振っているパイロットスポーツ5。より日常性をもたせたスポーツタイヤという新たな価値観を提案している。

PS5はそのトレッド面にスリップサインだけでなく、3段階のホール「ウェア・トウ・チェック」を配置して、摩耗状況を瞬時に判別できるようにしている。このことからもわかるようにパイロットスポーツは、日常生活に根ざしたスポーツタイヤである。

より特化したドライ性能を愛車に求めるならば“S”シリーズや“CUP”シリーズを履くべきだが、天候に左右されず高アベレージなスポーティドライブを求めるならば、PS5を選ぶ価値は大きい。

スタンダードタイヤと呼ぶのがもったいないほど、PS5は大きな進化を遂げていた。やはりミシュランの神髄は、トータルパフォーマンスの高さにある。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/日本ミシュランタイヤ

ミシュラン パイロットスポーツ5のサイズラインナップ

ミシュラン パイロットスポーツ5のサイズラインナップ
205/40ZR17から255/35ZR21まで、全43サイズをリリース。幅広い車種に対応するのも魅力だ。価格はオープン。

【問い合わせ】
ミシュランお客様相談室
TEL 0276-25-4411

【関連リンク】
日本ミシュランタイヤ公式サイト

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

モータージャーナリスト。自動車雑誌『Tipo』の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した…