トヨタとスバルが共同開発した最新EV、bZ4X/ソルテラの実力をロングツーリングで検証

インフラとクルマ「どちらが卵でどちらが鶏?」トヨタ bZ4Xとスバル ソルテラのロングツーリングでEVの未来を測る

トヨタ bZ4Xとスバル ソルテラのフロントスタイル
最新EV、トヨタ bZ4Xとスバル ソルテラを長距離試乗に持ち出し、両モデルのパフォーマンスと、国内のEV環境について確認した。
電動化取り組みへの遅れという、マスコミの論調に押された面もあろうが、日本自動車メーカーから相次いでBEVが登場している。いや、日本メーカーは電動化で遅れてはいないのだが、はたして今の日本で現実的にBEVを走らせたらどうなるのか、名古屋から金沢まで走って検証した。

TOYOTA bZ4X × SUBARU Solterra

良い意味で「EV」らしくない自然なフィーリング

トヨタ bZ4Xのリヤスタイル
美濃市にある「うだつの上がる町並み」を目指し北上する。趣のある通りは実際に居住者のいる旧市街に、BEVの静粛性がよくマッチしていた。

電動車(駆動用電気モーター、バッテリーを搭載したクルマ)において25年、2000万台以上という圧倒的な実績を誇るトヨタが、スバルと共同開発したEV、トヨタbZ4X/スバル・ソルテラが満を持して日本で5月に発売となった。

このbZ4X/ソルテラを公道で試乗する機会を得た。ルートはbZ4X(4WD)で名古屋から郡上八幡の約105kmを、そこからソルテラ(AWD)で金沢までの約154kmを走るという内容である。

走り出しての第一印象は、良い意味でEVらしくない、極めて自然なドライブフィールであることだ。EVは発進加速の鋭さやワンペダルドライブを売りにするクルマが多いが、このbZ4X/ソルテラはあえてEVらしさを強調しない仕立てとなっている。アクセルを踏み込めばEVらしい力強い加速を味わえるし、回生ブレーキを強めるスイッチをオンにすればワンペダルドライブも可能なのだが、普通に一般道を走行する限りEVを意識させることはほとんどない。EV故に静粛性が高く、装備されている高音質オーディオ(bZ4XはJBL、ソルテラはハーマンカードン)を楽しみながらの走行は非常に快適だ。

走り味という意味では内燃機関車よりほぼすべての面で優れている

アクセルワークと車体の動きはリニアで、床下に配置されたバッテリーがもたらす低重心による安定感の高さもあり、ワインディングロードでコーナリングを楽しめる。走り味という意味では内燃機関車よりほぼすべての面で優れているとすら思わせるほどの仕上がりだった。

このように、非常に好印象だったbZ4X/ソルテラであるが、現時点でお勧めできるかというとそれは条件付きということになる。まずは価格だ。ソルテラの価格は594万~682万円(bZ4XはKINTO=リースのみ)で、サイズが近いRAV4やハリアーと比較すると補助金を考慮に入れても100万円ほど高くなる。この価格差に納得できる人は限られるだろう。

そして最大の問題が充電環境だ。試乗スタート時に満充電ではなかったため、何回か途中で充電した。たとえば道の駅飛騨白山にある30‌kWの急速充電器では、30分の充電で37%から54%まで回復し、約12‌kWhを充電できた。この充電器の理論値では最大15‌kWhだから、ポテンシャルの8割は充電できたということだ。走行可能距離は140kmから203kmに延びた。逆にいうと、比較的好条件で30分充電しても走行距離は60km程度しか稼げないのだ。

EV運用の最大のネックは急速充電器の出力

この急速充電器の最大出力が、現在EVを運用する上で最大のネックとなっている。bZ4X/ソルテラは最大150kWの充電器に対応できる。バッテリー容量は71.4kWhだから、150kW級の充電器であれば、理論的には30分以内で満充電にできるはずだ。しかし現在日本で利用できる急速充電器は最大でも90‌kW級で、99%は50‌kW以下のものである。今回のルート上にも充電スポットは10ヵ所以上あったが、大半は20~44‌kWであった。50‌kWの充電器で最大理論値の8割充電できたとしても100km走行分しか充電できないわけだ。ガソリン車でいえば1回の給油でせいぜい7~8リッターしか給油できないというのと同じだ。つまり、どんなに大容量のバッテリーを積んでいたとしても、最初の満充電分を使い切ったら小刻みに充電していく以外道はないのである。

各充電スポットの充電器の数の問題もある。今回のルート上にある充電スポットは、すべて1器のみであった。つまり先客がいた場合、その充電が終わらないと充電を始められない。今回の試乗でも、44‌kW充電器のあるスポットで充電しようとしたのだが、先客がいたため諦めざるを得なかったことがあった。

このように、bZ4X/ソルテラはかなり完成度が高く、クルマそのものはとてもお勧めできるのだが、現在の日本の充電環境はあまりに厳しい。自宅での充電が可能で満充電で走行できる範囲でのみ利用する人にしかお勧めできない、というのが現状なのである。

REPORT/山崎 明(Akira YAMAZAKI)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 8月号

SPECIFICATIONS

トヨタ bZ4X z〈スバル ソルテラ〉

ボディサイズ:全長4690 全幅1860 全高1650mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:1920kg
モーター:交流同期電動機×2
最高出力:前後80kW(109ps)
最大トルク:前後169Nm(17.2kgm)
総電力量:71.4kWh
トランスミッション:1速
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後235/50R20(7.5J)
電気消費率:148Wh/km(WLTCモード)
車両本体価格(税込):650万円
※通常リースのため参考価格〈682万円〉
※ともにAWD、20インチ装着車

【問い合わせ】
トヨタ自動車お客様相談センター
TEL 0800-700-7700

SUBARUコール
TEL 0120-052215

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著者プロフィール

山崎 明 近影

山崎 明

1960年、東京・新橋生まれ。1984年慶應義塾大学経済学部卒業、同年電通入社。1989年スイスIMD MBA修了。…