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McLaren Senna
P1に続くアルティメットシリーズ
マクラーレンが2017年の12月10日にオンラインで初公開し、その後2018年のジュネーブ・ショーにおいてオフィシャル・デビューの舞台を設けたのが、あのP1に続くアルティメットシリーズとなる「セナ」だ。
1988年から1993年のF1GPにおいてマクラーレンF1チームとともに戦い、1988年から4年連続でF1コンストラクターズ選手権タイトルをマクラーレンにもたらしたアイルトン・セナ。その名前をマクラーレンが、アルティメットシリーズのニューモデルに使用することに疑問を持つ者はいなかった。
さらに速いラップタイムを記録するため
セナが最も大きな特徴とするのは、やはりそのエクステリアデザインだろう。P1がひとつの固体から削り出したような、比較的スムーズなスタイリングに終始したのに対して、セナはサーキットでより速いラップタイムを記録するためにエアロダイナミクスを向上させるデバイスを積極的に導入。
大型のスワンネック式のダブルエレメント・リヤウイングは調節可能で、エアブレーキとしても機能しながら常に大きなダウンフォースを生み、同様にダブルエレメントのディフューザー、大型のフロントフェンダー、F1マシンにインスパイアされたルーフ後端部や、フロントとサイドのエアインテークなども、それぞれに空力特性の機能を担う。
実際に得られたダウンフォースは、レースモード使用の250km/h走行時で800kg。左右のドアはもちろんディヘドラルドアとなるが、ドア下部はオプションでウインドウとすることも可能だ。キャビンのデザインも実にスパルタンなフィニッシュだ。内貼りはスタンダードでアルカンターラとカーボンのコンビネーションが用いられたが、オプションではレーシングバケットシートと同様にレザー仕様を選択することもできた。
最高出力800PS、最大トルク800Nmを発揮
セナのモノコックとエンジンは、いずれも720Sからの改良版と考えてよい。コードネーム「M840TR」と呼ばれる4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンが発揮した最高出力と最大トルクは、それぞれ800PS、800Nm。このトルクは例によって7速SSGから後輪へと伝達される。セナがP1と大きく異なるのは、エレクトリックモーターを持つかどうかで、軽量化のためにPHEVシステムを搭載しなかったセナは、乾燥重量は1198kgという驚くべき数字に抑えられている。
前後のサスペンションはダブルウイッシュボーン形式で、もちろん油圧式のレースアクティブシャシーコントロールⅡが組み合わされる。さらにこのセナには新世代のカーボンセラミックブレーキが採用されており、従来のシステムより熱伝導率が3.5倍も向上したコンパウンドを使うことで、ブレーキの小型化と軽量化を実現しているのも注目すべきポイントだ。
前後のホイールはピレリの「P Zero Trofeo R」タイヤ用に専用設計された新タイプのセンターロック式アロイホイール。サイズはフロントが19インチ、リヤが20インチと前後異径。組み合わされるタイヤは各々、245/35R19、315/30R20サイズの設定だ。
さまざまな派生モデルが誕生
セナの生産は500台の限定で行われることが、オンラインでの発表時点で明らかにされていたが、ジュネーブでの事実上の初お披露目の段階では、すでにそのオーダーリストにはすべてのオーナーの名前が埋まっていた。0-100km/h加速で2.8秒、0-300km/h加速でさえ17.5秒でこなし、335km/hの最高速を可能にする、この真の意味でのアルティメットカーを、世界のスーパーリッチ、そしてカーガイが見逃すわけはなかったのだ。ちなみに発売当時のセナの価格は75万ポンド。最後の1台はオークションにかけられ、191万6793ポンドで落札されたというから、その希少性と人気はやはり本物だった。
そしてセナにはその後も、さまざまな派生モデルが誕生していく。2020年には825PSを発揮するサーキット専用モデルの「セナGTR」が75台のみの限定車として。また同年にはこのセナGTRから825PS仕様のエンジンを受け継いだ35台のロードモデル、「セナLM」が。そしてやはり2020年の9月には、845PSという最強のパワーユニットを搭載した、やはりロードモデルの、「セナGTR LM」が5台のみ、いずれもマクラーレンのスペシャル・オペレーション部門、MSOの主導で開発、販売されている。