デリカのスタイルとコンセプトで大ヒット「三菱 デリカミニ」【国産新型車 車種別解説 MITSUBISHI DELICA MINI】

その登場に多くが驚きとともに歓迎の意を表した「三菱 デリカ ミニ」。その名の通りミニバンとして唯一無二の存在である「デリカD:5」がコンセプトの祖となる。フロントデザインは先代風だが、むしろ「らしさ」が際立っている。悪路での走行性能もその名の通りの高さ。室内空間もスーパーハイトワゴン系と同等で、工夫次第で大人の車中泊も可能だ。
REPORT:安藤 眞(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:新 唯

四駆は本格悪路にも対応 デリカの名を冠した人気者

三菱デリカといえば、本格的な悪路走行もできる唯一のミニバン。そのコンセプトを軽自動車に落とし込んだのが、デリカミニだ。ベースはスーパーハイトワゴンのeKクロススペース。むしろベース車のデザインの方が、今のデリカD:5に似ているが、デリカミニはビッグマイナー前のデリカD:5風デザインを採用。発売2ヵ月で2万台を受注する人気者になった。

エクステリア

自然吸気、ターボにかかわらず、FFと4WDでタイヤサイズが異なるのがデリカミニの特徴だ。後者は大径15インチタイヤに合わせたサスペンションとすることで“デリカ”らしい佇まいを強めている。最小回転半径は4.5〜4.9m。

グレード展開は4系統。エンジン別に、自然吸気の〝G〞とターボの〝T〞があり、それぞれに装備の充実した〝プレミアム〞を設定する。いずれのグレードにも2WDと4WDの両方を用意するが、真打ちは4WD。2WDはeKクロススペースから足まわりを変えていないのに対し、4WDはタイヤの大径化とダンパーの専用チューニングを実施しており、悪路走行の安心感や乗り心地は別物のように良くなっている。実際、関東随一の悪路として名高い林道〝川上牧丘線〞を長野県側から走ってみたが、雨で掘られた深い溝を横切るときにライン取りを考える必要があるだけで、あとは快適なドライブを楽しむことができた。

乗降性

ちなみにこの林道、道中で出会ったクルマはジムニーとランクル、それにデリカD:5だけという凶悪路。デリカミニの4WDシステムはビスカスカップリング方式だが、後輪にも常に微小なトルクを伝える設定となっているため、急勾配の悪路でもタイヤをスリップさせることなく登っていく。だからトラクションコントロールはほとんど介入せず、精神的にも安心かつ快適だ。

インストルメントパネル

インパネ全体のカラーはブラックカラーとしながらも、オープントレーから助手席ドリンクホルダーにかけてはアイボリーとすることでアクセントに。SUVムードを高めている。

悪路での乗り心地の良さは、普段使いでも恩恵がある。舗装の補修跡が盛り上がっていたり、マンホールが飛び出しているような路面でも、ガタガタ・ドタバタすることなく、ひょいと快適に乗り越えられる。ボディもしっかりしているので、乗り心地そのものが軽自動車とは思えないほど上質だ。ハンドルを切った際も、背の高さからくるグラつき感は小さく、峠道の下りも快適。しかしあまり調子に乗って走っていると、ブレーキの頼りなさが顔を出す。踏み込んだ先のビルドアップ感が弱いので、多人数乗車時には、それを予測した強めのブレーキングが必要になる。

居住性

室内の広さは他社のスーパーハイト系に遜色はなく、後席のスライド量は320㎜とクラストップ。後席を折り畳んだ際の荷室長は1480㎜なので、大人が横になるのは厳しいが、前後席ともヘッドレストを外して、前席背もたれを後ろへ、後席背もたれを前に倒せば2mくらいの前後長は確保できる。あとは凹凸を埋める工夫をすれば、大柄な大人の車中泊も可能だ。

うれしい装備

リヤシートは5対5分割式の左右独立タイプで、リクライニングとスライド調整が可能だ。シートバックテーブルやスライドドアのサンシェードも備わっており、快適に過ごせる。
新規デビュー      23年4月6日 
月間販売台数       2971台(23年6月~11月平均)
WLTCモード燃費     20.9km/ℓ※G系のFF車

ラゲッジルーム

価格設定は180万円以上と、軽自動車としては高価だが、装備はコンパクトカー以上に充実。左側のスライドドアは、キックモーションで開くハンズフリー機構を標準装備し、〝プレミアム〞グレードはそれが右側にも付く。しかも〝プレミアム〞には、車線維持アシスト付きのレーダークルーズコントロールも装備する。あとはディスプレイオーディオとETC車載器を追加すれば、ロングドライブにも完璧対応。内容を考えれば、納得できる価格と言える。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.156「2024 最新国産新型車のすべて」の再構成です。

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