新型プリウスPHEVは見た目の大胆さ同様に、走りもキレッキレだ。注文を付けるとすると……

トヨタ・プリウス PHEV Z 車両価格:460万円
新型プリウスのトップグレードという位置づけがPHEVだ。HEVより強力なモーターで駆動するPHEVは、システム出力223ps。もちろん日常はほぼEV走行で済んでしまう(87kmのEV走行換算距離)バッテリー容量を持つ。プリウスPHEVを市街地と高速道路で試乗。その完成度をチェックしてみる。
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi) PHOTO:山上博也(YAMAGAMI Hiroya)

もう(BEVじゃなくて)これでいいじゃないか

新型プリウスは話題満載だ。メインエンジンを1.8Lから2.0Lにスケールアップし、パワーはザックリ5割増。同様に今回試乗したプラグインハイブリット(PHEV)では1.5倍の出力を持つモーターを採用した。だから、踏めばとにかく気持ちいい。モーター駆動をメインとしながらもパワーをより必要とする時にエンジンを始動させるAUTO・EV/HVを選んでいても、街乗りや首都高速レベルの走りではモーターが主役で、エンジン始動の気配が皆無だ。と言うのも、遮音性に優れ、エンジン自体に余力が得られたことによって、耳を済ませていないと、エンジン始動をなかなか気付かせない。

もうひとつあるEV/HVモード切替スイッチをHVにして、エンジン始動のタイミングを見極めようとするが、大きく踏み込んでいく分には変化せず、床まで踏み込むスピードを速く操作して、初めてブルンとくる。いや、シュンと遠くでエンジンのサポート音が聞こえるのみだ。

モーター出力の大きさと、低回転域で力強いエンジン出力の特性から、従来のPHEVモデルのように(かかったときの)エンジンの存在を意識させることが少なく、BEV時代に向けてHEVモデルも大きく進化していることが良くわかる。EV主体の走りを存分に味合わせてくれているのだ。

スタンダードのHEVモデルと乗り比べてみると、HEVは当然のことながらEVとしての走行シーンは少なく、アクセルを大きく踏み込めばすぐにエンジンがかかる。トルクが要求される発進時だから、エンジンも頑張る分だけノイズも大きく、誰でもその存在は感じ取れる。

高速走行でも高出力モーターが威力を発揮する。WLTC 高速道路モード25.5km/L

PHEVのモーター出力の大きさは高速域でも大いに発揮してくれる。長い加速で法定速度領域に近づいてくるにつれてパワーは穏やかになっていく。しかし、巡航領域となって一度落ち着いてからは、再び余力が与えられ、追い越し加速で力強く、滑らかに流れをリードしてくれる。さらに踏み込めばエンジンが始動するが、街中同様に騒音レベルは低いまま、エンジンの得意する中回転域にジャンプして加速をサポート。背中を押す手助けをしてくれる。

エンジン 2.0L直4DOHC(M20A-FXS) 最高出力:151ps(111klW)/6000rpm 最大トルク:188Nm/4400-5200rpm フロントモーター:1VM型交流同期モーター 最高出力:163ps(120kW) 最大トルク:208Nm 燃料タンク容量:40L 電池容量:13.6kWh

モーター出力の向上と、排気量アップは、ノイズ、パワーフィールともに大きな進化を見せ、ガソリン車同様に一体感のある気持ちの良い走りが楽しめるようになった。標準のHEVモデルでも同様にエンジンのサポート感が唐突ではなくなり、2.0L化の恩恵は大きい。

トヨタはBEV化に向けて大きな舵取りが宣言されたばかりだが、1回の給油で走れる距離は、プリウスなら1000kmは堅い。安心感と言った意味では明らかにHEVに分があるし、新世代パワーユニットの出来の良さを考えると、BEVじゃなくても、これでいいじゃないか!と誰でも思うだろう。

全長×全幅×全高:4600mm×1780mm×1430mm ホイールベース:2750mm 最小回転半径:5.4m
トレッド:F1560mm/R1570mm 最低地上高:150mm
車両重量:1570kg HEVより150kg重い。

TNGA第二世代のシャシーの出来は?

室内長×幅×高:1840mm×1500mm×1135mm
従来ラゲッジ部にあった電池パックをリヤシート下に搭載することでラゲッジスペースの拡大を実現。

プリウスのもうひとつの注目ポイントは第2世代となったTNGAシャシーの採用だ。各部の補強を加え、前後サスの働きを最大限に発揮させることを目的としたその作りはハンドリング性能に大きく貢献。

第1世代TNGA(GA-C)もプリウスが初の採用で、これがプリウスの走りか?と驚かされたが、第2世代も同様だ。ステアリングを切れば切れ味鋭く反応するし、ボディはいささかの迷いもなくついてくる。第1世代はボディのしっかり感と、操作系の正確な反応が持ち味だったが、これに切れが加わった。だから、パワーアップ分がすぐに走りに表れて、良く曲がり、加速に無駄なく、ピタッと収まることで、コーナーが速い。コーナーとコーナーの間の加速はモーターとエンジンの二丁掛けの力強さで繋げば、ロスはどこにも見当たらない。うん、サーキットなら悪くない。

タイヤ:F&R195/50R19 銘柄はヨコハマBluEarth GTを履く。このほかブリヂストンも標準タイヤだ。

その分、乗り心地は従来のプリウスとは一線を画す。ロールが少なく、上下方向の動きを押さえ込んだ乗り味は、ゴーカートのようにダイレクト。大きな入力では堅強なボディとレスポンスの良いサスがしっかり吸収するも、小さな突起や荒れた路面ではボディを細かく揺する。良路や高速域を走る限りは第2世代のTNGAは大いに威力を発揮するが、プリウスが使われるであろう多くの日常領域ではザラザラとした乗り味が支配的で、もう少し包み込むような、しなやかさでゆったりとした乗り味がほしくなる。

パワーフィールが滑らかになっているだけに、乗り心地ももう少し快適方向に振ってくれれば、より一層新世代のPHEVモデルとして魅力はアップするはず。

見た目の大胆さ同様に、走りもキレッキレで、思い切りの良さは賞賛に値する。さらに皆に優しい乗り味が折り込まれることを期待したい。

充電は普通充電。急速充電には対応しない。
フロントモーターはPHEVが163ps/208Nmなのに対してHEVは113ps/206Nm
プリウス PHEV Z 
全長×全幅×全高:4600mm×1780mm×1430mm
ホイールベース:2750mm
車両重量:1570kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/ダブルウィッシュボーン式
駆動方式:FF
エンジン
2.0L直4DOHC(M20A-FXS)
最高出力:151ps(111klW)/6000rpm
最大トルク:188Nm/4400-5200rpm
フロントモーター:1VM型交流同期モーター
最高出力:163ps(120kW)
最大トルク:208Nm
燃料タンク容量:40L
電池容量:13.6kWh
EV走行換算距離:87km
WLTCモード燃費:26.0km/L
 市街地モード23.7km/L
 郊外路モード28.7km/L
 高速道路モード25.5km/L
車両価格:460万円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…