まずは、こちらを見ていただこう。
1997年から2020年の民間平均給与の推移である。データは国税庁給与実態統計調査によるものだ。1997年の467万円をピークに下がり続け、リーマンショック後の2009年には406万円に、その後やや持ち直したが、2020年は433万円だった。
では、メルセデス・ベンツCクラスの代表的なグレードであるC200セダンの価格はどう変遷したか? 表にまとめてみた。わかりやすくするためにグラフにした。折れ線が民間平均給与、縦棒がC200の車両価格である。税制が変わったり、モデル末期になって特別仕様車が登場したりするので、単純に比較するのは難しいが、たいたいの傾向はわかるはずだ。
折れ線より棒が下にあるのは、2002年まで。2002年までは民間平均給与でC200が買えたわけだ(もちろん、それでも充分に高価だったのだが)。以降、民間平均給与は下がり続け、C200の車両価格は着実に上がっている。
2020年の民間平均給与:433万円がコロナ禍の影響で2021年に下がるのはほぼ確実。となると民間平均給与とC200の関係は、さらに遠のいてしまう。
新型C200の、「まるでSクラスのような装備」を体験すれば、車両価格が上がるのも納得だが、それにしても、Cクラスが遠い存在になってしまった感は否めない。
世界中の勤労サラリーマンが同じ想いをしているのか……と考えてみたが、どうもそうではないらしい。
このグラフはoecd.statより全労連が作成(日本のデータは毎月勤労統計調査によるもの)を引用させていただいた。これによれば、1997年から実質賃金指数が下がっているのは日本だけ。つまり日本だけ給与が上がっていないということだ。まさに失われた20年、である。これでは、「いつかはメルセデス・ベンツCクラス」の夢も夢のままで終わってしまう。
スウェーデンの138.4とまでいかなくてもドイツ並みに116くらいまで賃金が上がっていれば、まだ希望が持てたのに……。衆議院選挙を控えて、どう日本経済を成長軌道に戻していくかという政策論争が行なわれている。給料が少しずつでも上がっていってほしい。Cクラスが買えるようにとは言わないけれど、額に汗して働いた人が報われる社会になってほしいと重う。