新型ゴルフ(8)のグレード構成は、現在のところ下のようになっている。現在のところ、もっとも売れているのは、Active。ただし、StyleとR-Lineを合わせると、1.5ℓモデルの方が売れているという。
1.0ℓ直3ターボ+48V マイルドハイブリッド
eTSI Active Basic:295万9000円
eTSI Active:317万1000円
1.5ℓ直4ターボ+48V マイルドハイブリッド
eTSI Style:376万円
eTSI R-Line:381万1000円
今回、試乗したのはeTSI Active。ゴルフ7の1.2ℓ直4ターボのTSIコンフォートラインにあたるグレードだ。モデル末期の装備を充実させたモデル「TSIコンフォートライン マイスター」が323万円だったから、eTSI Activeの価格が317万1000円でもまぁ納得だが、それでも1.0ℓのクルマが300万円オーバーとは……と思わないでもない。試乗車は、SSDナビなどが含まれるDiscover Proパッケージ(19万8000円)、LEDマトリックスヘッドライト”IQ.LIGHT”や駐車支援システムPark Assist/ヘッドアップディスプレイなどが含まれるテクノロジーパッケージ(22万円)が付いていたから、ほぼ360万円だ。
国内デビュー直後の試乗会で初対面したゴルフ8は、良くも悪しくも「ああ、これが新しいゴルフね」というもので、とくに新鮮味も感じなかったし、乗り込んでみた感じも、大きなディスプレイが付いたとはいえ、びっくりするような斬新な印象はなかった。つまり、いつものゴルフである。
試乗会では、48Vマイルドハイブリッドの威力に驚かされた。アイドルストップからの再始動のスムーズさ、高速の定常走行でのエコ・コースティング、そこからのエンジン始動など、各運転モードの切換の見事さは感激ものだった。
1.0(Active)と1.5(Style)の価格差は60万円弱。いつものゴルフ(の最新型)なら、価格が安い方がいい、と思うのは人情だ。だから、Activeを借りだして、少し長い距離をドライブしてその実力を試してみた。
48Vマイルドハイブリッドは、13ps/64Nmのベルトドリブン・スタータージェネレーター(BSG)を使う。1.0ℓ直3ターボエンジンは、110ps/200Nmと特段パワフルなわけではないが、48VのBSGのおかげで、とにかく、なにもかもがスムーズだ。DCT(VWはDSGと呼ぶ)の欠点である、低速(走り出しなど)のギクシャク感もほぼ感じないし、アイドルストップからの再始動も本当に滑らか。4気筒版のStyleと乗り比べなければ3気筒ターボのフィーリングにも不満は抱かない。ちなみに、この3気筒ターボ、EA211evoは、ミラーサイクルを採用し、ガソリンターボではごく珍しい可変容量ターボ(VGT)を使う。目を見張るようなスペックではないが、内容は非常に濃いエンジンなのだ。
1.5ℓモデルではドライブモードが、エコ/コンフォート/スポーツ/カスタムから選べるのだが、1.0ℓのActiveはモードの切換はできない。筆者は、ドライブモードは最適な1モードがあればいい、と考えている(多くの人は、モードの切換をしないだろう)ので、Activeでなんの不満もない。
まずは、いつもの通勤時の燃費について。都内の通勤路(往復28km程度)で平均時速19km/hで燃費は14.6km/ℓだった。WLTCの市街地モードが14.7km/ℓだから、実力通りといえる。ボディサイズも取り回しも使い勝手もゴルフそのものだから、本当に乗りやすい。角が立ったところはまったくない。乗り心地も、いつものゴルフだ。
高速道路を使って少し遠くまで行ってみよう。
Activeの1.0直3ターボ+48V BSGのパワートレーンは、隙さえあれば、すぐにエンジンを停める。エコ・コースティングとVWが呼ぶモードは、エンジンは完全停止する。コースティングをという用語に決まった定義があるわけではないが、従来は高速道路走行などで定常状態に入った際に、エンジンをアイドル状態にする(つまりギヤがニュートラルになる)ことをコースティングと呼んでいた。ゴルフ8のエコ・コースティングは、それよりも一歩先にいっていて、エンジンは完全に停まる。
サプライヤーによっては、
エンジンがアイドル状態→コースティング
エンジンが停止状態→セーリング
などと呼ぶ場合もあるが、いずれにせよ、燃費改善には大きな効果がありそうだ。問題は、エンジンの再始動、あるいはエンジンブレーキが必要なときにどうなるか、だと考えるだろう。これが、まったく問題ないのだ。
まず、メーターを注意して見ていないと、エンジンが停止しているかどうかわからない。エコ・コースティングしている最中に、ちょっとエンジンブレーキがほしいとか、もうちょっと加速したいと思った次の瞬間にはエンジンはかかっている。そして、かかった瞬間はドライバーにはまったく感知できない。とにかく、スムーズだ。これは、いい。
1.5ℓモデルは通常走行とエコ・コースティングの間に、ACT(アクティブシリンダーマネジメント)による気筒休止(4気筒のうち2気筒をシャットダウン)する運転モードもある。こちらもモード切替はウルトラスムーズだ。
新型ゴルフは、10インチディスプレイを備えたデジタルメーターやインフォテインメントシステムが売りだ。スマホライクなユーザーインターフェースは、ちょっと慣れが必要(スマホネイティブ世代はなんの問題もないのかもしれないが)。タッチスライダーコントロールやジェスチャーコントロールといった新しい操作方法は、ゴルフ7から8の大きな進化だが、なんでもスマホみたいにすれがいいってわけではない……と思うのだが、ユーザーはどう感じるのだろう。
今回、3日間で550kmほどゴルフ8 eTSI Activeをドライブした。走れば走るほど、「やっぱりゴルフっていいな。これで充分、いや充分以上だな」と強く感じた。初対面の、「やっぱりいつものゴルフだなぁ(ちょっとネガティブな部分もアリ)」の印象が、「やっぱりゴルフはスゴイ」の方向へ変わっていく。
Activeのモード燃費は
WLTCモード燃費:18.6km/ℓ
市街地モード 14.7km/ℓ
郊外モード 19.1km/ℓ
高速道路モード 20.6km/ℓ
だ。今回の実燃費はどうだったかというと
548km走ってトータルの燃費は、21.3km/ℓだった。ただし、平均時速が49km/hとでていたから、高速道路の走行の割合が高い場合の燃費と考えるべきだろう。しかし、別のセクションで平均時速が41km/hの場合でも燃費は21.2km/ℓだった。つまり、WLTCモードは楽々クリアする。高速道路での走行の割合が高かったとはいえ、高速道路モード(20.6km/ℓ)も上回っている。クルマのサイズ、走りの質を考えるとなかなか(相当)良い燃費だ。
1.0ℓモデルは、リヤサスペンションがトレーリングアーム式になる(ゴルフ7も1.2ℓモデルはそうだった)。だからと言って、なにか不満を感じるような乗り心地ではない。
とにかく、3日間、ゴルフActiveと生活をともにして、「あぁ、やっぱりゴルフはいいなぁ」と思った。走れば走るほど、ジンワリを良さが染み入る。奥が深いなぁ、ゴルフ。
そう思って、いたらゴルフ1.5ℓモデルを再び試乗する機会があった。そしたら、1.5ℓモデルの良さを再認識するに至った。リヤがマルチリンクになる脚周りも、1.5ℓモデルの方がしなやか。4気筒エンジンはやはり3気筒よりスムーズ。ちゃんと60万円高いクルマになっている。1.0ℓモデルに不満はまったくなし。走りも燃費も内装もデジタル関係を含む使い勝手も、ほぼ完璧。それでも、1.5ℓモデルは、さらにその上をいく。
だから、1.0ℓモデルを選ぼうと思っている人は、1.5ℓモデルと乗り比べないほうがいいかもしれない。買ったら、乗り比べることはないわけだし、1.0ℓモデルで満足する可能性は極めて高いのだから。
とにかく、ゴルフは新型も奥が深い……そう思い知らされた。
VWゴルフeTSI Active 全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1475mm ホイールベース:2620mm 車重:1310kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトレーリングアーム式 エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ エンジン型式:EA211evo型 排気量:999cc ボア×ストローク:74.5mm×76.4mm 圧縮比:11.4 最高出力:110ps(81kW)/5500rpm 最大トルク:200Nm/2000-3000rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:47ℓ 電動機 型式:4450 最高出力:13ps(9.4kW) 最大トルク:64Nm トランスミッション:7速DCT 駆動方式:FF WLTCモード燃費:18.6km/ℓ 市街地モード 14.7km/ℓ 郊外モード 19.1km/ℓ 高速道路モード 20.6km/ℓ 車両価格○317万1000円 試乗車はDiscover Proパッケージ:19万8000円、テクノロジーパッケージ:22万円、フロアマット3万3000円付